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巨大蜘蛛調査へ!

「何だ随分と買い込んでるな」

「馬車は出せないって馭者さんに言われちゃったんで」


「まぁそりゃそうだろうな。今あの辺りには誰も近付きたくは無いだろう。お前さんも物好きな男だなぁ……まーた安い値段で依頼を受けたんじゃないのか?」


 そう言われて苦笑いする他無い。会社の一員として交渉するのは商品の価値も分かるし会社の希望額もあるのでやり易いが、こと自分自身がそれに当たるとなると難しい。他の人はギルドの依頼に対して交渉したりするのだろうか。


「またお父さんはジンを虐めて!」

「虐めてとは人聞きが悪い。俺はコイツの甘さを指摘してやってるだけだがね」


 近くで接客していたマリノさんが接客を終えるなり飛んで来ると、親父さんは鼻で笑って去って行く。まぁ確かに甘いには違いないので言い返しようもない。しかしそうも言ってられないので、今後調べて交渉するのであればしていかないとなと思った。


「ごめんねジン」

「いや、親父さんの言う通りかもしれない。ギルドも完璧では無いだろうし、こちらの得ている情報を伝えてみたら良い結果を得られる可能性もあるしね」


 そう言うとマリノさんは嬉しそうな顔をして頷いた。行って来ますと挨拶してから防具屋を出て、先ずは元村へ向けて進んで行く。この方面には村があったら行き来している人や商人もいたが、今はもう殆どいない。


墓地及び公園化計画の許可が下りただけで詳細はまだ決まってはいないので、少数の兵士が交代で警備する為に居るだけだ。


「人が居なくなったから動物たちが様子を窺って居るみたい。縄張りが広げられれば仲間も増えるから当然ね」

「モンスターは?」


 森の中を歩きながらシシリーに問うと、腰掛けた状態から立ち上がり前を見る。そして俺を見て頷いた。日本人的な考えかもしれないが、不幸な死者が大勢出てゾンビにまでなった。恨みや悲しみなどの怨念や瘴気が強力なモンスターを引き寄せたとしても不思議ではない気がする。


「ジンも何か感じてるの?」

「いや、村で不幸な出来事があったばかりだしね。森が快適になるには長い時間が掛かるかもなって思っているだけだよ」


 そうは言った瞬間にハッとなり頭を振る。そう言う風に考えているとそれが実現してしまうかもしれない。最低限の注意はする必要があるだろうけど、それ以上は逆に呼び寄せてしまいかねないのでよそう。


「個人的にはシシリーの製作物の足しになる様な敵が出てくるのを祈るばかりって感じかな」


 おどける様に言って首を竦めシシリーを見ると、頷いた後微笑んでくれた。良くない考えは良くない物を呼び寄せる。今は良い出来事が起こるとだけ考えていよう、そう考えながら森を進んでいると道を塞ぐようにイヌ科の動物が数匹躍り出て来た。


狼よりも毛が荒く逆立っているような生き物は、身を低くし牙を剥き出し唸り声を上げている。どうやらこの辺りはいつの間にか彼らの縄張りになったらしい。出来れば黙って通して欲しいがそのつもりは無い様だ。


「態々戦いたいとは思わないが、向かってくる火の粉は払わないと」

「仕方ないね」


 シシリーが鎧から飛び出て浮遊したのを見て、腰に付けた不死鳥騎士団の盾を手に取り前に持って来て身構える。それを見て狼モドキが一斉に襲い掛かって来た。集団で戦う彼らに対して突っ立って一匹ずつ対処しようとするとあっという間に喰いつかれて死んでしまう。


「よっ!」


 ギリギリまで引き付けてから横へ飛びすかさず前へ飛ぶ。そして振り返り追って来たのを殴り飛ばす。同時に襲い掛かってくるが、避けた分だけ最初に飛びつこうとした者が置いて行かれて数が減ったので何とか対処出来た。


取り合えず死んだ者は居なかったようでそのままよろよろと森の奥へ去って行く。思った以上に野生動物たちが無くなった村に住んでいた人たちの生活圏を支配しているようだ。


こうなってくるとモンスターも増えて来るに違いない。元村の辺りを警備している兵士は大丈夫だろうか。一抹の不安を抱えながら元村のあった位置へと急ぐ。


「こ、こんにちは」


 元村があった位置は今は更地になっていて、小さな小屋が柵に囲まれてがポツンと立っているだけだった。昼間ですらちょっと怖いのに、こんなところに夜居たら怖くて仕方ないだろうなと思いつつ扉をノックする。


「はーい」


 声が聞こえて来てホッと胸を撫で下ろしていると扉が開き兵士が一人出て来た。相手はこちらを見て目を見開くと敬礼する。中にも三人兵士が居て、ソファで寛いでいたが急いで立ち上がり敬礼してくれた。


こちらの目的を伝えこの先に行く前に挨拶に寄っただけだというと、彼らは現在把握している情報を丁寧に教えてくれる。やはり野生動物の縄張り争いが急に激化し、そこにこれまで居なかった巨大蜘蛛(ハイアントスパイダー)が参戦したので調査依頼が出たのでは無いかと言う。


兵士たちは他の野生動物の調査も冒険者ギルドに依頼を出した方が良いと提案しているようだ。夜ここで警備していると森が騒がしくて身の危険を感じていると話す。今はまだ小屋を襲撃してこないだけで、そう遠くない内に襲い掛かってくるんじゃないかと怯えている。





読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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