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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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お父さんはだいたい説教臭い生き物

「私に無断で話しかけた上に容姿の評価をするなど言語道断だ。これ以上は言わん、下がれ」

「でもさぁ……キャアッ!」


 話を続けようとしたシシリーに対し、当たらない位置から手で払いのけるような動作をしたところ、風が巻き起こったようにこちらに吹き飛ばされて来る。

 

両手を突き出して気で風を起こして勢いを殺し、彼女をキャッチしたがどこも怪我が無いようで直ぐに離れ、アマテラスに対していきなりなにするのと憤慨した。


怒号を涼しい顔で見下ろし鼻で笑ったのを見て、シシリーはさらに怒り心頭で浮遊しながら地団太を踏んだ。


離れた位置からアマテラスを見ているが、雰囲気も言葉遣いも五歳とは思えない。脳裏に園に入ってしばらく経った頃の、親に捨てられた子どもという悲しさ辛さを誤魔化すため、背伸びして大人ぶっていた自分が蘇る。


イエミアの計画を現実のものとする為に、そういう風に作られたのだろう。親子そろって大人に酷い扱いを受けるなんて、皮肉にも程があるだろうと嘆かずにはいられなかった。


「先ほど妙なことを口走っていたが、私は神であり親など居らぬ。ましてや父など記憶の欠片も持ち合わせておらん」


 そう言われると言葉もない。ここまで来るのに時間が掛かってしまい、今日まで会ってやれなかったのは事実だ。自分が捨てられた時とは違い、今回は加害者側になってしまっている。


どのような事情であれ子ども側からすればそんなことは関係ない。最後の最後でまさかこのようなことが突き付けられるとは、この世界に降り立った頃には想像もしていなかった。


友も居らず誰とも交流して来なかった自分、何もせずに時を過ごして来た怠惰な自分、先を歩く者として誰も指導して来なかった自分、家族を持たなかった自分、そして子どもを捨てた自分。


向こうの世界でしなかったすべて、いわば業が転生したこちらで襲い掛かってくるとは思わず、空を見上げながら苦笑いする。


「本来であれば世界が整うのを邪魔した罪、神の領域へ無断で侵入した罪で死罪ではあるが、ここまで辿り着いた運を評価し一度だけ聞いてやろう。私に下る気は無いか? 下るのであれば不問に」

「断るよアーテ」


 話が終わる前に視線を戻し遮るように断った。例え娘が世界征服を望んだとしても、他人の意思を強引に捻じ曲げてやるようなことに、親としては加担しない。


彼女に対して負い目があるのは事実だが、だからと言って悪行を肯定など出来るはずもなかった。親としての心得も何もわからないが、先生たちに育てられた頃を思い出し辿り着いた答えがある。


それは悪いことをした時はなぜそれが駄目なのかを説明し、理解させるということだ。言ってもすぐに理解してもらえる関係性が無いが、恐らく眷属たちを倒し彼女の元へ行くことが出来れば、心に響くものがあるだろう。


この命を犠牲にしてでも彼女の間違いを正してただの子どもに戻し、母親の元へ送り返す。親父がいなくても子どもは育つし、アリーザさんは無事取り戻した。


改めてやらなければならないことを見つけ気合が入る。こちらの心情に呼応するように、顕現不動(けんげんふどう)モードへと自然と変わり、偽・火焔光背(ぎかえんこうはい)も出てくれた。


ならば始めよう、三度目の神との戦いを……そして向こうの世界で出来なかった最後の仕事を成し遂げる。自分を鼓舞し丹田に力を込め気を増幅させていく。


「拒否するならここで死ぬことになるが」

「世界中全ての人に好かれたら良いな、と親なら思うしそうあって欲しいと願う。現実問題として十人十色だから有り得ないし、ある程度合わせることが必要だとしても、自分を消す程に曲げる必要は無い」


「何の話だ?」

「お前が他人を認めないなら、他人もお前を認めない権利がある。それを捻じ曲げ強引に従わせようなど、それが神のやることなのか? なぁアーテ、それは神様なんかじゃない、ただの暴君であり悪逆非道の魔王に等しい」


「神である私を愚弄するのか……」

「愚弄してるんじゃない、説教してるんだよ」


「何様のつもりだ貴様」

「俺はジン・サガラ……お前のお父さんだ」


「もう良い、ここで死んでゆけ……我が眷属たちよ、あの無礼者を今直ぐ殺せ!」


 アーテは右掌をこちらに向けて突き出し号令をかけると、それまで首を垂れていた全員がこちらを向き、得物を手に取り向かってきた。厄介なのはその中にイエミアと妲己がいることだ。


あの二人は元から強いが眷属となったのであれば、こちらと同様に神の加護を得てパワーアップしているに違いない。


先ずは相手の実力を測るべく、通常の風神拳を放つもあの二人以外は普通に吹き飛んだ。焔を纏わない攻撃でも行けるならと思ったものの、アーテもイエミアたちも余裕な顔をしている。


「ジン、あの人たち効いてないみたいよ!?」


 吹き飛ばした眷属たちは空を舞いながら着地し、再度こちらへ向かって走り出した。ダメージは負わなくとも通常の技も使える、それがわかっただけでも運が良いと思い、連続して風神拳を放ちイエミアたち以外を下がらせる。


「私たちをご希望とはね!」

「今度こそ貴様を殺す!」


 二人とも着ている物だけでなく纏う気も神の気に変わっていた。イエミアたちの悪も新たな神にとっては正義になった、だからこそ纏えるのだろう。


これまで明確な悪となったことは無かったが、この場所においてはジン・サガラは悪なのだなと思うと、ちょっと面白くなって笑ってしまう。


「なにが可笑しい!」

「せっかく悪党になったのだから、お前のように強くふてぶてしくないとなと思っただけさ!」


 イエミアの魔法を避け妲己の蹴りを受け流すと同時に、焔を両手に取り二人にぶつける。一撃目は避けられたものの、次から次へと焔を手に出し放り投げたところ、避けらないと判断したようで腕を交差させ受けた。


攻撃が当たるこのチャンスをものにすべく切れ目なく投げ続ける。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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