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異端のダークヒーラー、魔国幹部として人類を衰退に導くようです~金と知識を求めていただけなのに、なぜか伝説になっていました~  作者: 浅見朝志


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第214話 三賢者の一人:黒の賢者モナルダ

「ハァ……あれだけの生命力があれば、ファーストプランは安泰だったのに……」



落ち込んでグッタリとするメリッサ。

まあ確かに、四百年の努力が無駄になったということであればさすがのエルフでも堪えるのだろう。

気持ちはわかる気がする。

だが、それにしてもだ。



「ところでメリッサ、そもそも君が聖剣を王国に授けた目的はなんだったのだね? 溜めた生命力は自分が使う予定だった、などと話していたが」


「……モナルダのヤツを、確実に殺すための武器にするためだよ」


「モナルダ? 誰だね、それは」


「こう言えばわかるか? モナルダはわれら西方エルフ国家の三賢者の一人であり、ヤツを知る者からはこう呼ばれている。黒の賢者、と」


「ほう」



マロウ、メリッサに続く三賢者の内の最後の一人か。

黒の賢者という通称を聞くのは初めてだったが……。



「そのモナルダは同胞なのだろう? 何故殺そうとしていた?」


「……逃げるからだ」


「は?」



メリッサはしかめ面になって俺の方を向く。



「モナルダがオレから逃げ続けるから……いったん殺して確保してしまおうと思ったのだ」


「……」



何を言ってるのだろう、コイツは?

その心底からの疑問が顔に出てしまったのだろう、メリッサはさらにムッとしたように眉を吊り上げる。



「仕方ないだろうっ! モナルダの極めし神術は <絶対死>! そんなもん、喉から手が出るほどに調べ尽くしたいわ!」


「絶対死?」


「知らんか、絶対的な死とは何かを」



フン、と。

メリッサは無知を笑うかのようにして鼻を鳴らす。



「キウイよ、この世に『直接的な死という概念を体現した死などは起こり得ない』ということについて考えたことはあるか?」


「……いや」


「通常、死とは『事故・事件・病気・その他あらゆる直接的な要因がもたらした間接的な結果』に過ぎないのだ。つまり死とは、間接的にもたらされるもの以外には起こり得ない」


「ふむ。哲学的だな」


「だが、絶対死は違う。術者は対象者へと何の直接的要因にも紐づかない死を与える。つまり、直接的な死を」


「……つまり?」


「つまり黒の賢者モナルダは、『いかなる者でも殺せる』神術を使えるということだ……! おまえだろうが、オレだろうが、そして魔王ルマクだろうが、誰でもな……!」



メリッサは興奮したようにニヤリと口端を歪める。



「興味深いとは思わないか、キウイよ? この絶対死にかかれば、心臓が止まるから死ぬのではなく、死んだから心臓が止まるんだ! 『死因が死そのもの』になるという矛盾をこの世に引き起こすそんな特異術式の、その全貌を、たとえ一度モナルダを殺してからでも暴いてやりたいと思うのはおかしなことではなかろうっ!?」



メリッサは一息にそこまで言い切ると、フゥと満足気にひと息を吐くと、



「キウイよ、オレに協力しろ。この際、例のおまえの神話級ダークヒールだけでもなんとかなるっ! おまえだってこの絶対死には興味が尽きないハズ──」


「いや、今のところ……興味はないな」



だって、それはつまるところ死の術式なのだろう?



「私はね、ダークヒーラーなのだよ。誰かを治す術式ならまだしも、誰かを死なす術式を手に入れたってどうしようもないじゃないか」


「……はっ!? いやだが、知的好奇心は疼くだろう!?」


「メリッサ、数千年生きている君にはわからないのだろうがね……私は人間なのだよ。つまり、寿命がある」


「そ、それがどうしたというのだっ」


「百年やそこらで追求できる分野は限られるということだ。多少の横道には喜んで逸れるがね、しかしそんな大層な神術の解明に付き合っているほどの余裕はないな」


「なん、だと……!」


「というわけで、この話は終わりだ。聖剣については残念だったな」



俺はポンと、メリッサの肩へと触れる。



「ではそろそろ、運んでもらうとしようか。頼んだぞ、メリッサ」


「ぐ、おおお……っ! こ、このオレが……使い倒されるだけ使い倒されるなど……この数千年で味わったことのない屈辱だぞ……!」


「ちなみに何人乗りかね?」


「オレはッ! 送迎車ではないぞッ!」


「それはすまない。そういうつもりで聞いたわけではなかったのだが……では言い直そう。一度に何人まで運べる?」


「……フン。別に制限などはない。ここにいる者たち程度なら全員運べはする」



今にも牙を剥きそうなメリッサだったが、俺の後ろにはピタリとジラドが、メリッサの後ろには剣へと手をかけるシェスが、さらには俺たちの姿をズンとした圧力を持った視線で見下ろすヘラクリーズがいるので、何のアクションも起こせやしない。

まあ起こしたところで首輪の効果があるから、俺に害を与えた瞬間にメリッサの首も飛んでしまうのだが。



……さて。



「ヘラクリーズよ、君はここに残りたまえ」


「はっ。私は何をすれば……」


「アポロ殿下へと、私が魔国側に話をつけに行ったと伝えるのだ」


「はっ」


「それと、王国軍本部内の制圧は完了しているとのことだったが、念には念を入れて、アポロ殿下の身を守るように」


「承知いたしました!」



……さあ、ここからがもう一つの山場だ。



一時的な停戦状態は作り出せた。

あとはメンシュリッシュにいる魔国幹部たち、そして魔王ルマク・オゥグロンを説き伏せて、魔国軍の突き出す矛を収めてもらわねば。


メリッサの引き寄せの神術により、俺たちは王都上空を一瞬で翔けていった。


いつもお読みいただきありがとうございます!

次のエピソードは「第215話 ズゴゴじゃないが。ボグ殿」です。


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「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


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次回は11/10更新予定です。

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