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『来る事は無い昨日を想う』4-5
「…でも…なんて言うか
こういうのいいですね」
『うん?』
「誰かに作ってもらった……まぁ、私に対してじゃないですけど
作ってもらった料理を食べるって
…なんだか、暖かい気持ちになります」
『…家では…作らないのか?』
「…朝は自分達で勝手に
昼は購買部
夜は私が作る事はあっても私に作ってくれる事はありません…」
『料理…出来ないのか?
お姉さんらは』
「はい
…お姉ちゃんは」
(………?
なんだ?何かが引っ掛かる感じ…)
『夏月さん…は出来ない…のか?
海月は?』
「…………ええ
あの人は作れます
でも…部活が忙しいらしくて…」
(……心が…揺らいだ…?
海月…が?)
『……そうか…
……ん?』
知らぬ間に弁当箱は空になっていた
「…ありがとうございますね、雨月さん」
『いや…礼の言うのはこちらだ』
「じゃあ、お互い様
と言う事にしておきましょう」
『…ああ』
「でも、ありがとうございます」
瑠月はその瞬間、微笑んだ
(………!?)
その時、まるで俺は走馬灯の様に、ふと過去のある光景が目に浮かんだ