本編
「どうしたの?」
告白と分かっているが分かってないふりをして聞く。
「…」
特に何も言わない東さん。
正直に言うと早く帰りたい。だかここで急かすのもなんか違う気がするので落ち着いて余裕のあるふりをする。
「えっと…どうしたのかな?」
もう一度聞く。
「…です…」
東さんが小さい声で言った。
上手く聞き取れなかった。
人見知りなんだろうか?
「え?ごめん、もう一度言ってもらえるかな?」
東さんはコクリと頷きもう一度小さい声で
「Xの…私です…」
といった。
よく分からなかった。
正直困ってしまう。
俺がよく聞き取れなくて困惑しているのに気がついたのかもう一度東さんは口を開いた。
「Xの…Noaって…私…です」
と言った。
「え…」
言葉にならない声を出す。
長い沈黙が続く。
俺がその言葉の意味を理解するのに何秒たっただろうか。
「えぇぇーーー!!」
思わず声を出してしまった。
あのNoaさんが東さんだとは思わなかった。
確かに同じ名前だとは思ったことがあったが俺のNoaさんに対する印象と東さんに対する印象は真逆だった。
学校の1人くらいネッ友なのでは無いか
なんて妄想をしたこともあったが全部妄想で終わらせていた。
しかし冷静になって考えてみると彼女はなぜ俺にその事を話したのか。
話したところで意味はあっただろうか。
ましてや誰かと話すことが苦手とする彼女はわざわざ理由もなく話すとは思えない。
「えっと…それで東さんはどうしたいの?」
そう聞いた。
沈黙が続く。
東さんは頬を赤くし急に走ってどこかに走り去ってしまった。
突然のことすぎて呆気にとられて追いかけることもできなかった。
なんだったんだろうか。
まぁ告白じゃなくて良かったな。
などと呑気なことを考える。
「とりあえず帰るか」
誰にも聞こえるはずない独り言をポツリと呟いて帰路に着いた。