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『来る事は無い昨日を想う』5-5
-同日-夕方、体育館
俺の役は脇役ではあるが
それなりに重要な役だった
と、言っても
演じるのは俺を含めても6人
部長達三年生は
演技指導と演出に回るらしい
部長曰く「私達は本来居ない人間だから
主役はあなた達よ」
だそうだ
そして、何故だか
俺の役を皆ハマリ役だと言った
どうやら、俺と海月は似ているらしい
自分では気付かなかったが
本当に双子の兄妹と言われてもおかしくないそうだ
もっとも、海月はそう言われて複雑な表情をしていた
そして、意外な事に
俺にはなんと言うか
役者?としての才能があったらしい
初めてにしては…
と言う意味でなく
発声さえちゃんとすれば
指摘する場所は無いとまで言われた
俺としては、喜んでいいのかわからないが−−
-「意外?
何言ってるんだ?」-
『……ッ……!』
「…?
雨月?どうしたんだい?」
『ああ、いや
なんでも無い……』
(急に…話しかけるなよッ!)
すると"ソレ"は嘲りを混じった微笑をこぼした
『………』
俺は奥歯に力を入れた
-ギリッ…-