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『来る事は無い昨日を想う』9-3
「まぁ、少し身長が高いけど
それは大目に見ましょう」
(何が大目だよ…)
俺の身長は170センチ程
確かに女性であるなら高いほうかも知れないが
今時の同年代の男子の平均を下回るだろう
「青海君はとりあえずはよしとして、海月ちゃんは…」
『とりあえずって何だよ』
部長は海月に目をやった
「うん、似合ってる」
海月は微妙な顔をした
そりゃ、そうだろう
俺が海月の立場なら俺だってそうする
(…って、俺もそんな立場だったな)
「じゃあ、これ
上から羽織ってね
靴も、ね」
部長が海月に差し出したのは少し派手目の上着らしきものと男物の革靴
その全てがピッタリはまるのがこの女の恐ろしいところだ
「で、これ」
今度は王冠らしきかぶりものだ
「こう…かな?」
「うん、王子様らしくなったわね
じゃ、青海君、コレ」
部長が俺に差し出したのは
カチューシャを改造したらしいティアラと
『…ハイヒール?』
「そ、硝子の靴なんて無いから、それで代用」
(真っ白なハイヒール……硝子の靴?)
『…灰かぶり、か』