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遂に村へ向けて

「まぁでもこの国の上の連中もそれを利用しようとしたんじゃないの? この世ならざる者アンワールドリィマン を暗闇の夜明けたちが滅ぼしてくれた方が都合が良いのは同じだし」


 シスターの言葉に納得しかけたが、仮にこの国の上層部と繋がってたのならなんで紋様をこの町の周辺だけじゃなく国の方にまで設置して回っていたのだろうか。あれは守護するっていう感じじゃなかったけど。ここ最近の紋様事件に関して質問すると、町長は渋い顔をした。


独立の為に協力してくれないとアリーザさんの取り巻きである自警団の人たちが憤りを感じて反抗的なのは分かる。だが上層部と繋がっていると思われる暗闇の夜明けが町だけでなく国の近くにまで紋様を仕掛けていたのは何故だろう。


更に今回ゴブリンを大量に召喚し仕掛けて来たとなると、この国の上との繋がりも断たれるんじゃないだろうか。そこまでしても村に近付けさせないたくないのか暗闇の夜明けも。


「紋様の件に関する報告は聞いていたでしょうが真面目に捉えていなかったようです。紋様は護る為のものと言う説明が何とか通ったとしても、あの大量のゴブリンを召喚し仕掛けて来たのではその言い訳も通用しなくなる。報告を聞いて宰相も血の気が引いてました」

「ゴブリンは国側には少数の兵士でも撃退出来る程度の数だったので、国には村に手を出すなという警告と、町に対しては私とジンを除外しようとして差し向けたのは明白だろう。協力依頼を断った癖に村に介入しようとしたから罰を与えようとして自警団も協力した可能性がある。他人の国に居候している人間のやることとは思えんがな」


「暗闇の夜明けも国を欲している。この国のヨシズミ王なら楽に操れると踏んでるのかもしれないわね。紋様を仕掛けていざという時攻められるように準備してたのを、ジンが次々潰すもんだから町長と同じくらい敵視されて狙われてるかも」

「で、町長はあの村をどうするつもりですか?」


 俺の問いに対して町長は一枚の紙を見せてくれた。それには”ゴブリン襲撃事件首謀者捜索依頼”と書かれており、それには町長に全権を委任すると言う。だが宰相などからくれぐれも暗闇の夜明けとは争わないよう、なるべく穏便に済ますようにと注文を付けられたらしい。


「こんなの無茶苦茶じゃないですか。ゴブリンを何とか出来るのなんて魔法を使える人しかいないし、暗闇の夜明けじゃなきゃ竜神教しかない」

「なるべく穏便に済ませれば良いのだ……なるべくな」


 町長は悪い顔をして微笑みティーオ司祭も同じ顔していた。これは捜索の名目を借りた掃討作戦なんだなと察する。国としても竜神教にも暗闇の夜明けにも良い顔をしていたが、ゴブリンまで差し向けられてはそうもいかず、かといって表立って攻撃も自分たちの目論見がバラされると不味いので出来ない。


そこで元々敵対している町長や俺、それに竜神教のティーオ司祭を入れた部隊に捜索という指示だけを与えて差し向け、内々に処理しようと言う作戦なんだろう。とは言えこれは相手にも伝わっていると考えて間違いない。当然打って出てくるだろうな、望むところだが。


「向こうも前に言ったように表立って出る時期ではないと考えているでしょうから、適当な生贄を差し出して来るかもしれません」

「腹立たしい限りだがな。こんなに時間が掛かったのも上が全部に良い顔しようとした結果だ。相手も腹を立てている可能性があるから生贄をだしてくるとしても死ぬ気でくる。ジンも心して掛かれ。明日の朝うちに集合してから町を出る」


 恐らく生贄役を前に押し出してその間に村から逃げる算段をしているだろう。個人的には何とかアリーザさんだけでも助け出したいので間に合ってくれと祈る他無い。その為に前線に出て真っ先に村に辿り着くべく全力で走ろう。そう考え気合を入れ直し町長の家を出る。


今回の任務は極秘依頼になるので受けている冒険者は俺しかいないしギルドの依頼書も無い。向こうがしでかしたとは言え、この作戦が終わればあの村も変わらざるを得なくなる。後日作戦は結果と共に明かされるだろうが、なるべく悲しむ人が少なく済むよう頑張ろう。


「ジン、何かあった?」


 久し振りに宿に戻り、ベアトリスとサガ、それにカノンと共に甘味処を訪れた。甘い物も久し振りで涙が出るほど美味いからだと誤魔化そうとしたが


「うん、あった。でも今度話すよ」


 正直にそう答えて口の中に広がる甘さに思考を溺れさせる。何とか全て上手く行ってくれれば笑い話で済ませられるだろうが、そうで無い場合は辛い思いをさせてしまうかもしれない。ここは背負う所だと決めている。


防具屋の親父さんにタダでもらった盾の元所有者であり元不死鳥騎士団の人、山に潜伏していたのに姿を消したベアトリスのお兄さんにあの村が変だと言ったベアトリス。全てはあの村に繋がっているしベアトリス以外の皆が揃うなら明日だと何となく思っていた。


混戦になれば俺の未熟さではベアトリスを護ってはやれない。だからなるべく目的を達成できる確率を上げる為にも黙っておく。


「分かった」


 ベアトリスはそう言って微笑んでくれた。その信頼に俺も答えたい……いや今こそ答えるその時が来たんだ。皆で笑って大団円! これを出来るのはおっさんしかいないのだ! そう決意を新たにしてこの日は終わる。



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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