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善を滅する者

「それはどうだろうねぇ……シンラが生きていればそうかもしれないし、生きて無かったら代わりの誰かに怒られるかもしれないねぇ。だが誰に怒られようと、命を賭けた戦いに関する情報に大きな違いがある以上アタシは戦わない。臆病なんだよねぇこれでもさ。第一大将の目が曇っているとなれば考え時なのかも知らん。まぁ良いさね、また会おうジン殿」


 こちらに背中を見せて森の中へ消えていく。シシリーに追わないのかと尋ねられたが首を横に振る。あの敵は手強い。追って行ったところでここから先はそれこそこちらには正確な地理的な情報はないのだから、こちらが負けるだろう。


シンラ自身は割と見下し隙があるタイプのようだけど、その仲間も同じとはいかないらしい。魔法少女も偽シンラも魔法を使うので強いのだけど、迂闊だったので対処が出来た。だがあの人は違う。同じ調子で挑めば確実に餌食になるのは間違いない。


「どうやら相手は去ったようだな」

「おいおい呑気に出て来るなよ。誰かが狙っているかもしれないだろう?」


「大丈夫だよ。お前があの善を滅する者(デストラクション)を退けたのを見て襲ってくる奴はただのモグリだ」

善を滅する者(デストラクション)?」


 近付いて来た首領に首を傾げながらそう問うと、溜息を吐きながら首を横に振られてしまう。モグリどころか記憶喪失っていうか異世界から来たんだっつーの。そう言いたいところだが抑えつつ、一緒に町に移動しながら善を滅する者(デストラクション)について教えてもらう。


どうやら裏ギルドの高ランク、それも表の高ランク冒険者を何人も倒している者に与えられる称号らしい。首領は紙を一枚懐から取り出し俺に渡して来た。見るとそこにはさっきの女性の上半身と共にウィーゼルと言う名前、そしてこれまで倒した冒険者の名前が並べられており、依頼は裏ギルドまでと記載されていた。


「裏ギルドに頼めば会えるのか」

「会ってどうする? 依頼するのか?」


「そんな訳ないだろう? だが会える手段があるって分かれば何かに使えるかもしれない」

「お前は表の人間だ。裏ギルドに依頼を出来る訳が無い」


「確かにな……その時は頼むよ首領」

「気軽に言ってくれるぜ。その時の料金はお前持ちだぞ!」


 そんな話をしながら町の近くまで警戒しつつ歩いて行くと、入り口近くに兵士の人たちが集まって居たので声を掛け事情を説明し解散して貰う。小隊長だと言う人からサガとカノンは町長の家で預かっていると聞き、町長の家まで移動した。


「お前が盗賊団の首領だな。大分お前たちには苦しめられたぞ?」

「態々お礼を言う為に俺を呼んだのか?」


 町長の部屋に入ると挨拶もそこそこに早速不穏な空気が流れ、緊迫するかと思われたが二人は小さく笑ってから咳を切ったように暫く笑い続けた。一頻り笑い終えてから町長は事情を説明した。


「あの山一帯はお前の縄張りの筈。何か知っていれば協力して欲しい」

「協力してやっても良いが条件がある」


「何だ?」

「俺は暗闇の夜明けに仲間を全員、一人残らず殺された。アイツらを生かしてはおけないし、仇を取るまでは捕まって死ぬ気は無い!」


 首領は周りを威圧するほどの気を放ちそう語気を強める。仲間を全員殺されて自分だけ生き残ったからと言って大人しく暮らしたりは出来ないだろうし、自分も同じ目に遭ったらそうすると思う。


意見したいところだがこれまでの行いなどもあるだろうし、町長の判断を待つ。その上で厳しい処分が下されそうなら助け舟を出そう。


「見逃せと?」

「お前たちにとっても良い話だろう? 暗闇の夜明けに対する駒が一つでも多いに越したことはない。連中を生かしておけないのは同じはずだ」


「協力する内容如何によるな」

「良いだろう。ここに来て落ち着いて頭を整理してみたが、自分を追い回していた理由が分かった気がする。事の発端は金欲しさに俺の部下が俺に内緒でイグニから依頼を受け、アンタのところに走った件だろう。それを嗅ぎ付けた暗闇の夜明けはそいつを殺害し更に俺たちのアジトまで着て部下を一人残らず瀕死に追い込んだ。五人居た中の一人が虫の息の部下たちに手をかざし、その先に現れた紋様から出た煙を浴びせていた」


 コウガ首領曰く、その人物もワインレッドのローブを着ていて顔は見えないが背丈がかなり高かったそうだ。煙を浴びた部下たちは、瀕死だったが藻掻き苦しんで遂には動かなくなったと言う。その後暗闇の夜明けはコウガ首領の部下たちを地面に穴を開けてから埋めたらしい。


首領はその間も五人のうちの一人と戦っていて奮闘したものの敵わず、吹き飛ばされた先で意識を失ったそうだ。何故か見逃され意識を取り戻すと急いで元の場所に戻ったが誰も居らず、途方に暮れていると土の中から肌の色が変色した仲間が這い出て来たのを見たと言う。


「ただ見た限り全部が出た訳じゃなさそうだし、行けばまだ残っている可能性がある。お前たちが問題を解決した後なのにそれでも俺を追いまわすくらいだから、知られたら不味いことなんだろうなと今は思う」

「……暗闇の夜明けたちに復讐を必ずすると言うお前の言を信じて是非案内して貰おうか。おい、誰か宰相閣下のところに伝令に走ってくれ。シゲン・タチが見せたいものがあるとな」



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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