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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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扉が開くのを待つ

「子ども一人育てたこともないお前に、そんな台詞は吐かせん」

「育てたこともない男にそんな台詞を吐かせるな」


 こちらの発言が逆鱗に触れたのか、目を大きく見開き口を開けイエミアは襲い掛かってくる。これまでは体裁を保ってが捕えられればなんでもいいとばかりに、髪を振り乱しながら手だけでなく足や噛みつき、果ては味方を投げつけるなど手段を択ばなくなった。


「ジン! 相手はイラついてめちゃくちゃよ! 落ち着いて頑張れば大丈夫!」

「糞虫が!」


 苛烈な攻撃と彼女の気迫に圧されたものの、シシリーはそれに気付いたのか声を掛けてくれ、小さな手で胸を優しく叩いてくれる。お陰で気を取り直すことが直ぐに出来、避けながらふぅと一息吐き自分を落ち着かせた。


イエミアたちの世界はすでに焔で埋め尽くされていたが、まだ崩壊してはいない。焦ったことからして有効ではあるのだろうけど、それでもやはり確実に破壊するには倒す他無いのだろう。


倒すとしてもアーテを取り込まれており、無暗に攻撃すれば無事では済まないと言われている。脅しの可能性を考え一か八かで攻めるには、失敗した時の代償が大きすぎた。


「ジン、私にもできることがある?」


 シシリーにそう問いかけられ言葉に詰まる。打開策がまるで思い浮かばずあれやこれやと考え……と思った時、イエミアの今の状態と瓜二つの状況があったことを思い出した。


この戦いの前の巨大な赤ん坊との戦いの際も、皆が飲み込まれシシリーに中に入って状況を確かめてもらっている。


ただあれとは状況というか規模というかが違い過ぎて、行ってくれとは気軽には言えなかった。悪そのものに等しいイエミアの中は、空気も悪いだろうし精神的にも宜しくないだろう。


妖精という美しい自然から生まれた種族である彼女に対して、とてつもないダメージを与えかねない場所だ。妲己の命を奪った今、あとはイエミア一人道連れにするだけでいい。


余計な者たちが去るだけで星の物語は続いて行く。シシリーには果たしてやれなかった約束があり、それはアーテに叶えてもらいたいので、生きていてもらわなければ困る。


「目的を見失わないで、ジン。あの子を助けるために私たちはここまで来たのよ?」


 彼女の言葉に胸が締め付けられる思いがすると共に、自分の不甲斐なさ知識の無さに怒りがこみ上げ、気を増幅させてイエミアたちを吹き飛ばした。


「悪かったシシリー。そうだよな、最初の頃からずっと一緒に色々してきたもんな。こんな時だけ頼まないなんて相棒失格だ。……頼めるか? アーテの事を」

「任せて、私の孫みたいなもんだもん!」


「怒ったりしないでやってほしい。優しくあやしたりとかお母さんの話とかしたりしてくれると嬉しい」

「了解!」


 全員黙らせた後でシシリーに頭を下げて、アーテの事を頼んだ。自分としても彼女が傍にいてくれれば心強いが、アーテの方が今は一人寂しくしているのでより必要だろう。


シシリーは今のうちに行くねと言って胸元から飛び立っていく。なんとか無事でいて欲しいと祈っていると、左手から羂索が出現し彼女の横までいくと並走する。


驚いてシシリーがこちらを見たが不動明王様の導きだと考え、笑顔で頷くと彼女も頷き羂索に手を添えイエミアの口の中へ入って行った。


「何が可笑しい!?」

「なにも可笑しくはないさ。さっさと立てよ。ダンスホールの閉館時間にはまだ早いだろう?」


「ぬかしたな! お前たち掛かれ!」


 どうやら羂索はイエミアには見えていないらしいが、万が一でも気付かれると厄介なので煽りながら手招きする。怒りを露にしたものの、直ぐには立ち上がれないらしく(しもべ )をこちらに先行させた。


ここからの目的ははっきりしていて、ひとつは彼女の体力だけでなく他の力すべて使わせ疲弊させる。もうひとつはシシリーの帰還までなにも気付かせない。


確実に倒す方法が見つかるとは言えないが、今はこれに掛けるしかなかった。幸いなことに先ほどからこの世界を壊すべく焔をだしているので、向こうは余計なことを考える余裕がない状況にある。


こちらは全力で破壊するために焔を出し続ければ良いだけだ。危険な任務を受けてくれたシシリーの気持ちに応えるためにも、手を緩めたりはしない。


「その程度でこの俺を止められると思っているのか?」

「この程度でも十分だ。まだ世界は壊れてはいない。アーテ様が私のお腹にいる限り」


 そう言ってお腹を触ろうとする動きを見せたので、触って中が変化したり気付かれては困ると考え、急いで飛び蹴りを喰わらす。


不意打ちになったようでイエミアはそのまま雲の上に倒れ込み、こちらを睨みながら見上げた。明らかに体力は消耗しており、このまま引っ張り回せば近いうちに足が止まるだろう。


ある程度計算が出来たものの、これまで避けて焔を撒いてきたのが直接攻撃をしてきた、その理由をなにか言わないと勘繰られると思い、アーテのことを言おうと考え口にする。


「俺の娘に気安く触れるな」

「DNA的にはお前の娘だが、次生まれる時は私の娘として生まれるのだ。父親面を出来るのもそれまでよ」


「より強固な洗脳状態にするということかな?」

「さてどうかねぇ……」


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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