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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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天孫降臨-ヒーローズ・オブ・ザ・ビギニングー

「おのれ雑魚どもが……! 実れ大地の黄金よアバンダント・クロップ!」


 高速で移動しながら両手を掲げてイエミアは叫ぶ。彼女の声に反応して世界は一瞬黄金色に輝き、次に雲の上に稲が大量発生して埋め尽くしていく。


アリーザさんは突然の環境変化に警戒し速度を落とすも、気で出来た竜の頭部はそのまま突き進んで行った。


稲を呼び出しただけで終わるとは思えないが、今は行く手を阻むことに全力を注ぐ。


肥河鳥髪土砂下り(ダイダルウェーブ)!」


 体当たりを腹など柔らかい部分で受けつつも弾き飛ばし、なんとか阻んでいたところに後方から八岐大蛇の技が飛んで来る。


全体技でもあることや、テオドールとライデンが八岐大蛇の対処をしているので、こちらを狙って放ったものではないだろう。


「ここには私とお前以外にもう一人いたよなぁ!?」


はっとなりアリーザさんの方を見ると、稲に巻き付かれ身動きが取れないでいる。一面を水で一瞬埋め尽くす技は消耗が激しいだろうけど、イエミアと繋がり眷属のようになっているのであれば、後先を考えずに打てるのは間違いない。


稲を呼び出しアリーザさん拘束したのも、近いうちに肥河鳥髪土砂下り(ダイダルウェーブ)が来ることを読んで召喚したのか。


「さぁどうする!? アリーザを見捨てるか私を阻み続けるか!?」


 イエミアはニタリとしながらこちらに選択を突き付けて来たが、返答をするまでもないことなので背を向け、急いで救援に向かう。


「ジン殿!? 私のことなど」

「アリーザさんを助けるために俺は旅をして来たんです」


 アーテを助けるのは勿論のこと、アリーザさんにも生きていてもらわなければならない。彼女に巻き付いている稲を根元から急いで刈り取り、拘束から解放すると抱えて飛び上がった。


間一髪水に飲まれるのを回避出来たことにほっとしつつ、鏡の方へ視線を向ける。イエミアは気で出来た竜の頭部に追いつき手で薙いで掻き消し、飲み込んでいた鏡をあっさり回収していた。


あの鏡がこちらの手中にあれば、アーテを早く助けることが出来たのではないか、と悔しさを感じながら水面が下がるのを浮遊しながら待つ。


「ふん、愛妻家なのは良いことだ。お陰で私も宝物をしっかり手に入れたのだから、感謝しておこう」


やがて水面が下がり地面代わりの雲がみえるようになったところで、イエミアはこちらの近くへきて鏡を両手で掴みながら、満面の笑みを浮かべながら見せてくる。


皮肉を込めた感謝の言葉を述べながら、鏡の後ろから数珠のようなチェーンを取り出し首に掛けた。彼女の行動に反応するように、世界は色を最初の頃に戻し稲も消え太陽も地平線に戻る。


まるで時計の針を戻したかのようになっているけど、いったいあの鏡は何なのだろう。鏡と言えば光を反射させ姿や物を見せるものだ。ただの鏡でないことは間違いないし、ひょっとするとこちらの姿を映して心を露にしたりするのだろうか。


「これが何か気になるだろう? これは私がこの世界の天照であるという証のようなものだ。お前は武器だと思ったのだろうけど、そんな物騒な物じゃないしお前たちの心を明かしたりもしない」


 考えていたことを否定され驚いたが、説明通りなら違うらしい。鏡を装備していることでこの世界の天照である、と言う話が本当ならあの鏡を壊せば良いのではないだろうか。


仮説が正しいのであるならば、イエミアがあの鏡を必死に取り戻そうとしていた、その理由としては辻褄が合う。鏡をこちらから取り戻し装備したことで、先ほどのようなズレも修正されてしまったとも捉えられ、仕事で大きなミスをした時のような体が冷えてくる思いがした。


「さて、これで私も心置きなくお前たちを全滅させられる。見せてやろう、これが私の最大最強の技だ。ひれ伏すがいい……天孫降臨ヒーローズ・オブ・ザ・ビギニング!」


 最初の方に現れていた頭上の太陽が眩い光を放ち視界が潰され、イエミアがいた方向から強風が吹いて来てアリーザさんと共に押し流されてしまう。


距離が遠くなったお陰かなんとか堪えられたので留まり、光が収まるのを待っていたが収まると同時に、凄まじい気を複数感じて目を開けるのが億劫になる。


「目を開けなさい勇者よ。安心しなさい? 私たちからは攻めない。なぜなら私の勝利条件はお前を倒さなくても成立するからね」


 重い気を振り払い目を開けてみたところ、景色は先ほどよりも濃い黄金色に染め上げられ、イエミアを見ると後光がさしていた。さらにその前にはアーテが最初に姿を見せた時に居た、耳の辺りで髪を括った男性や髪の毛を頭の上で一つにまとめ、白い紐で結わいた女性がいる。


見間違えたのは彼らはあの時と違い、気は神の気に等しく強力になっており、一人ひとり一騎当千の戦士に見えた。


「無学のお前に教えてあげるけど、天孫降臨は天照に地上を高天原のようにすべく送られた一族の物語であり、今目の前にいるのは日本の礎を気付いた者たちよ。簡単に言えば彼らがいなければ私たちはいない。英霊の中でも最上格」


 聞いただけでも凄いのはよくわかるが、そんな凄い人たちをここに召喚出来るイエミアは、神のような力を本当に得たんだなと実感する。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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