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『来る事は無い昨日を想う』6-8
「助けた…?」
『まぁ…そうなるのかな?』
「はい
うづ君は私の恩人です
この前、私が悪い人にからまれた時に助けてくれたのです
格好よかったですよ」
『………』
(何だか…むず痒いようなおかしな気分だな
…その言いかただとまるで…)
「…じゃあ…
私からもお礼をしないといけませんね
ありがとうございます
青海さん」
『……別に…』
俺は視線を落とす
カップの中のコーヒーが少し揺れていた
『…たいした事…してないから…』
「そんなこ……」
俺は人差し指を立てて沙恵の唇の前に持って行った
意味あい的には"黙れ"に近かった
『…そういう事にしてくれ
構わないだろ…?』
(不相応なヒーロー像を作りあげて
かえって傷つくのはこの子だ…)
第6話 歪んだヒーロー