001話
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何処かに少年がいた。
少年は本を読むのが好きだった。本の虫と呼ばれる部類の者だろう。特に少年は御伽噺や神話が大好きで大好きで、たまらなかった。赤ずきんの少女、ヘンゼルトグレーテル、不思議の国のアリス、北欧神話。その全ては、わかりやすく善悪が存在しており、子供の目から見ても明らかだった。
少年はいつか、自分も善側の人間になれると信じていたし、そう思わないとこんな世界やってられなかった。縋りどころがないと死んでしまいそうだった。
だが、世界は弱い者に優しくはない。
──────いや、冷たくされるだけならまだマシだった。世界は、鬱憤を少年で晴らそうとするかの様にありとあらゆる災厄を投げた。
家庭内暴力や、イジメなんかは当たり前。
だが、────それでも親しくしてくれた大人もいた。
────それでも話しかけてくれる子供もいた。
彼らは皆、自分を悪の手から守ってくれる善側の人間だと信じていた。
だが、同調圧力とは恐ろしいもので周りのありとあらゆる人を巻き込み、ヒカリをヤミにしていく。無関係の者を加害者にしていった。もう、助けてくれる人はいない。
周りにいた人は今ではもう加害者の一部だ。
少年は善が悪に変わる事を初めて知った。
だが、そんな少年にも守りたい物はあった。無くしたくない物はあった。
────紙切れだ。
しかも生まれたての子供が読むような御伽話だ。
少年になって読んでる奴なんか誰一人いない。
だが、それは少年にとって世界一大事な物だった。
親なんかより偉大で、聖職者の奴らより神々しくて、自分の妄想なんかより壮大な幻想を見せてくれる紙切れ。唯一、現実から目を背けられる物
そんな事を感じてどれだけ経っただろう。
世界が鬱憤を晴らしきったのか、いつまでも光を無くさない少年に飽きたのか、いつの日からパッタリと悪は消え去った。
永遠と思える時間降っていた、降ると思っていた雨が消え去った。
鬱陶しい餓鬼共、醜悪に知恵を付けた老害共。
──何時しか消えていた。
光が差し込み、太陽が見える。
大きな光は少年に問う。
「なぁ、お前1人か?」
その声は小さく、か細い。だが、大きい。いや、少年には大きな光に見えた。お空に光る大きな大きな光に見えた。
「くるか?俺と」
応答はしない。
──だが
光は探し求めていた。未来を託すに足りうる、弱者を。
若人は探し求め続けていた。心を託せる強者を。
運命と呼ばれる必然によって引き寄せられた強者ども。それは光に集まったわけではない。それは光に集まる様な汚い虫ではないのだ。弱くても、暗くても、自ら光を出せる。悪には染まらない絶対的な光。醜くても、穢されても、決して消えることの無い光だからだ。
お互いがお互いの光を放ち、雨が晴れ、虹がかかる。
先程まで降っていた煩い水はもう消えた。気持ち悪い餓鬼ももう消えた、────なら己に残っている僅かな物はなんだろう。
────そう、己に残るのは光のみ。
無言で老人は手を差し伸べる。
──────そこに言葉は必要ない。いるのは、肯定か否定のみ。
無言で若人は手を取る。
その意思は肯定──
逃がさないよう、ギュッと。だけども影は造らないように優しく。
だが、強く握りすぎたようだ。
しゃがんで背丈を少年────いや、青年同じにしていた老人がよろける。
「ハッ!しまらねぇなぁ?俺らの新しい門出だぜ?」
老人は笑う。
若人は泣く。
「いいんだ。今まで濡れ続けてきた僕にはこれぐらいが丁度いい。これが僕っぽい」
少年は救われた。体も心も。何もかも。光は全て照らしてくれる。否応なしに。
「いいのか?いいのか......なら行くぞ。ノーヴァな英雄!」
心地良い。一音一音が心地良い。ずっと聴いていたいぐらいだ
わけのわからない事だらけだが、行ってしまおう。腐ったここからは。
「ああ、行こう」
かつてないほどの幸福を噛み締め、握りしめて道中を行く。
人と一緒に歩くなんていつぶりだろう。
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男との共同生活は驚きの連続だった。
男は自分の名前を教えてくれた。
男は鬱陶しいからと、敬称は無くせと言った。
男は何でも知っていた。
「俺の名前はレギト・ヴィヴァント、ただの老体だ」
初めて誰かの名前を知ったかもしれない。
初めてまともに人と喋ったかもしれない。
「お前、名は?」
「僕の名は...いや、アンタが付けてくれ。レギト」
名前が変わったからといって、過去は変わらない。
だが、過去に囚われていても未来には進めない。
だから昔の僕は捨てる。何もかも。そう何もかもだ。
「じゃあ、レギト・ノーヴァだ。英雄の始まりさ」
英雄。
御伽噺にでてくる存在。
だが、現実にはいない。
だが、誰もが欲している存在。
不条理に打ち勝ち、みんなの笑顔の象徴。
「ああ、英雄でも何でもなってやる。」
半ばヤケクソだ。
元々死にかけの身だ。なら、夢を追って死ぬことを選ぶ。
本来なら無謀な挑戦。
だが、光が英雄と呼んでくれるのだ。世界の中心と思える光が自分を、濡れていた自分を英雄と呼んでくれるのだ。
理由はそれだけ。
ちっぽけ?
そんなの幻想?
それはお前らが決めることじゃない。
それは僕が決めること。
それは僕自身が選択することだ。
お前らごときには操作できない。
闇は光を簡単に染め上げる。
逆もしかり。
折れず、曲がらず。真っ直ぐと先を見据えた目は光に照らされ白く輝く。
「そうか。即答か。嫌いじゃないぜ?そんな無鉄砲な野郎はよ。」
無鉄砲...
「ま、いいさ。英雄は平和を象徴する者でもあり、時には悪を投げかける者だ。」
英雄、悪をやっつける。なんて壮大な事をするのではない。ただ悪に対して原因的対処をするだけ。ただ我らの陣営に敵対する者がいればそれがどの観点から見た悪ともわからず、殺す。出る杭は打たれる。一方的に見た情報と感情的になった心で善を殺す。殺す。殺す。殺す。─────殺す。
だがそれは偽善者と呼ばれる者にも例外なく当てはまる......
これは「タイトルコール」未だに決まらない自分のタイトルを創り、叫ぶ物語だ。
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