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採掘したいおじさんたち

「何おっさんが二人揃って笑ってんだ? 気色悪ぃ」

「気色が悪いとは客に対して凄い言いようだな」


 接客を終えた親父さんは来るなりいつものように口悪く出迎えてくれた。早速採掘許可書をコウガと一緒に見せると苦笑いされる。


「相変わらずお人好しだなぁ。自分の手柄をコイツにも分けてやるなんてよ」

「俺だって協力したぞ?」


「これを貰ったのはこいつであってお前さんじゃないだろう? お前さんが行ってこれ貰えるのか?」

「まぁまぁ、先行投資なんで良いじゃないっすか」


「フン、今に馬鹿を見るぜ」

「もうお父さんたら! 小姑みたいにジンをいびらないでよ!」


「小姑とは何だ小姑とは! お前も笑うな!」

「いやスマン、娘さんの言い方が面白くてつい」


 マリノさんも接客を終えてこっちに合流し一気に賑やかさは加速していく。俺はそれを微笑みながら見守っていると、左側から誰かが近付いて来たので視線を向ける。


「アイラさんこんにちは」

「やぁこんにちはジン。今日は何をしに来たんだい?」


 アイラさんは縄を肩に掛け引っ張りながらこちらに来た。後ろを見ると、足元に大きな袋とその下に木の板があり車輪が付いていてそれを引き摺って来たようだ。


「俺は採掘許可書を貰ったからここで採掘用の装備を揃えようと思って来たんです」

「へぇーアンタやっぱり凄いね。採掘許可書を貰うのも面倒だけど採掘するのも面倒なのに行くなんて。と言うかアンタ経験あるの? 採掘」


「いや全く。それでも頑張ってみようと思って。金欠だけど防具が傷んじゃって変え時だから採掘した鉱石で割り引いて貰おうかと」

「ふーん……良かったら私も一緒に行こうか? 採掘許可書持ってるし」


「いやでも悪いですよ俺の都合で行くのに」

「私も材料が足りなくて丁度いつ行こうか考えてたところなんだ。納品も終わるし」


 親父さんはアイラさんに気付いてこちらに来て声を掛ける。納品される防具をその場で軽くチェックした後、少し待つよう告げて奥へと去って行った。


「アイラも掘りに行くの?」

「うん、材料が足りないし買うより安く上がるからね」


「良かったじゃん、ジン。鉱石の種類とか全然分からないでしょ?」

「それは確かにそうだ」


 知っている気でいたが、鉄鉱石がどんなものかとかさっぱり分からない。マリノさんはお店のカウンターの下から本を取り出して見せてくれた。そこには色々な種類の石がスケッチされていて価格も載っている。


「この赤い色した石を取ってくれば良いのか?」

「基本的にはそうだね。もし運が良ければ金や宝石が掘れるかもしれないけどあまり期待しない様に」


「出発は何時からにする?」

「アイラさんご希望の時間ありますか?」


「そうだね……二人とも厳しくないなら夜から入らない? その方が空いてるし」

「問題無い。俺は元々夜型人間だからな」


「俺も問題無いですよ。じゃあ後で防具屋前に集合で」

「了解。じゃあ装備とか先に選んでここで預かってもらおう」


 こうしてアイラさん監修の元で装備を揃え親父さんとマリノさんに一旦預けて解散。俺たちは夜の出立に合わせて仮眠を取るべく宿に戻り、受付に居たマリアナさんにジョルジさんに外が真っ暗になったら声を掛けて欲しいとお願いし部屋に入る。


「シシリー大丈夫か?」


 今日一日大人しかったシシリーを見ると、何とぐっすり眠っていた。そのままいつものバスケットに入れて俺もベッドに入り休む。


「ジンさん、お時間です」


 あっという間に声が掛かり目を覚ますと扉を開けて外に居たジョルジさんにお礼を言う。脱いだ防具を再度着てからシシリーの籠を見ると、タオルにくるまりながら目をかっぴらいてこちらを見ていた。ホラーか?


「どうしよう、ジン……」

「何?」


「気が付いたら夜だわ……私何してたんだっけ」

「ずっと寝てたよ定位置で」


「なるほど……通りで記憶が無い訳ね」

「どうする? これから鉱石掘りに行くけど」


「勿論行くわよ! 暇だもの」

「妖精って夜でも平気なの?」


「私は問題無いわ。と言うか寝すぎて力が有り余ってて、このまま放置して行かれたら暴れまわる自信があるの」

「嫌な自信を持たないでくれ、連れて行くから。準備は良いか?」


「私は元々荷物は森の中だし必要なものは身に付けたままだから問題無いわよ」

「今日は後二人一緒に行動する。一人は元盗賊でもう一人はダークエルフ」


「へー、ジンて本当に節操が無いと言うか拘らないと言うかなのね」

「どういう意味?」


「だってダークエルフって元々人間を虐めてた種族じゃない? 自分たちの立場が悪くなったからと言って急にすり寄って来た人を信用するなんて凄いなと思ってさ」

「まぁ俺が騙されたり酷い目に遭わされたりして無いしね。俺じゃなくても仲間がそんな目に遭ったら考えるけど、昔の話は俺には分からないからそれでどうこうはないよ」


「ふふ、ジンらしいわね。さぁ行きましょう鉱山へ! 出来ればダイヤの一つも欲しいわ!」

「シシリー用のピッケルは買ってないよ?」


「貢物として要求するわ」

「ははー!」


 籠でニヤッとするシシリーに対して恭しく礼をすると二人同時に笑い出す。シシリーを籠から出して定位置に入れてから部屋を出る。

読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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