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鉱山からの帰還

「おいおい待ってくれよ冷たいな……馬車に乗せる前に確認させてくれ」

「何だよアイザック……あの鉱山に妙な物なんて無いだろうに。それとも何かい? あそこには持ち出されたら困る物でもあるのかい?」


「一応ほら……その、決まりだからさ」

「ったく面倒な奴だ」


 アイラさんは徹夜に近い状態で鉱石掘りだけでなく戦闘もあった為、元気なら追求しただろうけど疲れ切っているので面倒臭そうに了承した。俺は気付いたので例の物体を探す為にリュックから石を荷台に出していると


「はいごめんよっと」


 気配を殺して背後に回り込み、素早く俺のリュックに手を突っ込んだ。まるで見えているかのように例の物体をあっさり取り出しポケットに入れた。入れた物が何なのか余計気になったので問おうとするも、アイラさんが割って入り抗議する。


「アンタ私たちの物をくすねたりして無いだろうね……! あんな面倒な目に遭っただけでも割りが悪いのにその上!」

「そんな訳ないだろう!? 英雄であるジン殿から上前を撥ねようなんてする訳御座いませんわよ!」


「変な口調になってるけど?」

「分かってますよ! ちゃんと上乗せします!」

 

 例の物を入れたポケットとは別の所から一つ鉱石を取り出し荷台に乗せる。それは白い縞模様が入った緑色の不思議な石だった。


「あら、随分と気前が良いね」

「ジン殿にだぞ? アイラにじゃ無いからな?」


 改めて俺に対して渡して来たのでその石を持つと、何か不思議な感じがした。重そうに見えるのに重量が無いんじゃないかってくらい軽い。


「ジン、ラッキーだねそんなのを貰えるなんて」

「これは?」


「この辺りで取れるかなり珍しい石で”風来石”って呼ばれてるもんだよ。貴重だから売るより何かに加工した方が良い。魔法道具にもなる」

「え!? そんな凄いのを良いんですか!?」


「良いよ良いよその代わり頼むね」


 何だか賄賂を貰ったような気分になってバツが悪いなと思っていると


「迷惑料ってことで。鉱夫たちに被害も出ずに済ませられて助かったのは本当だからさ。アレがここにあると皆危なかったんだ」


 そう耳元で囁いて離れる。本当に迷惑を掛けられたしそのお詫びってことらしいので有難く貰う。荷台に鉱石を積んで帰ろうとした時、鉱山入り口から馬車が数台現れた。


恐らく町か国の兵士だろう。アイザックさんは鉱夫たちが出て来て報告を聞き、直ぐ使いに走らせたに違いない。見るとアイザックさんは頭の上に手を持って来て丸のポーズを取ったので、後は任せて帰ろうとなる。


だがその馬車から兵士と共に降りて来た中に、今会いたくない人物が居てゲンナリする。あちらは俺が居るのが分かっているのか、別の方向に居る兵士に指示を出しながら向かって来た。


「あ、あのー……今一戦終えて来たばかりでして」

「その様ですね」


「じゃあ鍛錬は」


 笑顔で何も言わない。やるのか……やるんかい睡眠不足なのに。


「すまん二人とも。俺はこれから残業らしい」


 終わったら駆けつけるからと告げてアイラさんとコウガに製鉄をお願いし、俺はまた鉱山に戻る。司祭と兵士に交じって鉱山内に戻り死霊使い(ネクロマンサー)の痕跡を探す作業を手伝わされた。


結局何も無く、司祭が教会から持ってきた聖水を巻きその後盛り塩をして祈りを捧げ一両日鉱山は閉鎖となった。


「さぁ今日の鍛錬を始めましょうか」


 鉱夫たちが暮らす麓の広場で鍛錬は始まる。こういうのはなるべく人目に付かないところでやるのでは? と問うと盗まれて困るような段階にはまだ来ていないと一蹴されてしまった。


「まぁ事情があるとは言え駄目ですね不合格です」

「あざっした……」


 笑顔でそう言い残し司祭は町へ戻って行った。俺は吹き飛ばされた壁の補修をしてから町へと戻る。製鉄する場所とか聞くのを忘れて居たので一旦防具屋に向かうと、丁度マリノさんが居て事情を話すと案内してくれた。


国営牧場近くにある巨大な建物の傍には川が流れていて水車も回っていた。この先に国王たちの住む町があるとは思えない程牧歌的な雰囲気でちょっと癒される……と言うか今この傍に腰かけて足だけ突っ込んだら間違いなく気持ち良くて寝れる自信がある。


「あらマリノ! ジンを連れて来てくれたの?」


 中へ入ると色んな種族の人たちが頭にタオルを巻いて汗を搔きながら動き回っていた。前方にある三つの大きな窯の前に待機していた人たちは、フルフェイスの兜を被り分厚い手袋をしている。


暫くしてから窯の小さな扉を一人が開けると、その先にある幅の狭い滑り台の様な場所にどろっとした赤い溶岩みたいな物が流れて来る。別の人物がその一番先で待機し、もう一人が大きな製氷皿のようなものに車輪が付いた物を押して来る。どろっとした赤いものが先まで着て落ちそうになると、製氷皿の升目に上手くコントロールして入れていく。


「あれは?」

「一旦鉄インゴットにしてから其々に渡すんだよ。個人所有で大きな炉が持てればそのまま打ち始めるんだけど、金も場所も無い鍛冶屋はインゴットを買って自分のところでもう一度溶かしてから打つんだ」


 製鉄料は掛かってしまうものの、俺たちは自分で取りに行っているので買うより大分安く済ませられるのが有難い。




読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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