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異端のダークヒーラー、魔国幹部として人類を衰退に導くようです~金と知識を求めていただけなのに、なぜか伝説になっていました~  作者: 浅見朝志


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第227話 あと今回は君もお留守番ね

「ちょ、ちょお……待って待って、待って? キウイ、落ち着け?」



あたふたと、溺れたネコのような動きでこちらを制止してくるメリッサ。

ふむ?

俺は別に慌てるどころか、微動だにしてはいないのだが?



「キウイ、いつもは聡明なおまえがどうしたというんだ? ま、まさかオレを連れずにモナルダの元へ行こうとでも言うのかっ?」


「その通りだが」


「バカなっ!? それはあまりにも無謀だぞっ!?」



悲鳴でも上げるかのようにメリッサは叫ぶ。



「相手は賢者だぞ? オレやマロウと同格のヤツをおまえが倒せるとでも!? まさか、オレを制したからと調子に乗っているわけではあるまいなっ!?」


「そもそも倒しに行こうなどとも思っていないが」


「……なに?」


「話し合いをしたいのだよ、私は。文明人らしくな」



俺の言葉に、メリッサは鳩が豆鉄砲を食ったような表情を浮かべたかと思うと、



「何を言うかと思えば……それこそ無理な話だ」



それからフッと鼻で笑いながら言う。



「モナルダは話し合いなどに応じたりはしない。過去、オレが言葉を交わせたのも数回程度……ヤツはこちらの聖力を感じるや、そそくさと逃げてしまう」


「単にメリッサが嫌われているだけでは?」


「え?」


「君、モナルダのことを殺そうとしてるんだろう? そんな害意のある相手と好き好んで対話したいなんて思う方がどうかしてると思うがね」


「……え? オレ、嫌われてる、のか……?」


「十中八九な」



それをトドメの言葉とするかのように、ポカンと口を開けた間抜けな顔のまま、パタリ。メリッサは腰かけていたベッドへと倒れ込んでしまう。


いやいや、むしろ気づいていなかったことに驚きだ。

逃げられているんだからわかりそうなものだが。

やはり、賢者ともなると感性も俺のような凡俗な一般人とは異なってくるのだろうな。



「さすがキウイ様です」



メリッサの隣で何故かいたく満足げに頷いていたのは、シェス。



「戦いより対話を尊ばれる……慈悲深さがうかがえます」


「いや、別にそういうわけではないのだが」



単に、賢者だなんて強者を敵に回したくないというだけだ。

せっかく平穏を得られた魔国へと、不用意に藪をつついて蛇を出す戦犯みたいなマネもしたくないし。



「とりあえず、改めて魔王代理のエメラルダ殿に黒の森へ行っていいか許可を貰わねばな」



善は急げ、だ。

トンボ返りとなるが、即刻魔王城へと帰って執務室へと行こう。



「ああ、そうだ。メリッサ、君にもう一つ用事があったんだった」


「……」



スネたようにベッドのシーツをシワクチャにして、こちらを向こうとしないメリッサの目の前へと、俺は自室から持ってきていた紙の束をバサリと置いた。



「……なんだ、これは?」


「ポーションの聖術的応用についての理論をまとめたものだ」


「ポーション……?」



メリッサは最初は気が進まなそうに紙束を眺めていたものの、目を通すうちにそれを両手で掴むようになり、最後の方は顔とくっつくんじゃないかと思うくらいに引き寄せて、



「……液体に回復聖術を付与……魔力的なアプローチから聖力的なアプローチへの移行……フムフム……」



ゴロゴロと転がりながら最後の一枚まで速読していく。



「メリッサ、これについての西方エルフ国家で人員を募って実験を進めてくれないか? 使用器材については研究所にいるアネモネたちに相談してくれ」


「……フーン、絶対死への興味には遠く及びはしないが、まあ、これはこれで面白いじゃないか……」


「では、よろしく頼んだよ」



俺は診察室を後にする。

最後に振り返った先のメリッサは、まんざらでもなさそうな表情をしていた。






* * *






「──魔王代理として、キウイの行動を了承するわ」



海の底のような深い青色をしたエメラルダの執務室にて。

これまでの経緯を『かいつまんで』説明したところ、思っていた以上に簡単にエメラルダからの許可はいただけた。


最悪の場合、『黒の賢者との新たな戦争の火種になり得るからやめろ』と言われるのではないかと心配していたのだが、杞憂だったようだ。



「しかしまあ、それにしてもよ」



クスッとエメラルダは、こらえきれないといったように口元を押さえて笑う。



「キウイもたいがい仕事中毒ね」


「はい?」


「黒の賢者……確かに魔王陛下もおっしゃっていたわ。『どこかで対処しなければならない問題だ』とね」



ん? 話の流れがおかしいぞ?

と俺が首を傾げている間にも、エメラルダは言葉を続けた。



「黒の賢者の魔国に対する立場が中立である、ということを確認しに行こうということよね? 陛下のご懸念を察知して先回りして解決を図る……さすがキウイね」



満足げに頷くエメラルダ。

いや、俺にそんな深慮はないのだがね?

まあ、対話を試みに行くのだから中立を確認することだってできはするけれども。



「とはいえ、相手は絶対死の神術使い……万全を期して行った方がいいでしょう」


「ご安心ください。キウイ様には私がついておりますので」



そう言って誇らしげに胸を叩くのは、俺の後ろに立っていたシェス。



「この命に代えても、キウイ様のことは守り抜いてみせます!」


「いや、シェス。今回は君もお留守番だぞ?」


「……???」



俺の言葉に、目を点にするシェス。



「え、キウイ様、今なんと……?」


「シェスも留守番、とそう言ったんだ」


「……な、なぜ……」


「君は魔の位相になりはしたものの、強い聖力を持ってしまっているじゃないか。黒の森に入ったらそれを感知されて、モナルダに逃げられてしまうかもしれない」


「…………」



あぜん。

シェスは口を半開きにして、



「いっ、イヤです! キウイ様といっしょに参ります!」


「今回はダメだ」


「ですが、それではキウイ様を守れなくなってしまいます! お願いです! 私から離れないでください!」


「いざという時にはジラドがいるから大丈夫だよ」



休暇を与えている最中ではあるが、『キウイ様の影の中が落ち着きますので……』と言って引きこもってしまっている。

たぶん、ピンチには駆けつけてくれるんじゃなかろうか?



「というわけで、シェスは魔国で休暇を満喫しておきたまえ」


「……ひ、ひぃん……」



ホロッと。

シェスが小さな涙粒までこぼし始めてしまう。

そこまで辛いことなのか……?



「泣くのはよしたまえよ、シェス」


「だって、心配で心配で……ジラドは優秀ですが、真っ向から戦える戦士ではないし……ソルジャーもいない今、力押ししてくる敵が現れたら……」



シェスが俺の服の裾を固く握りしめて放さない。

まるで子どものように。



「それについて、一つ良い話があるわ」



そう言葉を挟んだのは、エメラルダ。



「キウイの下への配属を望む魔王城の新人警備兵がいるのよ。実力は申し分ないわ。黒の森に同行させてはどうかしら?」


いつもお読みいただきありがとうございます!

次のエピソードは「第228話 チィーッス、新人警備兵のあーしで~す!」です。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


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次回は12/10更新予定です。

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