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異端のダークヒーラー、魔国幹部として人類を衰退に導くようです~金と知識を求めていただけなのに、なぜか伝説になっていました~  作者: 浅見朝志


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第229話 【Side:北の魔女】ポーション?

魔国オゥグロンの北部。

雪と氷の大地エヴァーフロスト。

北の魔女の居城はその凍土を切り出して作ったかのような氷の砦の中にあった。


豪雪への対策か、屋根の傾きは急で、城は低い。

しかしその代わり、建物の内部は凍土に杭を打ったかのように地下深くまで続いており、外観以上の広さを備えていた。


その、最下層の部屋で、



「──ポーション?」



そう口にしたのは、玉座を思わせる見事な造りの椅子に腰かける妖艶な美女。

この城の主、北の魔女ディーナだ。

いささか派手な銀と黒の二つを基調としたドレスに身を包んでおり、一見するだけで、彼女の前で膝をついている黒いローブ姿の魔女たちとの格の違いがわかる。



「コレを飲めば回復魔術(ダークヒール)がかかるんですって?」


「は……王国との戦争で、魔国幹部たちが使用していたとのことです」


「フゥン……」



ひじ掛けにもたれかかり、ディーナは小首を傾げた。

指でつまむようにして持っているのは、薬莢サイズの小瓶。

その中は緑色の液体で満たされている。



「誰か、試してみなさい」


「ハッ。それではわたくしめが」



声を上げたのは一人のクセ毛の魔女。

ポーションをアラヤ総合医院の診察室からバレない程度の量をいくつかの新しい小瓶へと移し替え、くすねてきた者だった。

クセ毛魔女は自らの手の甲へと指を当て、魔力を集中させる。

そこが紫色に光ったかと思うと、



──ビシュッ! と。



突如としてクセ毛魔女の手の甲が裂け、血があふれ出した。

躊躇なく、自らに向け攻撃用魔術を撃ったのだ。

しかしその場の誰もの動じはしない。

ディーナの指示はどんなものであれ、行動に移して当然とでも言うように。



「さあ、飲みなさい」


「ハッ! 頂戴いたします」



クセ毛魔女はディーナの差し出したポーションを受け取ると、その小瓶に口をつける。

ゴクン、と。

するといなや、患部がみるみるうちに塞がっていく。



「……驚いたわね。本当に効いた」


「はい。集めた情報によれば、魔国幹部のアギトもまた、これと同じポーションで回復したのだとか」


「魔族の種族を問わない……黒癒の書を用いたダークヒールと同じ作用があるということ……?」


「それだけではございません。どうやら、人間に対しても何かしら有益な作用があるものと思われます」


「ダークヒールが? どういうことっ?」


「ええ。にわかには信じがたいのですが……」



驚き身を乗り出すディーナへ、クセ毛魔女もまた共感するように頷くと、



「どうやら人間である魔国幹部キウイ・アラヤがコレを飲んでいるようだったのです」


「なんですって? それで何ともないのっ?」


「はい。当の本人に特別おかしな様子はなく、リンゴジュースと割って飲んでいるところを、患者に扮した仲間が遠隔魔術で確認しております」


「……リンゴジュース?」



首を傾げるディーナの前に、クセ毛魔女はかたわらに用意してあったもう一つの瓶を置く。



「いちおう、リンゴジュースの方も用意しておきましたが……コチラも試してみた方がよろしいでしょうか?」


「……ええ。そうね。私も飲んでみたい。グラスを二つちょうだい」



ディーナの声に即座に応じた他の魔女たちが、冷えたワイングラスへとポーションを少量注ぎ、その上からリンゴジュースをなみなみと注ぐ。

ディーナとクセ毛魔女は、さっそくひと口。

ゴクリと。



「……」


「……」


「……ただの、少し青臭いリンゴジュース、よね?」


「……ハ。ただの青臭いリンゴジュースかと」


「どうやら、人間じゃないと効果は表れないようね」



ディーナは期待外れとばかりに一度小さくため息を吐いたが、



「──だけど、面白いじゃない」



すぐにその表情を不敵な笑みに染めた。



「これの開発者は? まさか、これもまた黒癒の書に続くキウイ・アラヤの発明なのかしら? 作用に関しては、彼が魔国へと広め始めた万能型ダークヒールの亜種にも思えるけど」


「現在流出元を探っておりますが、おそらく違うかと」



クセ毛魔女は残りの小瓶を全てディーナへと手渡しつつ、



「このポーションが魔国軍に供給され始めたのはキウイ・アラヤが王都で失踪していた時期です。ですので、開発者は別にいるはずだと推測しております」


「見当はつきそうなの?」


「お任せを」



自信ありげに、クセ毛魔女は言う。



「これほどの最新技術、実現できる場所は限られます。黒癒の書の作成に携わっている親魔王派の魔女たち──魔女の魔導研究結社(サバド・ソルシエール)か、あるいは……潤沢な資金を持つ反社会的組織か」


「反社会ねぇ……ルマク坊やは使えるモノなら何でも使う子だから、あり得なくはない」



ニヤリとほくそ笑みつつ、ディーナは言う。



「そういうことなら、私も少し動いてみようかしら」


「っ! そんなっ、ディーナ様のお手を煩わせるようなことは……」


「早く知りたいのよ、このポーションの秘密を」



ディーナはそう言うや椅子から立ち上がって、パチンと指を鳴らす。

すると、瞬く間につば広の帽子と、分厚い白のコートが彼女の体を覆う。



「今はルマク坊やが城を空けているそうじゃない? エメラルダは慣れない執務で手一杯だろうし、魔国軍本部の情報はスキだらけでしょう。いつもの親善訪問(イヤガラセ)がてら、資金の流れを聞き出してくるわ」



ディーナはそう言うと、その場で腕を振るう。

すると、閉じていた花弁が開くかのようにして天井が開き始めた。

冷たい外気が流れ込み、雪の降る雲空が見える。


フワリ。

ディーナたちは体を浮かせつつ、地上を目指す。



「何としてでもその開発者を生け捕りにして、この地で働かせるわよ。全てはエヴァーフロストの国力を高め──私が魔国の女王となるために」


「ハッ! 至高の魔術師であるディーナ様にこそ、王座はふさわしいかと!」



そうして北の魔女たちは魔都デルモンドへと出発した。

この時はまだ、誰も知る由もない。

マスク・ザ・メロンという謎の黒幕の名が彼女たちの前に立ちふさがることなど。


いつもお読みいただきありがとうございます!

次のエピソードは「第230話 ボグ・チェルノは魔力グルメ」です。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


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次回は12/15更新予定です。

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