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国からの褒美

 バリア……覆気(マスキング)の事だろうか。よく分からないがそれがシシリーを守っているなら良かった。前みたいに寝続けてると心配になるし。


「そっか……そうなると店を開くなら森の中とかにしようかなぁ。シシリーもその方が暮らしやすいかもしれないし」

「御店、ですか?」


「そうなんです。ミレーユさんからシルバーに上がったら土地を買ったり営業許可証を貰えたりするからって勧められたんです。丁度鍛冶も習ってるし、シシリーも裁縫がとても得意なので、いつか商売でもしてみようかと」

「そうなの! でも良いの? 森の近くなんて……」


「え、良くない? それこそ食べ物とか出したりしたら人気出るかもしれないじゃん。森の中のカフェとかさ」

「う、うん!」


 とても嬉しそうに力強く頷くシシリー。イーシャさんは真顔のまま俺の顔をずっと見ながらシシリーが頷いたのと同時に頷いた。読めない……何かあるのだろうか。俺が困惑している間、二人は例えばお店で売るとしたら何を売るかと言う話で盛り上がり始める。


そして時に立ち止まり、今こんなのが流行ってるからどうでしょうとかこんな小物が良いと思わない? とか言いながら、何処から持ってきたのかチョークを取り出し地面に描いては消してしながら移動した。


「随分と遅かったが何かあったのか?」

「あ、いえ……そ、そうだ! 国から生態学者の方がお見えになって」


「そうか……」


 町長の家に着いたのはお昼近くになってしまい、それについて不審に思われたのは当然だろう。ミリアムさんが来てたのは本当だし、その所為で遅れたとは一言も言って無いのでセーフだろう……とは思いながらもちょっと罪悪感を覚える。


「ギルドは報酬が百五十だそうですわ、お父様」

「ま、まぁギルドであればそのくらいだろう。税金や保険料も取った上でだからな」


 町長はイーシャさんの言葉に少し困惑しながら空笑いをしつつこちらを見る。だが見られても困るので苦笑いをして返すしかない。咳払いを一つして町長から以前のお詫びと国からの褒美についての話が始まった。


従来の通り国民の不安を煽らぬ様に詳細な事件の話は伝えず、功績のみを公表しその功に対して国から男爵の称号が与えられるという。個人的には全くピンとこないのでシシリーと見合いながら首を傾げる。


「男爵と言うのは国に認められた貴族の称号です。貴族で一番下の位ですが、一般人とは違います」

「私の場合は侯爵に当たる。上に行けば良く程責任と品格を求められるが、男爵はまだマシなほうだ」


 この国は基本山で囲まれていて他国の領土を奪う事も無いので、領土を与えられたりはほぼしない。王族ですらも持っていないし、昔から王族と言えど功績の無いものは名誉だけしかなく仕事をしていたという。


なので王族は基本何らかの技能や技術を保持しており、僅かばかりの給金以外は自力で稼いでいる。ヨシズミ王自身が華美な装飾や芸術、晩餐会を嫌っているので貴族付き合いも一般国民の御近所付き合い程度なので出費も少なく双方助かっているらしい。


ただ偶に貴族であることに異常なプライドを持って華美な行動を取っている者も居るという。


「まぁジンも城へ入りたい時に便利な称号程度に考えておけば良い。戦争になどなれば駆り出されるのはギルドの規定と同じだし、納税も変わりない。給金が僅かばかり支払われるが、ほぼ名誉職だ」


 個人的には僅かでも支払われるなら生活の足しになるから助かるので有難い。特に罠らしきものが無いなら有難く頂いておこうと思う、拒否権も無いだろうけど。


「お父様、ジン様は何れ御商売をやりたいそうです」

「そうなのか? それなら役に立つな。基本貴族に対しては営業許可証等は無いし、土地所有に関しても優先権が与えられている。とは言え大々的な物は許可が下りない」


「他の貴族の方は土地を所有して居られるのですか?」

「商売をやるのであれば持っているが、ただ持つだけでは維持費や税金を取られるだけなので持っていない。この国は自然を大事にしているし育ててもいる。いざという時の畜産や農業も盛んだが、それらは国営だ。王族も同じで皆基本の仕事が忙しくて他をやる余裕が無いというのが現状だ」


 鍛冶や鉱石、ヨシズミシープによる衣料品や毛などを輸出し他国のゴールドを稼いでいるので、それらに従事したり新しい鉱脈や製作に忙しいらしい。


「ただ覚えておいて欲しいのだが、例え王族貴族と言えど功績が長らくなかったり国に対して不義があれば問答無用で降格や剥奪があるので頑張って欲しい。ジンの働きでは謀反でも起こさない限り剥奪は無いが」

「降格や剥奪された王族貴族が居るのですか?」


 そう尋ねると町長は難しい顔をした後小さく頷いた。例の暗闇の夜明け事件もそう言った人間が関わっていて捜査が難航しているという。


「……お前も男爵になったのだから、ある程度の機密を話すのは許されているので話すが、何者かが皆で捕えたあの暗闇の夜明け一派の者を逃がしたとさっき報告があった」

「え!?」


 国の上の方が噛んでいるかもしれないとは聞いていたが、まさか逃がすまでする人物がいるなんて……かなり根が深い問題なのかもしれない。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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