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装備新調と初めてのシルバー級依頼

「え、良いんですか!?」

「勿論だよ。依頼でインゴット使わせて貰えた御蔭で何とかなったし、製作も手伝ってもらったからね。本来なら鉄の鎧をと言いたいところだけど甲斐性の無い私を許しておくれ……」


 さめざめと泣く真似をするアイラさん。こちらとしては真似と分かっていてもいつもとまるで違うアイラさんに戸惑ってしまう。その俺の様子が面白かったのかアイラさんは豪快に笑い始め、俺も釣られて笑う。一頻り笑い終えると俺は改めてお礼を述べた。


「本当に助かりますありがとうございます!」

「青銅は銅よりは良いけど鉄より強度は劣るから脆い。それでも雨の中でも使えるし第一加工しやすい。兜をそのまま後ろに倒しても落ちないように加工して見た」


 早速着てみると皮のみと違って重く感じるが、少しだけ斬られても突かれても青銅の部分は大丈夫だという安心感があった。篭手は奥様に頂いた物をそのまま流用し、関節部分も動きやすいように加工が施されていてこれなら武術のままでも何とかなりそうだ。


シシリーは着替える際に俺の胸元からでると頭の上に座り、着替え終えると少し離れた場所から眺めている。アイラさんに近付かない様にしている気がするが、苦手なのだろうか。


「良い感じだね。色合いもより年月が経った青銅に近い色してみたから目立つかも」

「本来はこの色じゃないんですね」


「銅より薄い色だね。擦ったりして剥げてくると元の色が出るよ」


 そう言えば、歴史の教科書で青銅器時代の物として発掘されたものを見た覚えがある。それは緑とも青ともつかない色をしていた気がするので、元々こんな感じの色かと思ってしまった。


「メンテナンスは無料って訳にはいかないけどなるべく安くするからこれからも御贔屓に」

「はい! 宜しくお願いします!」


 仕事が無い時やアイラさんに注文が大量に入った時などにはまた手伝うし、顔を出すと言ってその場を後にした。


「これで強い奴にも遅れは取らないわね」

「どうかな防御は上がったのは間違いないけどシンラたちには難しいかも……。そう言えばアイラさんがシシリー入る場所を作ってくれたけど居心地はどう?」


「良い感じよ! ジンと話す時はこの鎧に腰かければ良いし、それ以外は鎧にしがみ付いて足を置く場所もある……気が利いてるわ」


 丁度右鎖骨の辺りに丁度シシリーが入れるよう外へ出っ張っている空間があり、今はそこに入って腰賭けこちらを見ている。快適そうなシシリーを見てアイラさんの心遣いに感謝しかない。


「アイラさん苦手?」

「うーんわかんない……私元々森に一人でいたから。ジンは普通の人と全然違うから平気」


「人に酔ったりとかしない?」

「最近慣れた。積極的に関わろうとは思わないけど、色々やり始めたらそうも言ってられないだろうし」


「ギルドで仕事してシシリーのやりたいことの協力をさせてもらうよ」

「有難う! 出来れば昆虫系を倒したり捕獲したりする依頼とか皮革取れるような依頼が良いかな」


「小物を作ったりしたい感じ?」


 そう訪ねるとシシリーは恥ずかしそうに頷いた。何か作りたい物があるなら出来れば叶えてやりたいなと思うので、早速それ系の仕事が無いか探そうとギルドへ向かう。


ウェスタンドアを開けてギルドに入ると、視線が集中してしまった。やはり新しい防具は注目されるものなんだなと思ってちょっと嬉しくなる。


「あ! お前新しい防具貰ったのか!?」

「あれコウガ、まだ仕事探してたのか?」


 ラウンジを見るとコウガがさっきと同じ位置に座っていてこちらを見て驚いた顔をしていた。丁度一つ依頼を終えて一息吐こうとお茶をしていたらしい。アイラさんの家に行って来てインゴットを融通したり製作を手伝ったお礼の鎧だというと、コウガは凄い速さでギルドを飛び出して行く。


「忙しない人ね、相変わらず」


 コウガを見送った後、カウンターでミレーユさんに声を掛けシルバー級の依頼書を借りてラウンジで依頼を探す。その中に丁度元村があった場所の北の森で、巨大蜘蛛(ハイアントスパイダー)が大量発生しているので状況確認をして来てほしいという物があった。


勿論ただ見て来るだけのお使いでは無く、なるべく詳細な報告が必要だという。シシリーが首を傾げたので何か知っているのかと尋ねると、本来巨大蜘蛛(ハイアントスパイダー)は集団でこんなに人の近くで巣を作ったりせず、もっと離れた場所に縄張りを持つという。


攻撃的になるのは同じ巨大系の昆虫が主だとも教えてくれた。となるとその大量発生に他の昆虫が関わっている可能性があるのかな。


「何にしても一回行って見ようか。報酬は……五十スタートで内容により加算だって」

「私の針箱より安いわね」


 シシリーは不満そうだったがあれはかなり高級で良い物なので、あれより高い金額の依頼は内容が怖くなりそうで最初は受けたくない。カウンターへ移動しミレーユさんに依頼を受ける旨を伝えると、控えと場所の地図そしてスケッチ用の画板やペンと墨、紙を貰い準備に取り掛かる。


全容解明とかでは無いので、依頼を受けてから一日以内の報告が条件だと言う。適当な報告は自分の評価を下げて受けられる依頼を減らしてしまうので、出来るだけ頑張って欲しいとも言われたので気合を入れ直す。


久々の依頼だしそれなりの結果を求められるので緊張してきてしまった。先ず宿で昼食を用意して貰い、防具屋でリュックを買ってその足で雑貨屋さんに向かい薬草等を買い込む。早速町を出て向かおうと馬車屋さんに行くも、馭者さんたちから村が無くなってしまった上に安全とは言い難いので、今はあっちの方面には出していないと言われてしまう。


そうなると現地まで徒歩で行かなければならず、帰るのが夜になる場合を考慮して松明と火打ち石を防具屋に再度出向いて買い足した。


読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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