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『来る事は無い昨日を想う』10-2
一閃
銀色の軌道が
その世界の一部を破壊する
パリンと、呆気なく何かが割れる音がすると
"奴ら"の世界に
俺の存在が許され
俺は右手に刀のような…両刃剣を持ち
左の腰にその鞘があった
そして、シンデレラのドレスなんて言う
奇異な格好だった
…本来、侍ならば刀は左手で持ち
鞘は右の腰だ
しかし、俺が持っているのは両刃剣だし
俺は侍でもなんでもない
俺は剣を鞘に直すと
『世界』の中心を凝視する
そこには黒い影
…"奴"…
"奴ら"の中核だ
『…………』
感情が一切起伏しないまま
俺はその場所にゆっくりゆったりと歩いて行く
そして、間合いに入ると再び剣に手をかける
(……"奴ら"が命あるモノなら…
…やはり、俺は殺戮者なのだろう)
その思考が唯一その時
俺が想い
俺を支配した感情だった
………
音もなく、中核が崩れて行く
すでに剣は鞘に納まっていた
俺は"奴ら"の世界の崩壊が訪れるのをただ、佇んで待っていた