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『来る事は無い昨日を想う』8-2
一歩踏み込んだ瞬間
スポットライトが俺達を照らした
その瞬間
俺の中を舞台から観客席までの全ての光景が駆け巡った
頭が真っ白になりそうになりながらも、
俺は自分に落ち着けと言い聞かせ
自分の台詞をを発した
『兄ちゃん達遅いよ〜』
続けて海月が台詞を発した
内心ホッとしながらもキチンと演技出来ているか不安になった
右手の拳を握りしめた
すると、神白 惟からもらった十字架を掌で感じた
手袋は外せない事は前々から話している
ついでにこのアクセサリーも外していない
何故だか、惟に…いや、舞に応援されている気がした…
俺はその時から演技に集中出来た
先までの不安定な気持ちが嘘のように
まるで、魔法だった
気がつくと最期のシーンを終え、
観客に向けて頭を下げていた
俺は、宙に浮いたような気持ちで無我夢中で演技をしていた
舞台から降りるまでに役に成りきっていたんだ…