『来る事は無い昨日を想う』1-2
だから、俺は先程
彼女と彼女の妹で
俺と同い年で
明日から同じ学校に通う事になる
ミヅキに
駅まで迎えに来てもらっていた
そして、俺は夏月に車で今日から俺の住む場所になる
学生寮まで送って貰う事になっていた
車の中は沈黙と言う静寂に満たされていた
「えっと…久しぶりだね
ウヅキ君…」
その静寂を破って
ミヅキが俺に話しかけて来た
俺は彼女の事をあまり知らなかった
十年前に一度遊んだ事があるだけで
その時の記憶以外
彼女を知る要素はあまりない
夏月とは何度か、顔を合わせた事はあるものの
ミヅキ自体は十年ぶり
夏月の妹なのだから、藍坂 ミヅキだと言う事は解るが
ミヅキとどう書くのかさえわからなかった
『ああ……久し…ぶり…
……同い年なんだし、俺の事は雨月でいいよ』
「あ、うん
わかった……ボクの事も好きに呼んでくれていいよ
…雨月」
『ああ…わかった
ミヅキ』
「………」
『?
どうした?』
「いや…うん
お姉ちゃん以外でそう呼ばれるのは…余りないから…なんだか、新鮮で」
『そうなのか…?』
「うん…みんな、ボクの事を藍ちゃんとか言うんだよ」
『ふぅん…』
「…妹はそんな事無いんだけどね」
(……妹がいたのか…)