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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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スの国に鎮座する赤ん坊

「ティーオたちはどこへ行った?」


 クロウをぶつけたりしたことで戦場が移動してしまい、他の仲間たちと離れていたので先ずはシスターたちと合流しよう、そう考えて走り辿り着いたが誰も居らず唖然とする。


皆で気を探ってみたがアリーザさんもエレミアも見当たらず、嫌な予感がしてならなかった。先ほどまで力説していたテオドールは不安に駆られたのか、一言も発さずスの国の方角へ走り出す。


後追って走り出すも突然地響きが発生し足を止める。


「あれはなんだ?」


 リオウが指さす先を見るとスの国方面に巨大な赤ん坊の顔が現れた。事情を知っていそうなシンラを見るも首を横に振り、当事者の一人であるテオドールを見ようとしたが、すでにこちらを置き去りにして走り去っている。


あれもクロウと同じくらい信用ならない男だから、次会った時には再度寝返るという事態が起きないとも限らない。油断しないように注意しながらスの国へ向かおうと告げ、地響きが続く中スの国を目指し再度走り出した。


しばらく森を走っていたところ、この先一キロ先にスアの町その五百メートル先に城あり、そう書かれた看板を見つける。もう少しだと皆に声を掛け速度を上げていくと森が徐々に開け始め、町の入口と思われる門が見えた。


「これが敵のボスですか?」


 門の向こうには先ほど見えた赤ん坊が座っており、虚ろな表情で遠くを見ている。凡そ感情があるとは思えず、これが何を意図して座っているのか分からず困惑した。


「戦いが始まるまではここには研究所があった。例の赤ん坊もここで生まれているが、イエミアによって時間を早められ年齢はもう少し上だ」


 説明してくれたシンラに対し、彼女は時間まで加速させられるのかと質問するも、説明はなく魔法の形態が違うようで理解出来なかったという。


遺伝子工学を向こうで専攻していたと聞いているし、作った者が誰かは判明したも同然だ。一度人生を全うすることで消滅した自分の弟への恨みを、クロウに復活させられたと同時に再燃させられている。


巨大な赤ん坊の目的も間違いなくノガミ一族の抹殺だろうけど、今こちらにはヤスヒサ王の直系であるサラティ様がいるのに、彼女を見ても反応しないのはなぜだろう。


考えていると突然赤ん坊は大きなゲップをし、自分がしたと思っていないのか驚いた顔をしたあとで笑い出した。


豪快なゲップに他の皆は笑っていたものの、なにか嫌な予感がする。ここに居ないメンバーにはヤスヒサ王の血を引く者は多くいた。彼らは見当たらずアリーザさんもいない。


 こちらがクロウと戦っている間にイエミアは姿を消し、スの国に異変が起こっている。向かうとしたらここしかないのに今も彼らは見つかっていない。


虚ろな表情で遠くを見ていた巨大な赤ん坊が、ゲップ後は感情を取り戻しているのが気になった。ひょっとしたら食事を終えて消化活動中だったから、とは考えられないだろうか。


誰かあの巨大な赤ん坊の腹の中を見れないかと聞くも、和んでしまった他の皆は突然どうしたと聞くだけで、取り合ってくれない。


和んでしまったというだけで片付けてしまったが、どうも様子が可笑しかった。たしかに赤ん坊は可愛いのは分かるがあれは巨大で異質だし、シンラまで笑顔でいるのは引っ掛かる。


なんとか皆に緊張感を取り戻してもらうべく、考えていた説を披露したものの笑って一蹴されてしまった。


「ンマァアアアアアア!」


 再度説得を試みようとしたところ突然叫び声を上げたので見ると、よだれを垂らしながら門や塀を壊し、こちらにハイハイしながら向かって来る。


皆もこれを見れば当たり前のように逃げるだろうと思い、声も掛けず逃げ出したが振り返ると誰一人動いていなかった。


逃げろと叫んでも反応せず、シンラたちはあっという間に土ごと食べられてしまう。


「どう? なかなかいい兵器でしょう?」


 自分が強引にでも引っ張って逃げていればと後悔に苛まれ、地面に突っ伏しているとゲップをしたあとで赤ん坊が喋りはじめる。


声の主はイエミアかと思ったものの、幾つもの声が重なって聞こえ判別がつかない。お前は誰だと問うとケタケタと笑い出し辺りを転げ回り出した。


「ごめんね笑い過ぎて。だって可笑しいじゃない? もうこの場所にいる者は限られているのに問うなんて」


 しばらく転がり続け辺りをあらかた破壊し尽し、ようやく気が済んだのか止まると座り直してそう言ってくる。声が重なっているのも兵器の仕様なのかと聞くも、また声を上げて笑った。


見た目だけでなく感情も赤ん坊になったのかと思いながら、笑いが収まるのをまっていると突然相手の後ろに白い尻尾が現れる。


やがてそれは増殖していき、九つになったところで笑いと共に止まった。重なって聞こえていたのは妲己の声かと思ったが、聞いた感じそれだけではない気がする。


「あら、納得いかない顔ねヒントをあげたのに」


 からかうようにイエミアっぽいなにかはねっとりとした口調で言う。いまいち正体を掴み切れず、どう戦えば良いのかも分からず身構えていると


鏡桜花(かがみおうか )ぁっ」


 手を掲げると上に刀が現れ地面に突き刺した。あれはウィーゼルの技であり、それを出せるということはウィーゼルも吸収されているということか。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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