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朝の休日

作者: にお

*この作品は習作のために書いたものです。深い意味はないので軽い気持ちでお読みください。


 部屋を出ると廊下に棲まう寒気が私に襲いかかる。


 10月の中頃、残暑厳しかった3日前が嘘のように今や朝の気温は20度を下回る。


 半袖半パンで過ごすことが習慣となってしまい、夜中に寒さでこむら返りが起き始める季節だ。


 思い返すだけでふくらはぎが攣る感覚が蘇り、気遣うように手でさすった。


 今日は日曜で家族はみなまだ眠っているようで一階からテレビの音は聞こえてこない。


 陽もまだ完全には昇ってはおらず、私は電灯をつけるとままならぬ足取りで軋む廊下を渡り、ゆっくりと下へ降りた。


 一階の祖母の和室からテレビの音が聞こえ、一瞬立ち止まる。


 障子を少し開けて部屋を覗くと祖母は側臥位で眠ったままでどうもテレビをつけたまま寝てしまったようであった。


 祖母はもう90近くになり、横たわる姿に死を連想してしまう。


 思わず声をかけて確認しようとしたが、呼吸で上下する横腹を見てその気も失せた。


 起こさぬようゆっくりと障子を閉め、居間のソファにゆっくりと座る。


 大きな欠伸を一つして縁側で動く小さな影に驚くも、それがスズメのものだと分かると落ち着きを取り

戻す。


 時間は午前6時を過ぎたぐらいでまだ誰も起きてこない。


 テーブルに投げられたリモコンでテレビ番組を適当に変え、最後はニュース番組にした。


 朝早くからこんなに正確に文章を声に出して伝えられる事に度々驚かされる。


 リハーサルや原稿、現場のセッティング等いろいろあるだろうから少なくとも2時間前には現場入りしているんだろうか。


きっと前日は夕日が沈むと同時に寝ているのだろう、大変な仕事だなと耳から抜けていくニュース報道のキャスター達に感心していると、腹の音が鳴った。


 昨晩は随分と早く食べたのでその分、空腹も早い。


 なにか食べるものはないかと冷蔵庫ヘ向かい、周辺の調理器具がぶら下がる場所もみる。


 5枚切りの食パンが未開封で置かれ、冷蔵庫からは卵とハム、そしてケチャップを取り出した。


「今日はピザトーストだな」


 玉ねぎもピーマンも見つけたが、切るのが非常に億劫だし朝からそこまでの労働はしたくない。


 簡単に作れてある程度おいしいがあれば上等であると、私は自分に言い聞かせた。


 ものの2分で準備でき、オーブントースターに放り込んで焼き始める。


 決して朝にパンは食べない私でもたまにはこういう日があっても良いと寛容の精神で臨む。


 焼き上がるまでは寝る前に沸かしておいたヤカンの緑茶を飲みながら、テーブル椅子に座ってニュースの続きをみていると、小麦の焼ける良い香りがトースターから漏れ始める。


 思わず立ちあがり、焼き上がる姿を見つめながら時計を見た。


 あと数十分でここも慌ただしくなるだろう。


 父が祖母の事で小言を言い、祖母がそれに反論して母がなだめる。


 誰もいない、静かな空間。この時間だけは誰にも教えたくない。

 

お読みいただき、ありがとうございました。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 最後まで、とても読みやすく またイメージの浮かびやすい描写が良かったです [一言] 日々の日常のいち場面を切り取って描く なんでもない出来事だけれど、 それを飽きさせずに読ませることは …
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