205/211
『来る事は無い昨日を想う』11-3
俺達が舞台に上がると歓声が聞こえた
それが主に俺達二人に対するものだと言う事は能力を使わずともわかっていた
そして、その中のほとんどが男女逆である事に気付いていなかった事は能力を使ってわかった
司会者からのインタビューには部長が答えていた
バレてないなら、最後までバレずに通したかった俺は俺達にインタビューが回ってこないか内心ビビっていた
そこらへんは部長が気を使ってくれたらしく
司会者が他の部員にも、と言った時には真っ先に一年生の二人を指名した
ついでに俺達については企業秘密とか言って
インタビュー禁止にした
元はと言えば彼女が原因だが、この事については感謝する事にした
ちなみに、この間
海月は終始俯いていた
少し違和感があったが
その時は深く追求しなかった
そして、舞台から下りようと言う時だった
海月が小刻みに震えていた
先程、よりも激しく
俺は小声で問い掛ける
『…どうした?海月』
「……そ……その…」
『海月?』
「…………」
海月が顔を真っ赤にした
その瞬間、部長の口元が微かに歪んだ事に俺は気付いた




