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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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竜の牙が本殿を襲う

「妲己、可哀想だったわね」


 シシリーの言葉に頷きながら、本殿の前までゆっくり移動する。相手の戦力は知りうる限りイエミアと妲己だけだった。恐らくアーテ本人の技があるので楽観視できないが、残りのイエミアを撃破すればようやく最後の戦いとなるだろう。


顕現不動(けんげんふどう)モードまでで今のところ済んでいる。本殿がカギになっているとすればそちらに当てるためにも、出来ればこのままイエミアを撃破しておきたいところだ。


幸運なことにここは彼女たちの領域であると同時に神の領域であり、こちらの気は減っても不動明王様の力は増大していた。吸気(インヘル)を使い焔を気に変換し、歩きながら補充をしておく。


「余裕だなジン・サガラ」


 ようやく本殿が見えたところでアーテが声を掛けてきた。下手なことを言ったり見せないよう笑顔で誤魔化したが、内心驚いている。


ここに来るまで変換していたがあっさり全快まで到達し、さらに小さな傷も全て癒えてしまったからだ。考えてみれば不動明王様は長い年月多くの者たちが参拝しており、アーテと比べるのは失礼なほど神格が遥か上の方なので、例え世界や場が違っても神の域であれば劣るはずがない。


ギリギリの状態であれば余計な使用は控えたかったが、せっかく全快したのでここは一つ試してみようと考え、本殿を見つつ中腰になりながら両手首を合わせて気を高めていく。


「竜牙拳!」


 ぐっと前に突き出しながら両掌を開くと同時に指の第二関節を曲げ、技名を叫ぶと気で出来た巨大な竜の頭が飛び出した。


いつもと少し違い焔を所々纏っており、下顎は雲を突き抜けまさに本殿を喰わんと襲い掛かる。竜が出るまでは余裕だったアーテも飛び出た瞬間、目を丸くして呆然として立ち尽くした。


「ちぃっ! イエミア!」


 本殿に噛みつくと衝撃で目を覚まし近くの太い柱にしがみ付き、竜を皆がイエミアを呼んだ。周囲を警戒しているといつの間にか本殿の上に巨大な炎が現れ、左右から手が伸びて来て竜を掴む。


巨大な炎がイエミア自身なのかは気になるところだが、それ以上にアーテの反応を見て本殿を狙うのは正しいと気付き、このチャンスを逃さないためにも二発目を狙う。


一発目は確かめるためにフルパワーではなかったが、今度は全力で打ちこもうと両手首を合わせながら掌に集めていく。


「何をしている!? さっさと化け物をはぎ取れ!」


 焔を投げた時に現れた見えない壁によって竜牙拳は阻まれていたが、やがてピキピキと音を立てると同時にひび割れが発生し、それによって本殿全体を覆っていたのが見えてくる。


バリアのようなものを破壊出来れば、これからは戦いつつ本殿も狙うことが可能になってくるので、今確実に破壊するべきだと判断し二発目の竜牙拳を放つべく構えた。


「クソッ……こうなったら私の技を出すしか……!」

「喰らえ……フルパワー竜牙拳!」


高照日御子(こうしょうひみこ)!」


 こちらが二匹目の竜を放った後で、アーテは素早く手を動かし最後に手を合わせるとそう叫び、掌を上へ向ける。巨大な炎のさらに上から豪華な着物を着飾った者たちが降り立ち、喰い付いた竜へ攻撃をし始めあっという間に四散させられた。


唖然としている間にイエミアと思われる炎の手と共に、二匹目の竜へ襲い掛かる。嫌な予感がし三発目を打とうとしたものの


「ジン止めて! エネルギーが空っぽになっちゃう!」


―落ち着けジン。今力を使い果たしては元も子もない。


 シシリーと不動明王様の声に制止され三発目を諦め、気を回復させるために目を閉じ呼吸を整えることに専念した。


「くそぅ……こんなところで私の技を出さねばならんとは……」


 アーテの声が聞こえ目を開けるとフルパワーで打った竜牙拳は消え、ひび割れも直ってしまっている。かなり力を消耗させても壊せなかったことに落胆したが、彼女は眉間にしわを寄せ肩で息をしていたのを見て、攻撃は間違っていなかったと分かりほっとした。


「何をしているのだイエミア、さっさとアイツを片付けて来い! あれをここに呼び込んだのはお前ではないか!」


 唾を飛ばしてアーテは上空の巨大な炎へ向け怒鳴り散らす。両手を出していた炎はこちらへ向かって動きつつ、両足そして頭を出し徐々に人型になっていく。


「お前の炎が上だというならば、さらに強力な炎となれば五分以上になるだろう。今度はこちらがお前を消し炭にする番だ!」


 これまでの冷静さはどこへやら、取り乱したようにアーテは叫ぶ。思えば彼女の名前の由来元は太陽の女神であり、眷属も太陽に由来する系統になるはずだ。


由来元とは違いこちらは不動明王様の加護を直接得ている。同じ炎であったとしても負けるわけがなかった。


「さぁイエミア、決着を付けようか」


 領域の特性を利用し、あっという間に気を回復させ剣を両手で握り構える。元イエミアであった炎の巨人はこちらの言葉に反応したのか、口を大きく開きながら襲い掛かってきた。


偽・火焔光背(ぎかえんこうはい)の力を借りて浮遊し、焔を手に集めると本殿へ向けて放り投げる。


炎の巨人はそれを無視して突っ込んで来たが、本殿にいるアーテの悲鳴を聞き振り返った。隙が出来たのを見逃さず、三鈷剣(さんこけん)で首の部分を薙いだ。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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