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異端のダークヒーラー、魔国幹部として人類を衰退に導くようです~金と知識を求めていただけなのに、なぜか伝説になっていました~  作者: 浅見朝志


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第226話 学習能力に定評のあるメリッサさん

「──遅い。何をしてたんだ、キウイ」



休診時間となって空いたアラヤ総合医院の診察室にて。

その者、西の賢者メリッサは不満げに診療ベッドへと腰を掛けている。

何故か薄手の検診衣を着用していた。

しかも王都で使われている人間用のものを。



「悪かったね。少々立て込んでいたもので」


「フン……西方エルフ国家の舵取りをするオレを待たせるなんぞ、よほどの用だったんだろうな?」


「そうとも」



肩をすくめつつ、俺は真顔で半分ウソをつく。

風呂に入り、ミルフォビアに作ってもらったご飯を美味しくいただくなど、やることが盛沢山だったのは真実だ。

よほどの用ではないけれど。



「それに少し待たせることになるがいいか、とシェスに伝えさせたはずだぞ?」


「まあ、それは聞いたがな」



気に食わなそうにメリッサは、その隣で完全装備になって仁王立ちするシェスへと目をやった。



「しかし何だコイツは。おまえを待っている間に話しかけてみてもずっと仏頂面だぞ。いつもこうか?」


「いや、そんなことはないが……」



表情の変化が激しいとまでは言わないが、喜怒哀楽はしっかりと示してくれる部下だ。

この前俺がポーションを飲んだときなんか、これまで俺が見たことのない渋い表情を浮かべてくれていた。



「単に、私がまだこの者に気を許してはいないだけです」



ジロリ、と。

シェスは冷たい目でメリッサを見下ろした。



「私は、おまえが西方エルフ戦線でキウイ様を連れ去ったことを忘れていないぞ。もしキウイ様へと何かをするつもりなら、今度こそその首を刎ねてやる」


「ハッ……バカめ」



鼻を鳴らすメリッサは、自らの首をベルトのようにグルリと囲う黒線を指さして、



「そんなことをしたらこの首輪の効果が発動してしまうだろう? おまえの助けなど借りなくても首が飛んで行ってしまう」


「だから、その首輪の効果が発動するよりも早くおまえの首を刎ねると言っているんだ」


「ああ、そりゃあ恐ろしい。魔王級の恐ろしさだ」



おどけたように言うメリッサ。

シェスの目が鋭くなっていく。

部屋のあちこちから針の先端を向けられるかのような緊迫の雰囲気が漂い始めた。

これはよろしくない。



「さて、そろそろ用件を聞こう。まさかその服装、診察されに来たとは言うまいな?」


「フッ、その通りだと言ったらどうする?」



チラリ、と。

妖艶な微笑みと共にメリッサが手にかけたのは検診衣の手前。その聴診器を入れやすくするために大きく開く仕組みになっている部分をはだけさせ、その奥の白い肌を俺へと見せてくる。


チャキリ、と。

シェスが聖剣を抜いた。



「目的はわかった。わが主の籠絡だな……!? 斬る……!」


「いやいやシェス、落ち着きたまえよ。私はそんなことでたやすく流されたりはしない」



まあ懸念はもっともだと思うがね。

確かにエルフの身体構造はすごく気になる。

診察し放題だなんて誘惑されてしまったなら、多少心が動きはするとも。

だが、



「回りくどい話はナシだ、メリッサ。ダークヒールでは聖の位相であるエルフは診察できない……そんな基本的なことをおまえが知らないハズがない。提案の真意を聞かせてくれ」


「もちろん、聞かせるつもりだとも」



メリッサ微笑みを絶やさずに言う。



「おまえがその力で、エルフを診察できる機会があるとしたらどうする?」


「ダークヒールで……? どういうことだっ?」


「前に話した、黒の賢者モナルダは覚えているな?」


「ああ。確か絶対死の神術を使うとか……」


「そう。ヤツはエルフでありながら魔の位相を持つ異端のエルフ──ダークエルフなんだよ」


「……! ダーク、エルフ……!?」



確かに、人間の中に俺のような存在が生まれるのであればエルフの中に生まれる可能性だってあるわけだ。

しかし、まさか人に比べて絶対数が遥かに少ないエルフの中にそのような奇特な存在がいるとは!



……盲点! まさしく……盲点!!!



「フフフ、どうだ? モナルダを捕まえたくなったろう?」



俺の反応を満足そうに眺めていたメリッサが手を差し伸べてくる。



「エルフの身体構造を隅から隅まで調べ尽くす絶好の機会だぞ? さあキウイ、おまえもオレといっしょにモナルダを狩りに行こう」


「……そのモナルダがいったいどこにいるか、アテはあるのか?」


「当然」



メリッサはどこからともなく地図を取り出した。

なんらかの聖術だろう。

そして、西方エルフ国家の一点へと、その細い指で丸を描いた。



「西方エルフ国家の西の端、黒の森と呼ばれる魔物の巣窟にヤツはいる」


「そこまでわかっていて、一人で行って連れ出してこないのは何故だ?」


「黒の森の中にいる間は、オレはモナルダに勝てない。あそこはモナルダの魔術によって死にながらに生きている森なんだ。魔力的な聖域── <魔境>とでも呼べるものなんだよ」



忌々しそうに言うメリッサ。



「聖力を持つ者が魔境へと入れば、たちまちにモナルダに見つかってしまい絶対死の先制攻撃から逃れられん。そこでキウイ、おまえの力が役に立つ」


「……神話級ダークヒールか」


「その通りだ。できるだろう?」



なるほどな。

その黒の森を生き返らせて魔境を無効化しろ、とメリッサは俺に言っているのだ。

果たしてそんなことが可能なのかと言えば……可能なのかもしれない。



「モナルダがどのようにして黒の森を作ったのかはわからないが、土壌や木々の一つ一つに何かの仕込みをしたとは考えにくい。何か核があるのだろう、森を死にながらに生かすためのな。その効果を反転させることができれば、あるいは……」


「そうそう。そして黒の森の効果が失われたところへとオレが入り、モナルダを殺して捕まえる。その後、またキウイに神話級ダークヒールを使ってモナルダを生き返らせてもらえば、万事上手くいく」


「私も晴れてダークエルフの診察ができるというわけか」


「そういうことだ」



メリッサは得意げに腕を組んで鼻を鳴らす。



「フフフ、それにしても予想通りだ。やはりキウイが食いつくのはソコの部分か」


「ソコ?」


「診察だよ、診察。オレも学習はするんでね、ちょっと頭をひねったのさ」



トントンと指で頭を叩きつつ、メリッサは言う。



「キウイにとって未知の素材をぶら下げてやれば、おまえがモナルダの確保に前向きになってくれるだろうとな」


「なるほど。だとしたら上手くいったようだぞ、メリッサ」


「ということは?」


「ああ。黒の賢者モナルダに会いたくなった」


「フフフ!」



満面の笑み。

メリッサは、その表情をパァッと輝かせた。



「よしよし! それではいつ出発するっ? 今からでもいいぞっ!?」


「いや、準備を整えたいのでね」


「おおっ、そうだったな! 神話級ダークヒールの生贄も必要だ。王都の牢屋から適当に戦犯でもかっぱらってくるか?」


「いや、勘違いしているようだが、私はソレを使う気はないよ」


「……え?」


「神話級ダークヒールを使う気はない、と言っている」



メリッサがキョトンとした表情でこちらを見た。

が、しかし。

それに構わず俺は通告する。



「メリッサ、君は西方エルフ国家で通常業務をしていたまえ。お留守番だ」


「……ふぇぇぇ?」



口を開きっぱなしにしたメリッサから、浮き輪から空気が抜けるようなショボショボした声が返ってきた。


いつもお読みいただきありがとうございます!

次のエピソードは「第227話 あと今回は君もお留守番ね」です。


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次回は12/8更新予定です。

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