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『来る事は無い昨日を想う』3-2
-同日-某所、PM5:12
陽が落ちる寸前と言ったところか
俺は昨日、同様
街を散策していた
昨日の散策ではあのベンチを見付けた
街を把握したいと言う思いもあったが
ベンチを見付けたように自分が気にいった場所を見付けるのを期待していた
俺はあの瑠月と会ったベンチが気にいっていた
別に何がある訳ではない
ただ、あの場所が気にいったのだ
枯れた桜の木の下のベンチが
なんとなく、落ち着くのだった
『…ん?』
俺の蒼眼がある場所を捉えた
(…空間が歪んでる
………
………………)
陽は落ちていく
僅かな光が遮られ
やがて、闇へと染まろうとしていた
俺は左手を右の腰に右手を左の腰のほうに伸ばす
完全に闇に包まれようとする刹那
二つの軌跡が歪みに向けて交差した
何かの雄叫び……否、悲鳴のような声が響く
"ソレ"は命を最期の最期まで燃やし尽くすように
その歪みはまるで星が最期を迎えるために膨れ上がり
そして、崩れるように潰れるように割れるように
破裂した
俺が振り向くと歪みは消えていた