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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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父としての覚悟

「お前たちは本当に素晴らしいわ。私の為に気まで分け与えてくれるなんてねぇ。竜の気に不動明王の気、変な気が二つ混じってるけどこれはどうでも良いわ。同化が完成した今、私は正真正銘最強神となる!」


 アーテはそう叫び両手を掲げると上空に小さな太陽が現れ、壊れかけていたこの世界を完全に修復してしまう。魂はもう移せないはずなんじゃないのか!? と問いただすも、だから同化だって言ったじゃないと鼻で笑われる。


どういう違いがあるのかと聞くと面倒臭そうな顔をしながら、あの水は私の魂を溶かしたものであり、鼻と口からアマテラスの体に入って血液として巡り同化したと言う。


魂を溶かすなんてクロウでも出来ないのにと言うテオドールに対し、私とクロウでは元々技術体系からして違うんだから、アイツが出来なことが私に出来て不思議なんてことはないのよ、と物を知らないのかと言いたげな顔をして話す。


「おい小娘、ワシは自由に動いて良いのか?」

「勝手にしていいわよ。それにこれが終わったら地上に降りて好きなだけ暴れて頂戴。近くのヨシズミ国ってところに人間とかが沢山居るから、そこで栄養補給をすればいいわ」


「女もいるか?」

「当然」


 それまでイエミアだった八岐大蛇は、初めて聞くしゃがれた声で話し始めた。第三形態になった時に、体を借りていると言っていたのを思い出す。これまでも十分に厄介だったのに、人質は取り戻せないだけでなく強敵が二人に増えている。


イエミアがアーテを乗っ取ることを計画していたのは、先ほどの大人しくしているわけがない発言からして間違いないが、そうなるとアーテさえ知らない技を知っているに違いない。


ここからが本番であると共に、今度こそ正真正銘神との戦いになるだろう。この世界の神であるクロウとも二戦したものの、体は借りものであり本体ではなかった。


イエミアは神として作られたアーテと同化し本体になっている。仮の体の神ですら一度目はクニウスたちの協力、二度目はミシュッドガルド先生とミカボシさんの協力があって、やっと倒せた。


アーテも人質に取られたままでどうやって戦えば良いのか、まるで見当もつかず途方に暮れる。


「アーテ様は……あの子はどうなったのですか!?」


 テオドールは嘆くようにイエミアに問う。自分の神を取り戻すため悪逆非道の限りを尽くして来た彼が、懺悔をする気持ちを得たのもアーテの誕生と成長だった。


外殻装着から人へ戻れなくとも、尽きるまで尽くすと決めた主であるアーテを、また道を失うのかと思えばその哀しみは想像を絶するものがある。


「なによ気持ち悪いわねテオドール。たかが小さい子どもに夢見ちゃってさ。この子だって大きくなればそこらの女のと変わらなくなるのよ? それこそアンタの嫁さんや娘のように陰口を叩き始める」

「そんなものは人によるとしか言えないでしょう? 仮にあの子がそうなったとしても、私は今度こそ最後まで仕えると決めたんです。答えなさいイエミア、あの子はどこにいる!?」


「キモッ……てアンタは元々キモかったわね、まぁ良いわ教えてあげる。アーテと言われている人格は私の中で眠っているわ。この水の中に閉じ込め意識を失ったところから、同化する準備が始まった」

「気を送った時には既に」


「いいえ、残念ながらあと一歩あなたたちが早ければ、同化は阻止されていた。誰のアドバイスかは知らないけど、惜しいことをしたわねぇ」


 アーテと同化したイエミアは、いやらしい顔をしてこちらを見下ろす。せっかくミカボシさんが策を授けてくれたのに上手くやれなかった。


―ジン、諦める必要は無いよ。声の主と同化したとはいえ、人格まで死んではいない。


 悔しさから発した怒りに飲まれそうになったところで、ミカボシさんは声を掛けてくれる。死んでないのは確かにそうだが、どうやって同化を解消させたらいいか分からない。


「ジン殿、剣が」


 気付くと三鈷剣(さんこけん)が出現しており、ゆっくりと頭上へ移動しながら強い輝きを放ち始めた。


「な、なんだ!?」

「くっ……己、明王の仕業か!」


 イエミアと八岐大蛇を吹き飛ばし、柄を握れと言わんばかりに目の前に下りてくる。三鈷剣(さんこけん)は悪しか斬れない。アーテと同化したとはいえ魂は別だ。


アーテを斬ったとしてもそれは彼女を殺すことにはならず、イエミアのみを消せるに違いない。剣の柄を握り手に取るとイエミアに切っ先を向ける。


「おや、やる気になったのかいジン・サガラ。もう私はお前の焔に怯えることはないのに敵うかねぇ」

「怯えることはないと言うが、攻撃が通らない訳じゃないだろう?」


「それはそうだが良いのかな? お前の娘が傷付くことになるけれど」

「お前に乗っ取られたまま罪を犯し死ぬよりも、俺の手で解放する」


 自分は剣の導きを信じているので意に介すことはないが、母親であるアリーザさんは別だ。酷ではあるが意見を求め彼女に視線を向けると、一度目を伏せ涙を落とした後こちらを向き笑顔で頷いた。


確実に平気だとは言えないし、手の内を明かせばイエミアにまた対策を取られてしまいかねないので、目を閉じ頷くと再度娘を苦しめる悪を見る。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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