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『来る事は無い昨日を想う』5-4
「とにかく、お願いするわ」
『…まぁ、いいさ
わかった、やってみる』
「それはよかったわ
じゃあ、これ台本」
-ポンッ-
『……台……本…?!』
物凄く分厚い本が手渡された
「よかったよぉ…
雨月がOKしてくれて」
『………』
(なんだか、嫌な予感がする)
「じゃあ、ちょうど
今から練習よ
ちゃんと、台詞覚えてね」
『……台詞…覚え……
え……まさか…
俺…舞台に…?』
「そうよ?」
(…そっちは予想してなかった…
てっきり、裏方だと…)
『…でも、俺…ずぶの素人だが…』
「…ねぇ、雨月
もしかして、裏方だと思ってた?」
俺は軽く頷いた
「…雨月って、ズレてるね…
自分が演劇…するって発想はなかったの?」
『ズレてるって…
わからないだろ
詳しい説明がなかったんだから…』
「その前に了承しただけじゃないかーっ」
そう
それが、俺の失策だった
『…ハァ
で、俺は誰を演じるんだ?
まさか、いきなり、主役な訳じゃないんだろ?』
「この子よ
双子の兄妹の兄の役
ちなみに妹役は藍ちゃんよ」