159/211
『来る事は無い昨日を想う』3-4
『神白…惟…』
「はい、鈴廻守学園高等部の一年生です」
『…と言う事は後輩ですね
俺は二年です』
…カミシロ…白…
そう…彼女はその名の通り
純白のイメージを抱かされた
透き通るような肌と白髪…
何もかもが…酷似していた
「…あの…もう少し、近付いてはくれませんか?」
『え?』
「私はその…弱視と言いまして、視力が良くありません
貴方の顔を覚える事が出来ません」
誰かと話す時は最低限距離を開ける…俺の癖だった
彼女は瞳を見開いた
先程までの彼女は笑みの表情を作ったまま目を閉じていた
『……いえ』
俺は逆に一歩下がった
「青海様?」
『……俺の……私の事など覚える必要はありません
…おそらく、私はここに来る事はもう無いと思います
学校でも会う機会は無いと思います
……私の事は…今日ここであった事は忘れて下さい』
彼女は見開いていた瞳を閉じた
「…そのように言われたのは初めてで…何と言えばよろしいのか……」
(…だろうな…こんな事言うのは俺ぐらいだろう…)
俺はマフラーを口元まで引き上げた