採掘にも許可が必要
「金が無いか」
「そうなんですよね……ここのところ出て行くばっかりで」
「まぁお前の働きに対して町も国も金を出さざるを得ないだろう。国からも事件の発表があり町内板にも張り出されてる。その事件を解決した協力者として名前があったお前が困窮しているなんてなれば国の信用にも関わる。何しろ協力しても褒美が出ないなら誰も協力しない」
「沢山貰えると有難いですがそれも先の話です。今どうするか」
「うーん、まぁ身動き取れないってなら自分で材料を取るってのもあるぜ?」
親父さんはそう言って後ろからつるはしを出して来た。何でもこの町から東に行った山に鉱山があり、そこから鉄鉱石が出てくるという。但し鉱山は国の所有物でありそこで働いている人も居るので、基本国の許可が居るようだ。
「横から割って入る感じになるから無理じゃないですかね」
「無理なものか。ただでさえ人手不足で冒険者も偶に駆り出される。お前さんが行って協力した半分を持って行くとしても助かると思うぞ」
「しかしその持ってきた鉱石をそのまま使えるんですか?」
「だから半分渡しても問題無いのさ。加工するまでに手間が掛かるし更にそれを防具にするまでにも手間が掛かる」
「鉱石を取ってくることで割引して貰えるって言う話ですか」
「そうだ」
即答を避け考える。親父さんは悪い人では無いだろうが、以前の雨具の件もあるし割引と言うのはどうしても躊躇してしまう。
「お父さん残念。ジンに警戒されてる」
接客を終えたマリノさんが俺の横に来てニヤニヤしながら親父さんにそう言った。こないだアイラさんの件みたいにまた親子喧嘩の始まるのか!? と身構えてしまう。だが親父さんは渋い顔をして天井を見上げた後、俺の顔を見る。
「コイツは少しお人好しが過ぎると思っていたところだから丁度良い」
「そんなにお人好しでも無いと思うんですが」
「こないだの町を襲撃してきた時もそうだし今回の件もそうだ。損な役回りをしていると自覚した方が良いぞ?」
そうなんだろうか。自分としては出来る範囲の仕事をしたつもりだし、ベアトリスとの約束があったからこそそこまで首を突っ込んだから、損をしてる気はしてない。あまりそこら辺を詳しく言うのも何だから黙っておこう。
「まぁでもジンが居なかったら町も危なかったし国も危なかったから感謝してるわ」
「それがダメなんじゃねぇか。コイツに任せたら良いってなれば上の連中はまた暗闇の夜明けとつるむ事を考え出す。そうなれば今度こそ命が危ないかもしれんぜ? 良いのか? お前は」
親父さんの視線が俺では無くマリノさんに向いているので、同じように視線を向けるとマリノさんと目が合い慌ててそっぽを向かれてしまった。
「ジン殿は居られますか?」
変な空気になっている店内に誰かが入って来てそう声を掛けて来たので振り向くと、緑色のシルクハットに緑を基調としたモーニングコート、黒ウェストコートにスラックスそして白いシャツと貴族っぽく感じる人が居た。貴族と言えばクラウドさんしか知り合いがいないので身構えてしまう。
「何か用か?」
「どうも防具屋の御主人。こちらにジン殿は居られますでしょうか」
「横に居る間抜け面がそうだ」
「間抜け……」
親父さんの言葉に苦笑いしながら俺を見ると、シルクハットを取って胸に当て頭を下げたので俺も頭を下げる。
「お初に御目に掛かります、私ヨシズミ国財務省のシンタ・イシワラと申します。本日はゲマジューニ・ヨシズミ公の使いで参りました。お時間頂けると幸いなのですが」
財務省の人と言うのは初めて見たしこの時代にあるんだなぁと感心しながら頷いていたが、その財務省の人が何で俺に用があるのか全然ピンと来なかったので尋ねてみる。するとそのゲマジューニ・ヨシズミ公とか言う人からの指示で内密なのでここでは言えない、と告げられ場所を移すべく外に出た。
「お時間頂きまして感謝いたします。宜しければ手前の用意した馬車にお乗りください」
防具屋から少し離れた位置に馬車が止められており、それに乗り込む。一応この国に今住んでいる以上拒否して妙な疑いを掛けられると面倒なので大人しく従う。
「まぁそう警戒せずに。あまり大きな声では言えませんが、私とジン殿は仲良く出来ると確信しておりますので悪いようには致しません」
「それは何故です?」
「これから会うお方を知って頂ければ理解出来るかと思います」
笑顔でシンタさんはそう言う。穏やかで人懐っこい感じの人で姿勢正しく佇まいもゆったりしているが隙が無い。クライドさんに似ているなと感じる。そこなのだろうかと思いながら馬車は早い速度で進んで行く。
「到着いたしました」
馬車の運転手である馭者さんが前の窓からそう声を掛けて来たので馬車を下りる。すると目の前にはドでかい城が聳え立っており、あまりの迫力に声を失う。世界の御城紹介番組で見たような城で観光気分になる。
「ジン殿、こちらへ」
シンタさんに促され後に続く。御城の中は赤い絨毯が中央に敷かれ、左右の脇には芸術品が飾られ壁にはランタンが付いてた。更に扉毎に兵士が立っておりこちらへ向きビシッと敬礼する。
流石御城の中だなぁと感心しながら真っ直ぐ奥へと進んで行くと、他よりも横幅の広い扉の部屋の前に着き足を止めた。
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