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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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新たな神の支配

「ただのおもちゃなのよ? クロウから得た技術に私の技術をプラスして作った人間のなりそこないなの。わかる?」

「例えどんな生まれ方をしたって命には違いない。あの赤ん坊には感情もあるのにおもちゃだっていうのか? 仮にも子どもを育てたことのある人間とは思えない台詞だ。もう一度後ろの子を見て考えてみろ」


 体を左へ傾けて覗く姿勢になったと同時に、アンダースローのように腕を振り火の玉を投げる。殺意すらなくまるで壁へぶつけるように投げてきたので察知出来ず、反応が少し遅れたもののなんとか弾くことに成功した。


一球だけで終わるはずもなく、こちらが体勢を崩したのを見逃さずに連投してくる。ひとつでも当たれば赤ん坊が無事では済まないし、イエミアが火傷で済むような温い攻撃をするとは思えず、必死に食らいついた。


先ほどの言葉から察するに、彼女が当初目的としていた最低限のラインはクリアしているはずだ。次の行動に移らず攻撃をしているが必ず倒すという本気を感じない、これが意味するところは何なのだろうかと考えた時、スの国にあたる場所で普通に動けていることに今さら気付く。


元々普通に動けることが当たり前なのだけど、少し前までここは新たな神が誕生し鎮座していた聖域であり、入ると戦意自体を失ったのを覚えている。


最終ステージという言葉をさっきイエミアが使ったことからして、ここがそうではなくなったのは明白だった。当初からスの国に引きずり込むことが彼女たちの目的であり、あの戦意喪失状態を利用すればこちらを倒せたのに、今はそれを取っ払っている。


仲間を捕えて赤ん坊を仕掛けさらに覚悟の無い攻撃をしているのは、最終ステージの完成のためだったとすれば納得が行く。


もう一つ疑問に思ったのが目の前にいるのが本当にイエミア本人なのか、だ。クロウが彼女を欲しがったのは二度も体を移ったからだが、クロウ以外でも気軽に抜け出て戦えるものなのだろうか。


攻撃を捌きつつ下にいるエレミアに思念を飛ばし、目の前のはイエミアの魂なのかどうか確かめる術はないか、と聞いてみる。


まだ回復しきらず座り込んでいるエレミアは首を横に振った。あいにくこちらも魂が本物かどうかを見分ける方法は知らない。


「さぁ、そろそろ始まる時間よ……もう攻撃する必要もなくなったし、安心して空を見なさい」


 突然攻撃が止みそう言われ、警戒しつつ空を見上げると青空は消えオーロラが空を覆っていた。スの国周辺は熱帯ではないにしても、気候は日本と似ている地域でオーロラなんて見たことが無い。


明らかに異常気象でありその原因は自信満々な彼女の言葉からして、新たなる神の力によるものなのは間違いないだろう。


「クロウも消え去った今、神は我がアマテラスのみ。すべての生物はアマテラスに例外なくひれ伏すのだ」


 何を言っているのか理解出来なかったが、視線をイエミアに移すと下を指さしている。向けると皆が地面にゆっくりと寝そべり始めていた。


「分かるかしら? 普通の人間には神様は見えないのよ? 私はアマテラスの眷属であるしあなたは例外だから普通でいられる。これが世界中に広がっていくのよ……即ち私の勝ちだ! 分かるか!? ジン・サガラ!」


 楽しそうにイエミアは笑い声をあげる。このまま新たな神の力が星を覆えば他の皆は逆らえなくなるだろうし、その眷属のイエミアに対しても同様だろう。


なんとか止めなくてはとは思ったものの、どこを見渡しても新たな神の居場所が分からず、止めようもないことに気付いた。


戦意喪失させるような効果を捨ててでも場所を別に移し、多くの時間を稼いで完成を待ち万全を期して星を征服する。すべてはイエミアの筋書き通りに進んでしまった。


「安心しなさい私も鬼ではないわ。康久の一族を皆殺しするにも神の力を使わずにしてあげるわ。そうね、この星の住民たちに嫌悪感を植え付けましょう。それにそれに、アマテラスの敵と認定すれば自然と殲滅できるわね……そうしましょう!」


 嬉しそうにおぞましいことを口にする彼女に対し、自然と体が動き殴り掛かる。


―ありがとうジン・サガラ。あなたのお陰で時間も稼げたしエネルギーも必要分頂けた。なによりあのクロウを倒してくれたことは本当に感謝しているわ……神がアマテラス一人になったお陰で実行できたし。そのご褒美と言っては何だけどぉ、ノガミ殲滅の劇を最後まで観客として見て行ってね!


 攻撃が当たった瞬間、光の粒子は四散し嘲笑うような声のみが木霊した。自分がして来たことがすべて仇となるとは思わず、途方に暮れてしまい空を見上げる。


オーロラは空から徐々に地上へ向けて降りて来ていた。恐らくあれが完全に下りた時、この星の支配はアマテラスとイエミアによって成される。せっかく不動明王様にも加護を頂いたのに、大地の守護者としての役目を果たせずに終わってしまう。


自らの無力さ浅慮に絶望しながら呆然としていると、誰かに体を掴まれた。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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