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『来る事は無い昨日を想う』6-5
「はい、そうです!」
『どうしたんだ?今日は
…あ、お姉さんに会いに?
…いや、待てよ?
さっき見つけたって…』
「はい、そうです
うづ君に会いにきました!」
『俺に…?』
「この前のお礼です
その節はお世話になりましたって」
『難しい言葉知ってんだな…』
「あ…はい
それで…今、お暇ですか?」
『まぁ…部活は終わったし
特に…用がある訳じゃあないが』
「じゃあ、私に付き合って下さい
お礼にお茶ご馳走します」
『え……?
…それは…まずくないか?
お家の人に迷惑じゃあ…?』
「?
何を言ってるですか?
そこの喫茶店で、です」
『え…ご馳走するって…お金は?』
「お母さんにお話して
貯金を少し下ろしました
…ほら」
沙恵が見せた財布の中には五千円札があった
『……いや…でも…君みたいな子に奢ってもらうのは気がひけるって言うか…』
「え…?
でも、お礼するのは私ですし」
『うーん…じゃあ、気持ちだけ受け取っておくよ』
「ダメですよぉ、それじゃあ…」
『わかった
じゃあ、俺が奢るよ』
「それはもっとダメです!」
『…うーん…』
(…困ったなぁ…)