表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第二章 副業を探して

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/616

シルバー級冒険者一日目

「ジンは今日からシルバー級冒険者として依頼を受ける訳だけど、ブロンズ級の時と違って難易度が高いだけでなく細かい達成条件を求められる場合があるわ。そしてこの階級から上に上がるのがとても困難になる。実際引退までシルバー級のままだった冒険者が殆どで、難しくて別の職業に就いた人も居るの」

「そんなに厳しいのかシルバーは。俺はブロンズだが目的以外の指定は何も無かったが」


「この上がもうゴールド、事実上最高級だから仕方ないわ。ゴールドになればどの国に行っても歓迎されるし好待遇で迎えられる。今日現在で冒険者の約一割しかいないのがそれを物語ってるわ」


 その後ミレーユさんはシルバーの特典についても話してくれた。各国でその特典や待遇は違うようで、それで移動している人も居るという。ヨシズミ国では冒険者の副業を積極的に応援している。その関係でシルバーになって功績を挙げていくと、土地の購入権と営業許可証等が得られるという。


「何だタダ飯が食えるとかいうものではないのか」

「宿での食事の安さを考えたらもうタダみたいなもんだろう贅沢な」


「基本報酬も当然上がるから、町や国としては冒険者にどんどんお金を使ってもらって経済を回してもらいたいし、与えられる側から与える側になって欲しいのよ国としては」


 なるほど、土地を買い維持をすると税金も発生する。更に商売をすれば雇用も生まれるし利益から税金を払う。何より冒険者をリタイヤしても自分で受け皿を用意出来るので推奨しているのも頷ける話だ。


「ジンが御店を持ちたいと思ったら是非相談して頂戴ね!」


 推奨しているのは分かったが、どうやらミレーユさんは俺にお店を持って欲しいらしい。声の強さがさっきまでとは全然違うので驚いた。コウガもそれに驚いてこちらを見る。二人で目を合わせた後ミレーユさんを見ると笑顔のまま首を傾げた。取り合えず今は触れないでおこうと思い、御店を持とうと思ったら相談しますねと言うと、ミレーユさんは凄い速さで移動し大量の紙を持って来て渡され事務所を追い出された。


「何だそれは」


 少しの間二人で呆然としていると、コウガが興味なさげに聞いて来る。問いに答えようとその紙を見ると、現在空いてる区画や土地の取得費用に建築費用それと営業許可証取得研修について等々。若干引いてる俺が中々答えないのでコウガが覗き込んだが一瞬停止し、そのまま何事も無かったかのようにラウンジに行って腰を下ろしてしまった。


マジでガチじゃんと思いながらこのままでは仕事も出来ないので一旦宿の部屋に戻る。


「お帰りなさい」

「マリアナさんただいまー」


 マリアナさんからしたら出て行ってそう時間も経たず戻って来たので驚いただろうが、いつものように優しい笑顔で迎えてくれた。俺はそのまま部屋へ向かい何とかドアを開けて中に入ると


「お帰りー遅いじゃない!」

「ただいま……取り合えず退いてくれ」


 行く時に居なかった、と言うか久し振りに居た人物に文句を言われ顔に張り付かれる。退くよう言うと直ぐに離れてくれてホッとする。久し振りに現れたシシリーを見ると、来ている洋服が変わっているのに気付く。訊ねると新しく作ってみたがどうかと聞かれたのでとても良いと答えた。


前までのドレスっぽいのと違い、今回はピンク無地の膝くらいまでのスカートに胸と右腕にポケットのあるシャツ、皮の軽鎧を付けていて腰には金の針を装備している。


「何だか冒険者って感じだね」

「でしょでしょ!? 家に帰ってからイメージが湧いちゃってさ! ジン忙しそうだったからその間に材料集めたりして作ってみたの!」


「へー! シシリーはやっぱり凄いな……ただ自作出来るだけじゃなくて売り物レベルに造れるんだから羨ましい」

「私はほら、暇だったからやってたら出来るようになっただけだし……ジンもそのうち鍛冶出来るようになるんじゃない?」


「どうかなぁ……あんま手先が器用じゃないんだよね」


 アイラさんにも叩くコツは掴めて来てるけど、細工が良くないと言われている。個人的には何とか頑張ってるんだが、自分で見てもコウガの方が良い感じなのが分かる残念具合。しっかりやってるつもりなんだけど上手く行かない。その点コウガは筋が良いと褒められていて羨ましい限りだ。


「まぁ向き不向きはあるわよ! ジンにはジンにしか出来ない仕事がきっとあるから元気出して!」

「そうだな、頑張るよ」


「ところでそれは?」


 手に持っている紙の束を指さして問われたので、さっきあった話を紙を備え付けの机に置きながらシシリーに話す。シシリーが紙を見たいと言って胸元に収まったので、一枚ずつ紙を上から順番にどかしていく。


全て見終えるとシシリーは顎に手を当てて唸る。一応そう言う制度があるだけで俺が利用するにはまだ全く見通しが立たないどころか、先立つものも無いと言うと頷くだけで何も言わない。


「ジン、仕事しましょう仕事」

「そうだな、何をするにも先ずは仕事だな」


 何かシシリーの中で纏まったようで、大きく頷いてからこちらを向いて力強い顔をしながらそう言った。鍛冶手伝いでは中々高額は望めないが、シルバー級に上がったのだから高額な依頼もあるだろう。


シシリーを胸元に入れたまま宿を出て一旦鍛冶屋に向かい、アイラさんに冒険者家業に戻るというと


「じゃあ、あれをお礼にプレゼントするよ」


 入口から左側の隅を指さす。ごちゃっとしていたがその中でも一際目立つ、つい最近作ったと思しき暗い緑色をした防具を指さした。兜と銅に腰当てそして脛当てもある……まさか防具一式くれるのか!?


読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ