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異端のダークヒーラー、魔国幹部として人類を衰退に導くようです~金と知識を求めていただけなのに、なぜか伝説になっていました~  作者: 浅見朝志


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第212話 もしもし全軍?こちらアラヤですけど…

「──聖剣に蓄えられた莫大な聖力が、ヘラクリーズへと注ぎ込まれた、だと?」



参謀本部室の床の上。

椅子に腰掛けヘラクリーズやシェスらの話を聞いていた俺は、そこでいったん頭の中を整理する。



……ゾンビ・ソルジャーでいた間は位相が魔だったはず。回復の聖力なんて注がれてしまえば、神の炎によって燃やし尽くされてしまうはずだ。実際、青い炎が噴き出していたようだし。



「ヘラクリーズよ、君の聖剣から出たという炎の正体に心当たりは?」


「ハッ、もともとこの聖剣が持つ力です。私の聖力を糧として溜め込まれた生命力により、相手を燃やし尽くすことも、自らを回復させることもできます。どうやら勇者アレスは、その生命力をそのまま飛ばす斬撃にして使っていたようですが」


「もともと? そうか、確かその聖剣を四百年前の君に……いや、王国教会に託したのは……」


「エルフの賢者殿です」



つまり、メリッサだ。

そう考えると納得がいくことがある。

メリッサは聖力と魔力、それぞれの根源となる生命力の扱いに長けた聖術師。

位相を越えた働きをする仕掛けを聖剣に施していたとしてもおかしくはない。



……聞かねばな、いろいろと。



「ヨシ、帰ろう」



俺は立ちあがると、シェスやスワンたちを見渡して言う。



「可及的速やかに西方エルフ国家に行かなければならない用事ができた」


「え、しかしキウイ様、国王ゼウスの降伏宣言を見届ける必要があるのでは?」


「む……」


「それに、ドクター・アラヤ、通信指令室で指揮をとるアポロ殿下を置いていくわけにはいかないのでは?」


「むぅ……」



シェスにもスワンにも止められてしまう。

ああ、歯痒い。

ゾンビ・ソルジャーがひとりでに生き返るという神秘、それを解き明かす手がかりが手を伸ばせば届くところにあるというのに、みんなそうしてはいけないという。



……じゃあいったい、俺はこれからどうすればいいというのだねっ?



と思わず唇を尖らせていた、その時だった。



──ジリリリッ、と。



参謀本部長室の電話が鳴った。

魔国の者たちはみなビクリとして警戒態勢に。

それも仕方ない。

魔国には電話はないからね。

俺が取るしかあるまい。



「はい、アラヤです」


『こちら、通信指令室よりアポロ=ルエ・ヒュマーニ。アラヤ様、ご無事で何よりです!』


「殿下こそ。それで、いかがされました?」


「それが……アラヤ様の力をお借りしたく」



アポロは神妙な声になって言う。



『実は、現在の最前線メンシュリッシュにて、夜を徹して魔国軍のゾンビ軍団が攻めてきているようで、被害が拡大しているのです。ゾンビは当然、こちらが白旗を揚げたところで止まってくれもせず……どうかアラヤ様のお言葉で、事態を収めることはできないでしょうか?』


「はぁ、ゾンビ軍団……」


『メンシュリッシュでは拡声機を用意しておりますので、アラヤ様のお声かけによって、最前線にいる魔国幹部の誰かと意思疎通を図れないか、と考えているのですが……』



ゾンビ軍団、ということはもしかすると魔国軍はジャームの力を使っているのだろうか?

とすると、ジャームのゾンビの作り方によっては、ゾンビたちは魔国幹部の一人である俺の言うことも聞くように設定されている可能性はある。



……それに、この機に乗じて魔国の誰かと意思疎通を取れるのだとすれば、俺としても願ったり叶ったりだ。



「わかりました。やりましょう」


『ありがとうございますっ! それではさっそく、最前線と繋ぎますので、よろしくお願いいたします!』



そうしてアポロが電話口を離れたかと思うと、何やら高い電子音が聞こえ、それからしばらくして、ザザッとノイズが走る。



『──魔国幹部のキウイ・アラヤ様でございますねっ!?』ザザッ



発砲音やら爆音、人々の悲鳴などをバックミュージックに、聞き覚えのない男の声が聞こえてくる。

どうやら回線が最前線とつながったらしい。



『──わたくし、前線で指揮を執っておりますソクシー中佐でありますっ! 準備は整っておりますので、いつでもお声がけを──ウワァァァッ! ゾンビが、もうここまでっ……』ザザッ


『──マズいぞ! ソクシー中佐がゾンビに連れていかれた!』ザザッ


『──クソ! 次の指揮官はっ!?』ザザッ


『──マズい! 向こうの壁を上られてる! 内側にゾンビが……ギィヤァァァッ!』ザザッ



どうやら阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっているようだ。

これは早く声をかけてやらないと。

俺は咳ばらいを一つ。

そして、



「あー、もしもしゾンビ全軍? 魔国幹部のキウイ・アラヤという者だけれども。攻撃を中止したまえ。繰り返すぞ、攻撃を中止したまえ」



何度か俺は言葉を繰り返すと、それから、



「誰か魔国幹部でコレを聞いてる者はいないかね? 私もウルクロウ殿も無事だ。国王を捕虜にし、王国軍本部も乗っ取ったことを報告する。朝を迎え次第、メンシュリッシュへと向かうので停戦して到着を待ってほしい。それと、」



何よりも、ここからが重要だ。

俺は一呼吸置くと、言葉を続ける。



「メリッサを連れてきてはくれまいか? メリッサだ。聞きたいことがあるのだよ、メリッサに。……あ、いや待てよ? メリッサに王都まで迎えにきてもらおう。それなら一瞬でメンシュリッシュにも行けると思うので。メリッサを王国軍本部まで派遣してもらえるとありがたい……えー、繰り返す──」



気付けば、電話口の向こうの喧噪の質は変わっていた。

戦闘音は聞こえなくなり、喧噪も収まっているようだ。

代わりに聞こえるのは、



『こ、攻撃が止まった……?』


『ゾンビたちがピタリと立ち止まったぞっ!』


『ソクシー中佐が生きてた! 嚙まれてたけど生きてるぞぉっ!』



などといった、兵士たちのホッとしたような声の数々だ。

どうやら、俺の声掛けは効果があったらしい。

よかったよかった。



──だが後日、



『キウイ・アラヤは単身で王都を落とす』


『キウイ・アラヤは十万を超すゾンビの群れを一声で止める』


『キウイ・アラヤは西方エルフ国家の賢者を送迎車扱いする』


『キウイ・アラヤは魔国最恐の実力者である。とうてい敵対すべき存在ではなかったのに、国王ゼウス、並びに王国軍は底抜けの大馬鹿者である』



王国の各新聞に載せられた盛り過ぎの記事によって、俺の知名度は恐怖と共に王国中に刻まれることになってしまうことになるのだが……まあそれはまた別の話である。


いつもお読みいただきありがとうございます!

次のエピソードは「第213話 送迎のメリッサ」です。


次回は11/5更新予定です。

よろしくお願いいたします!


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