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異端のダークヒーラー、魔国幹部として人類を衰退に導くようです~金と知識を求めていただけなのに、なぜか伝説になっていました~  作者: 浅見朝志


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第235話 父親譲りの実力×暴走気質

辛うじて俺が目に追えたのは、紅色の光。

それは、暗幕が降ろされたかのようなこの深い森の中で、縦横無尽の線を描く。



「──おっそいおっそい、おっそいなぁっ! もっともっとさぁ、ハ! ジ ! ケ! て! イコーよぅッ!!!」



嬉々としたオトガイの声と共にもたらされるのは圧倒的な暴力だった。

俺たちを囲むようにしていたモンスター集団は、オトガイが振るうトゲ付き棍棒をメキャリグシャリと叩き込まれては、周りの木々を巻き込む形で吹き飛んでいく。

それは、相手がどれだけ巨体であろうと同じ。



「グルォォォッ!」



一般的な一軒家ほどの巨体を持つ岩のモンスターが立ちふさがる。

だが、それでもオトガイが怯むことはない。

その太もも──大腿筋を頑強な巌のように膨らませると、



「的が大きいとさ、狙いがいがあるってモンだよねぇッ!」



圧縮したバネを一気に解放するように飛んだ。

そして気づいた瞬間には、オトガイはすでにその手に持つ自身の背の丈ほどの棍棒を振り抜いていた。

パキャァンッ!

破裂音と共に、弾けるのは赤黒い魔力の閃光。

モンスターの頭は粉みじんに砕け散っていた。



「わが君、どうやら私の出番はないようです」


「ああ、そのようだな。さすがはアギト殿の血縁だ」



俺はそうジラドに答えつつ、その目にも留まらぬ速度で行われる蹂躙をボンヤリと眺めながらに考える。



……暴力的なまでに高密度な魔力による力技。何とシンプルで美しい攻撃力だろう。



オトガイの真骨頂は父親譲りのその超攻撃的な魔力。

手にする大きな棍棒は、鬼人種(オーガ)にしては小柄なその体の質量を補うためだろうが、きっと素手でもその威力は尋常ならざるモノになるハズだ。


戦闘技術的なことは俺に批評できるような目がないのでわからないが、それでもかつての麻薬組織へのカチコミにもためらわない胆力といい、この現状の圧倒的強さといい、一般魔族を大きく超える実力を持つことは確か。



……とはいえ、



「オトガイくん、お疲れ様。モンスターは全て倒せたみたい──」


「さあさあっ、まだまだ戦い(ヤリ)足りないよぉ! 次の相手は~!?」


「オトガイくん?」


「テンションもっとアゲ↑↑↑てこ~~~ッ!!!」



どうやら俺の声など聞こえていないらしい。

オトガイの戦闘意欲が収まる気配がなかった。

荒い呼吸で、瞳孔の開いたその目でアチコチへと視線をやる。

そして、



──ガサリ。



茂みの揺れる音。



「ソコだぁぁぁ~!」



オトガイは目を光らせるや、突撃した。

しかし、



──ガキンッ! と。



その一撃が初めて、防がれる。

オトガイの棍棒を受け止めたのは、漆黒の大剣。



「うわっ!? ボグっちっ!?」


「……」



絶賛迷子中だったボグ・チェルノの姿がそこにはあった。



「ゴ、ゴメンねボグっち~! モンスターかな? って思って、つい確認もせずブン殴っちゃった!」


「……」



棍棒を下げてのオトガイの謝罪に、しかしボグは相変わらずうんともすんとも言わない。

その感情の宿らないドクロの目が向くのは俺の方。

ズシンズシンと。

歩いてやってくるや、



「ズンゴゴゴゴゴ……」



何事もなかったかのように俺が右手に宿していたボグ寄せ魔術を吸い始める。



「いやぁ、見つかってよかったねぇ。ボグっち」



棍棒を肩に担ぎつつ、オトガイも戻ってくる。

そして、満面の笑みを俺に向け、



「ねぇねぇ、ところでキウイっち、あーしどうだった? かなーり役に立ったんじゃない!?」


「ああ、そうだね。素晴らしい戦闘能力だったよ」


「やっぱし!? じゃあもう部下確定っ!?」


「申し分ない実力だったのは確かだ。しかし、戦闘中にこちらの声が届かなくなるというのは致命的だね。あと、敵味方見境なしになってしまうところも」


「うっ……そ、それはちょっとアツくなっちゃっただけというかぁ……」


「戦闘要員を欲している他の魔国幹部の直属としてならともかく、ダークヒーラーである私の直属になるのであれば、そのアツくなってしまう性質はどうにかしてもらわねばなるまい」



忘れてはならないのが、俺が抱えているのは医療部隊だということ。

その本質は魔国軍のバックアップにある。

だが今のオトガイでは、むしろ暴走して患者を増やしかねないだろう。

比較するのは酷かもしれないが、シェスやジラドと比べたら護衛としての適性は火を見るよりも明らかだ。



「え、えぇ~! じゃあ、あーし……クビッ!?」


「それはそれで早合点が過ぎる」



悲しげに眉を下げるオトガイを諭すようにして俺は言葉を返した。

一度の機会で人を判断できるほど、俺の目は肥えていない。



「これからのさらなる活躍に期待させてもらうよ」


「……! わかった! あーし、めっちゃ頑張るし!」



表情をキリッとさせ、オトガイは気合いを入れるように拳を突き上げた。

その、喜怒哀楽のハッキリとしたところは大変好ましい。

ムードメーカーとしては最適だろう。



「ズンゴゴゴ……ズゴッ」



そうこうしている内に、ボグの魔力吸いが終わる。

ボグは顔を上げると「もう終わりですか? もっとないんですか?」と言わんばかりに俺の顔をジッと見た。



「それにしてもボグ殿、あなたはいったいどこに行っていたんです?」


「……」



ボグ・チェルノは応えない。

その代わり、



「……」



その顔は、先ほどボグがやってきた方向へと向いていた。

その素ぶりに、どこか名残惜しそうな雰囲気を感じるが……もしかして、あちらの方向に何か 〈特別なモノ〉でもあったのだろうか?



「ボグ殿?」


「……」



やはり、ボグ・チェルノが何か言葉を発することはなかった。


いつもお読みいただきありがとうございます!

次のエピソードは「第236話 キウイの考える最強のトラップ」です。


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次回は12/29更新予定です。

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