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鉱山へ着いたけど不穏

「おう、夜食とか貰っておいたぞ」

「助かる! ジョルジさんもすいませんお手数をおかけして」


「いえいえとんでも御座いません。ジンさんたちは正式なお客様ですし、ギルドのみならず町にも貢献して下さっています。声を掛けるくらいでそう言われてしまいますとこちらが恐縮してしまいます」


 カウンターまで行くとコウガが既に待機しておりバスケットを持って立っていて、ジョルジさんにお礼を言い鉱山に行く旨を伝え宿を出た。防具屋の前まで行くと御店は閉まっていたが一台の馬車がそこに停まっている。


「やぁ二人とも、こんばんは」


 馬車の荷台に座っていたアイラさんがこちらを向いて手を上げてくれたので駆け寄り遅れて申し訳ないとお詫びすると、丁度お店で納品の相談や売れ行き等の話をしていたので待ってはいないと言ってくれた。


「おうお前ら今来たのか」


 お店の脇道から親父さんが出て来てこちらにくると、御上さんからの夜食の差し入れを渡してくれた。


「ありがとうございます!」

「お前らが頑張って鉱石取って来てくれたらウチの売り上げにも直結するからな。お前の言う先行投資ってやつよ!」


 防具屋で買った荷物を載せてから馬車をアイラさんが運転し一路鉱山を目指す。夜なので松明を馬車の後ろの隅に取り付けて走る。町を出て森に入ると暗さが一層増す。木々の隙間から漏れる灯りは森を包む闇に吸い込まれていく。


「二人とも、野生動物とモンスターに注意しておいて」

「任せてくれ」


 コウガは腰に下げていた革袋から小さなナイフを数本取り出した。一瞬苦無かと思ったが流石に違ったので少し残念だ。


「何だその顔は」

「いや何、ちょっと知ってる武器に似てたから」


「どんなやつだ?」


 こういう場合向こうの知識を伝えても良いのかとても迷う。だが苦無は別に支障が無いだろうと思っていつも所持しているメモ帳を取り出し筆で苦無を書くと、コウガは顎に手を当ててジッと見つめ


「これ良いな。この絵、くれよ」


 と言って来たのでちぎって渡した。アイラさんも気になったようでコウガがその紙を見せると、これくらいの物なら自分で叩いてみれば良いのにと言われる。


「そんな気軽に打てるものなのか?」

「鍛冶見習いがやるような物だから初心者には丁度良いと思うよ? 材料としたら銅とか青銅でやった方が経済的だと思うけどね」


「今から行くところでも取れるか?」

「銅と錫石は取り易いから心配無いよ」


「製鉄ってアイラさんの家でするんですか?」

「残念ながらまだそこまで稼げてなくてね。ただこの国は良い。私みたいなのでも国営や町営の設備を使わせてもらえるからこそ鍛冶屋が出来るし、そうなれば腕で勝負になるからやりがいがあるしね」


「ヨシズミ国は他国との戦争を好まないし王族同士の争いも殆どない。内紛も無い平和で安定した状態が続いている上に王様がしっかり国民に税を還元している。故に国民の帰属意識がとても高いから、同じようであれば犯罪者でも無い限り出自は関係なく同じように扱ってくれる。他所の国よりはかなりマシだろう」


 コウガの言葉でアイラさんの種族の話を思い出し頷く。俺が記憶喪失でもこうして生きていられるのは皆が受け入れてくれる御蔭だ。俺自身もギルドを通して国に税金を払い貢献している。


税金は町営国営の施設にも充てられていて、ただでとはいかないまでも比較的安い料金で借りられると言う。


「まぁ出来ればいつか自分の工房を持ちたいけどまだ先だね。二人も私の商品をバンバン買ってくれると助かるよ」

「景気良く変えられるよう稼いで行きたいものだな」


「そうなりたいねお互いに。そろそろ鉱山に着くけど引き続き周囲の警戒をお願いね」


 アイラさんに言われコウガと共に左右を警戒する。森を抜け山の麓に辿り着くと大きな柵があり入口と思われる場所に兵士が立っていた。馬車を止め採掘許可書を提示すると通して貰えて中に入ると、宿の他に食事処や雑貨屋に飲み屋があり町のようになっている。


夜が更けても賑やかで外から入って来た俺たちを見つけて追いかけてくる。アイラさんはそれに構わず進み、鉱山の入口と書かれた看板の下を潜る。


「おうアイラさんか。そっちは?」


 少し進むと鎧は来ているが兵士にしてはラフな人が近付いて来てアイラさんは速度を落として止まる。


「こっちは例のジンとその連れのコウガだ。連絡は来てないの?」

「君がジンか! 連絡は貰ったがまさかその日に来るとはせっかちだなぁ。俺は鉱山管理官のアイザックだ宜しく」


 アイザックさんが指定した位置に馬車を停め、降りた後握手を交わし俺自身の自己紹介も済ませる。近くの小屋へ招かれ、鉱山内の道をその小屋にあった黒板を使って簡単に説明してもらう。


「道はこれから渡す地図にも書いてあるからしっかり見ておいてくれ。そしてこれが重要なんだが、鼻を突く強烈な臭いがしたら声を上げながら急いで退避すること、地図を見て採掘をする場所をしっかり確認し目印を付けてから始めること、落盤が起きた時用に非常食を多めに用意すること。ここはしっかり守ってくれ。まだその年で死にたくないだろう?」

「気を付けよう。中にモンスターは?」


 コウガがそう問うと、アイザックさんは浮かない顔をした。俺たちは顔を見合いながらアイザックさんの説明を待つ。




読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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