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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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天壌無窮

「何をしているのだ瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)。お前たちより格下の男になぜ負ける?」

「そうですね……簡単に言うなら私たちは成し遂げた者、彼は今成し遂げようとしている者。こちらが名誉のために戦っているのに対し、彼は愛する者の為に戦っている」


 アマノイワトワケさんを見送った後で振り向き、空に浮くアーテを見上げる。彼女は鬱陶しそうな表情を浮かべてこちらを見下ろしながら、ニニギさんに問いかけた。


彼はアーテを見るためこちらに背を向け答えつつ、後ろに組んだ手で手招きする。他の兵を呼んだのかと思いきや動かず、少しするとこちらを強く指さして来た。


身を乗り出していたシシリーも急いで鎧の胸元に隠れ、たぶんこっちに来いっていってるのよと言う。


背を向けて問答をしている最中であれば、近くまで来られても仕方がないというていなのだろうか。


アーテはこちらを見つづけているので、さすがに対応しないと彼が怒られるだろうと思いながらも、なにかあるのかもしれないとゆっくり近付いて行く。


「この期に及んで感傷を語るのか」

「この期に及んでだからこそですよ。私はお婆様の命を受けて人の世に降りたんですが、人にあって神に無いものに惹かれた結果、大地に溶けた」


「何が言いたい?」

「私たちにとっては前哨戦、彼にとっては最後の一戦。覚悟してこの一戦に命を懸けて挑んでいる。お婆様には分からないかもしれませんが、娘を思う父親……いや子を思う父親の捨て身は、時に奇跡を起こす」


 癇に障ったのかアーテの視線はこちらからニニギさんへ移っており、彼が引きつけてくれている間にこちらは兵に紛れ込み、慎重に距離を縮める。


「神が意図的に起こす幸運こそが奇跡だ。人が起こすものではない」

「違いますよ。たった一度の人生と命しかない人間が、足掻き積み重ね立ち向かった結果、森羅万象の祝福によって起こるんです。神が意図的に起こすのは奇跡ではない、慈悲です」


「見解の相違だな。私はお前に対して奇跡も慈悲もやる気はないぞ? ジン・サガラ」


 ニニギさんに向いていた視線が兵に紛れるこちらに向き、バレないはずはないよなと苦笑いしながら前へ移動し、彼女の足元まで辿り着くと浮遊しアーテに近付く。


「誰が私に近付いて良いと言った? 無礼にも程がある。いや……瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)、お前も人が悪い。わざわざ近付かせ、それが無駄であることを思い知らせようというのだな?」


 何を言っているのかわからないがここまで辿り着けた時点で、こちらの勝ちだろうと思い伝えたものの


「たしかに神の目の前まで来たのであれば、お前の勝ちだろう。だがまだお前は私と同じ目線には来ていない」


 まだ達していないと返してきた。勝利条件を明確にしてくれたならそれに従おう、そう答え達成するべく近付く。


「愚かなりジン・サガラ。この戦いは元から私の勝ちに決まっているのだ。アマテラスの真の力を見せてやる……天壌無窮(てんじょうむきゅう)!」


 再度後光が差し眩しさで目を閉じかけたが、素早く腕で遮り急いで距離を詰める。あともう少しでアーテの肩に触れられると思ったところで、光は強さを増し視界を奪われてしまう。


攻撃をされては不味いと思い気を張り巡らせたものの、渦にでも飲み込まれているような感覚に陥り、しばらくするとアーテの気が遠ざかっていった。


「あ、あれ!?」


 光と共に感覚も収まると同時に、シシリーの驚く声が聞こえたので目を開けたが、目の前の景色を見て愕然とする。


目潰しされて逃げられたなんていう可愛いもんじゃない。まるですべて巻き戻されたかのように、戦いを始めた時の距離に戻されていた。


注意深く周囲を確認すると兵たちの数が戻っただけでなく、先ほど見送ったオモイカネさんたちが蘇り、さらには八岐大蛇まで加わっているではないか。


いったい何が起こったのかと困惑するこちらを見て、アーテは口を開けて大きな声で笑い始める。シシリーがそれを見て、イエミアみたいな下品な笑い方はやめなさいと窘めた。


「やかましい! 妖精如きに祖母面をされるのも癪に障るが、ジン・サガラの哀れさに免じて許してやろう。私の最強最大の技、天壌無窮(てんじょうむきゅう)の凄さを味わった感想はどうかな?」


 どうかなもなにもない。巻き戻しどころか戦力が強化されているんだが、そう抗議するとそれだけではないといって周りをぐるりと見始める。


同じようにこちらも見回してみたところ、先ほどイエミアとの戦いの際に撒いた焔が消え、世界も修復されてしまっていた。


「おいおいそんなに驚かないでくれ。この程度のことは神なら朝飯前だ。お前が戦って勝った半人前とは訳が違うのだぞ?」


 幼児とは思えない顔をしながらこちらを見て鼻で笑う。イエミアは確かに消えた筈だよなとシシリーにも確認したが、私が探ってもイエミアの気配はないわと教えてくれる。


生育環境によってこんなにも人相が悪くなるなんて、可愛い顔が台無しよとシシリーは憤慨した。


「呑気なものだ。分かっているのか? お前たちは彼らを倒し私のところへこなければならないが、私は巻き戻せるのだ。さらに世界は壊れないので星の支配が完了するまでの時間は、刻一刻と近付いている」


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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