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『来る事は無い昨日を想う』9-5
-同日-PM0:00
行進が開始された
俺達が何番目に出るのかわからないが
街自体が学園であるこの学校では
街を一周するらしい
さっきまではどうでもよかったが
いざ、本番になると
そうもいかなくなった
(…とんだ、恥晒しだな)
少し俯いて
長目の前髪で少しでも顔を隠そうとすると視線が突き刺さった
好奇の目に晒されるのは先から何度も受けているが
その視線は性質が違う事を俺は能力で感じ取った
視線を上に向けると
瑠月と目があった
一瞬、たじろぎそうになったが、俺は平静を装った
瑠月は美術部で俺達のいくつか前だ
瑠月は不思議そうな目をしていた
瑠月には演劇部に入った事を伝えていない
別に隠した訳ではなく
教えてなかっただけだ
だから、彼女は俺が演劇部に入った事を知ってるかどうかは知らない
ただ
全てを見透かしてるような瞳で
俺を見つめていた
俺が見つめ返して
しばらくすると、瑠月が赤面し
目を反らした
第9話 魔女