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『来る事は無い昨日を想う』3-5
俺はすぐにその場所から逃げ出したかった
理由の一つは教会と言う場所があまり、好きではなかった
もう一つは…神白 惟があまりにも似ていたからだ…
あの子に…
そして、その事が俺の精神の…感情の奥底を揺らしていた
『……さようなら…』
「ま、待って下さ…あ…」
-コッ…ドサッ-
神白 惟は小さな段差につまづいた
足元が見えなかったのだろうか
倒れた女の子を放ったままその場から逃げ出せる程、
俺は非情になれなかった
(……くっ…)
『大丈夫…ですか?』
俺は手を差し出した
「は…はい…」
神白 惟はその手を掴み起き上がった
一瞬、顔がとても近い位置に来た
(ッ!!)
「え…みづ……」
-バッ-
彼女が起き上がると、俺は距離を取った
しかし、彼女は俺の顔を認識していた
「………」
『………』
「あ…あの…」
『…なん…ですか?』
「………わかりました
せめて、これを受け取って下さい」
『これは…?』