196/211
『来る事は無い昨日を想う』9-4
「あら、よく知ってるわね
シンデレラが灰かぶりって」
『まぁな』
「ちなみに、今回は三年も出るの、私が魔女」
(ハマリ役だな…)
「褐式君と黒鐘君が馬車を引く鼠の馬で
紫塚ちゃんが継母
橙坂ちゃんと千歌名ちゃんが義姉」
『ふぅん…』
(性別逆転は俺達だけか
…しかし、何故部長は海月と千歌名ちゃんだけ名前で呼ぶんだ?)
「じゃ、履いてみて」
『……やっぱり?』
「もちろん」
『……ハァ』
俺は脚をハイヒールに入れる
予想外にフィットして驚いた
『…でも、これぐらぐらするぞ』
「履き慣れてないからよ
普通より踵は低めだから大丈夫」
『………』
「じゃあ、これでチェックは完了ね
他の皆が着替え終わったら行きましょう」
『………』
それから、約20分程
俺と海月は部室の前でぼーっと立っていた
着替え待ちだった
もちろん、男女別なのでその分時間を喰った
周りからヒソヒソと声が聞こえていたが気にならなかった
物事がここまで来てしまってからは
あまりにも遅すぎで
その為、客観的に自分を見ているようだった
どうでもいいや
そんな気分だった
そして、それはどうやら海月もそうだったようだ