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憤怒するお兄さん

「安心してくれお兄さん! アリーザさんは命の恩人だしこの騒動を解決したいと言う思いは誰より強い。何しろこの騒動を解決しないとお兄さんはベアトリスと会ってくれないんだからな。ベアトリスと約束した必ずお兄さんを連れて来るというのを果たす為にも必ず解決する! だから約束してくれ、お兄さんは自分の身を護り生きてベアトリスと再会すると。ベアトリスにはお兄さんが必要なんだ!」


 力強く拳を握り真っ直ぐお兄さんを見ながらそう訴えると、俯き肩を震わせた。どうやら俺の言葉に胸を打たれたらしい。ここから先は何とか上手くやっていけると良いなと思わずには居られない。ベアトリス、もう直ぐ約束を果たすぞ!


「お兄さんて言うな……!」

「え?」


「お兄さんて言うなぁああああ!」

「ルキナ落ち着いてくれ! 彼はそう言う意味で言ったんじゃないって!」


 あれ可笑しい。何故こんなにキレているのだろうか。涙目で歯を剥き出しながら斬りかかろうとするお兄さんをイグニさんが羽交い絞めにして抑え込んでいる。失った右腕の代わりに付けている肩義手が本物のように動いているので、魔法によるものなのかと尋ねると基本部分は手作りで動きに関して魔法で補っているようだ。


なのであとひと月もすれば交換に竜神教大支部に赴かねばならないらしい。アリーザさんに魔法が掛けられたと言うのもティーオ司祭が竜神教の他の支部に肩義手を頼んだ際に、持って来てくれた師匠から教えて貰ったと言う。

 

「兎に角今は一旦町長と合流しましょう。こちらに本命どころか自警団も居ないとなるとあちらに行った可能性がある。私たちも危険ではありますが森に再度入って右側へ」

「いや、ここは村に私たちだけで先行した方が町長も安全ではないか? 相手は村にこさせたくないのだから、こちらが村へ行けば戻らざるを得なくなるだろう」


 ティーオ司祭とイグニさんの話を聞きながら、鎖骨と鎧の間に戻って来ているシシリーに視線を送ると、首を横に振っているのが見えたので


「このまま突っ込んで敵が誰も居らずアリーザさんも居なければ、相手は町長たちを全力で迎え撃っている可能性が高い。万が一町長が人質に取られてしまうとこちらが不利になります。お兄さんたちの予想通りならシンラが来るでしょうし、その仲間も確実にこの辺りに居る。そうなると兵士を連れた町長御一人では厳しいんじゃないでしょうか」


 しっかりと理由を言った上で先ずは町長と合流する案に賛同してみる。お兄さんは相変わらず暴れていたものの、イグニさんも面倒臭くなったのか羽交い絞めからヘッドロックに変えて失神させ、直ぐに前に回り込んで倒れてくるお兄さんを負ぶった。


「荷物が増えたので町長と合流で」


 イグニさんの同意も得たので皆で一旦来た道を戻る。ティーオ司祭とイグニさんそれにシスターを先行させ敢えて後ろを走った。シシリーもそれに気付いて隙間から出て来て肩に座る。そしてすぐに匂いを嗅ぎ周囲を見る。


「視界不良を狙ってるだけみたいね……有害物質は霧に相変わらず混ざってない。でも村かは分からないけど血の匂いがして来たし何か悍ましい感じがするから気を付けて」


 シシリーはそう耳打ちしてくれる。このまま進んでも町長と合流するのは問題無いようなので何も言わずに先行する三人に続く。暫くすると複数の足音が聞こえて来て其々木の陰に隠れた。


「見て来るね」

「頼む」


 三人の視界に入らないよう注意しながらシシリーは肩から飛び立ち、ティーオ司祭たちがいるのでなるべく分からないよう木の上の方を移動していく。チカチカするものの、霧があるとはいえまだ陽も高く森の中に差し込んでいる光に紛れているようにも見えて安全だと思う。


少ししてから同じルートを戻って来て肩に降り


「町の兵士たちよ」


 そう耳打ちしてくれたので木の陰から出て近付いて行く。ティーオ司祭たちに呼び止められたが右手を上げて先行する意思を示し進む。霧で視界が悪く足音が横から来たので兵士の人たちは足を止めて警戒したが、こちらの姿が見えると直ぐに町長を呼んでくれて無事町長とも再会した。


ティーオ司祭たちも呼んで無事合流出来たので一旦右端に進み、前に紋様があった崖の辺りに着くと警戒しながら足を止めて作戦会議を改めてする。


「私としてはここから遠回りになるが崖を迂回して側面から村に行くのが良いと思うが」

「いや、それは危険ではないでしょうか。連中が全てここに居るとは限りませんが、こちらの動きを見て町を襲撃する可能性もありましょう」


「それに関しては問題無い。クライド殿も居るし対魔法の専門家も居るのでな」


 町長は不敵に微笑んだ。それに対してイグニさんと共に首を傾げるが、ティーオ司祭とシスターも笑みを浮かべて頷いているので問題無いんだろうなと思ってそれ以上追及しなかった。その時ふと奥様とイーシャさんが頭を過ぎったが気のせいだろう。


再考の結果、崖を迂回し村へと進むと決まりそのように動いて行く。何か罠があるかもと警戒していたが何も無く村の入口まで辿り着く。そしてそのまま村の中へと進んで行くとあまりの静けさに皆戸惑う。近くにある家を覗いたが人も居らず気配も無い。かと言って荒らされた様子もない。


村を一周して調べたけど生活感はそのままでついさっきまで居たような感じだ。まさかもうアリーザさんを回収して村を出たのか? 町長にも考えを伝えると急いで皆で探すぞと声を上げて周辺の捜索に乗り出す。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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