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不死鳥騎士団壊滅の真相

それを知らずにイグニさんはノマネクに”年も若く今や剣の上でもお前が勝っている。現場にも出ていて一番知っているお前がなれば良い”と唆され、更に人的資金的援助を受けた。貰ったものを使い団員の支持を広げていき、団長の姿勢やこれまでの不満点を上げて糾弾した結果、フェリックスさんを団長の座から引き摺り下ろす。


新団長となったイグニさんは積極的に動く。少し離れた国で起こっていた紛争に強引に介入し見事叩き潰してみせ初戦を飾った。良いスタートを切ってイグニさんも団員も喜びに沸きつつ、次に備え補給や傷付いた兵士の治療や補充をしていたが、タイミングを見計らったかのように暗闇の夜明けに襲撃されてしまう。


打って出ることも出来ずに本拠地での初籠城であり、これまでと違って初の防衛戦。最初は初戦を飾った勢いそのままに暗闇の騎士団からの攻撃を凌いでいたものの、慣れない戦いで兵士も疲弊し動きが可笑しくなっていく。


またイグニさんは劣勢にとても弱く、押され気味の味方を鼓舞するどころか叱責する状況が続いてしまう。徐々に人心も失い更に剣の腕は立っても指揮能力が前団長に劣るイグニさんは現場を徐々に混乱させ、味方が投降したのを切っ掛けに瓦解し殲滅されてしまった。


「後で知ったがノマネクから送り込まれた人間も暗闇の夜明けに通じていて、籠城が始まった瞬間から私の混乱ぶりやノマネクと通じていた悪行を吹聴して回っていたのだ。そして決定的だったのが、シンラによって掲げられたフェリックス団長の御首級だ。皆の恨みは私に集中し、戦いもままならず遂には投降者が出てあっという間に殲滅されてしまったよ」


 自分がシンラに見逃された理由について、不死鳥騎士団の団員関係者たちの恨みを一身に受けさせる為ではないかと言う。自警団に斬られたのはこの国に来たのを見られノマネクとのやり取りに関する口封じを狙ってのものだろうとも。


「俺とベアトリスは籠城戦の時には父と共に騎士団を離れた。だが訪れた国の飯屋で知らないおっさんが話しかけてきて、不死鳥騎士団が攻撃を受けていて壊滅するかもと言う話を聞き、父は俺たちを知人に預けて戻ったんだ」


 暫くして不死鳥騎士団の壊滅と父の戦死を聞かされた二人は復讐を決意。知人の元で働きながら父に教えられた稽古をしつつ、剣の腕を磨く日々が始まったと言う。その間にノマネクは失脚し処刑されたが、またしても噂で”ノマネクの娘がヨシズミ国に居て何か知っている”と噂で聞き、二人はヨシズミ国に来て潜伏しアリーザさんを探したと言う。


「クライドさんとは俺は何度か父を介して会っていて、この国に来た時にも偶然森で会ってそれから援助を受けていた」

「ベアトリスはクライドさんを知ってるのか?」


「いや俺だけしか会ってないから知らないだろう。ベアトリス目当てに近付いてきたら困るからな」


 どんだけだよと思いながらも、ベアトリスは前に師匠やクライドさんみたいな人に会ったことがあると言ってたがどこでだろうと首を傾げる。


「私は腕を亡くしてからティーオ司祭の手引きでルキナと再会し、処断を求めた。だが命を取らない代わりに父の仇を討つのに協力しろと言ってくれたのだ。だから私も言えた義理では無いが、フェリックスの仇を討つ為に暗闇の夜明けを倒す為潜伏し始めた」

「アリーザさんに暗闇の夜明けが接触して来る機会を待っていた?」


「暗闇の夜明けじゃない、シンラが来るのを待っていた。奴を倒せば終わりだし何より父を殺したのはあの男だからな」

「アリーザさんにシンラは接触して来るのか?」


「して来る。アリーザはノマネクの依頼によってシンラが特別に魔法をその身に施した人間だからだ」


 特別に魔法を施された人間? その言葉に違和感を感じてティーオ司祭とシスターを見るが視線を逸らされてしまう。お兄さんの言い方からして何か補助効果のある魔法を掛けたとかそんな感じじゃないのは分かるし、暗闇の夜明けの首領が危険を冒してでも直接会いに来ると言う程のものがそんな軽い訳が無い。何だか嫌な予感がする。


「さて、ここまで事情を話したのはお前がベアトリスの面倒を見てくれていた大変親切な御仁だからじゃあない。俺たちはそんな暇人じゃない」

「え?」


「ルキナ、話を飛ばし過ぎと言うかぶつけ過ぎだ。申し訳ないジン殿。言い方が最悪なので訂正しながら説明させてもらいたい。ジン殿が現れたあの森ではアリーザが毎朝祈りを捧げていた木があったのだ」


 イグニさんが言うにはその祈りを捧げていた木に落雷があり、消え去った場所に現れたのが俺だと言うのだ。それを聞いて驚きティーオ司祭たちを見るが苦笑いしている。俺に思い当たる節は全く無いのだが、関係あるのかひょっとして。


「正直君が関係あるのかないのか、私たちには分からない。司祭やシスター、それに町長にも伺い更に私たちも監視してたが、君が何かを隠して記憶喪失を装っているような節は見当たらなかった」

「となると俺たちとしてはお前とアリーザを接触させて確かめようと言う結論に至った。どうも暗闇の夜明けはお前が村に近付こうとすると、拒むような動きを見せている。ならば強引に近付こうとすれば必ず奴は現れざるを得ないはずだ」


 お兄さんはそう言って思いつめた表情をしてこちらを見るが、何が何やらさっぱり分からないので答えようもない。困惑していると立派な剣の切っ先をこちらに向けて来た。どうやら本気で斬ろうとしているようだが、何故そんな真似をするのだろう。俺が村に近付こうとしないと思っているのだろうか。


初めてシンラに会った時、足が竦んでお兄さんにそう思われても仕方が無いような感じだったのは認める。だがあれから鍛えて貰ってあの頃よりも成長している筈だし何より恩人であるアリーザさんの身に危機が迫っているのなら、駄目と言われても村に行ってアリーザさんを助け出す。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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