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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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さらばこの世界の神よ

「いい加減にしろ、ジン」

「大人しく僕に協力すれば良いんだ」


「お前の娘も直ぐに助けてやるし」

「逆らう奴もいなくなる」


「家族そろって平和に暮らせるんだ」

「なぜ分からない!?」


 胃壁から光の粒子のクロウが現れこちらを説得しようとしてくる。迦楼羅炎(かるらえん)によって直ぐに掻き消されてしまうので出て来ては消えを繰り返した。


提示してきた条件は、この世界を創造した神なので誰よりも実現性が高いが、それはクロウの鳥かごの中でのみであり、許される範囲も限定されている。


与した後で方向性の違いが出たとしても脱退だけでは済まず、テオドールやイエミアのように容赦なく処断されるばかりか、実験の道具として魂が擦り切れるまで利用され続けるだろう。


体を乗っ取られたりイエミアの魂を利用する話を知らなければ、彼の提案を受け入れていたかと思うとゾッとした。


甘い言葉で近付き好条件を提示し続け逃げられないようにする、これこそ悪魔の手口なんだなと学んだ。


どれだけ良い条件を出されようとも手を組んだ者の末路を見た今、組むことは二度とないだろう。


「なんという強情な奴」

「もう一度体を乗っ取ってくれる!」


 言葉通りにしようとこちらに近付いて来たものの、炎によって即座に消滅させられる。以前までの状態であれば乗っ取れたかもしれないが、最後の仕事へ向け不動明王様がこれまで以上の力を貸してくださり、乗っ取られる可能性はもうないと確信できた。


「おいクロウ、もういい加減ここでの負けを認めてさっさと出て行け」

「「偉そうに!」」


「偉そうじゃない。この星のことはこの星に住まう者たちで決める、ただそれだけのことだ。この世界に人を生み出した神様の癖に人生を狂わせるために現れ、果ては実験材料とするなど愚の骨頂」

「黙れ!」


 光の粒子になっていても表情が何となく分かり、こちらへ来ようとしても来れずに炎によって消える際には、悔しそうな顔をしているように見える。


悔しい一心で耐えているとすれば凄いなと感心するも、時間がないため勝負を付けるべく気を増幅させるために目を閉じた。


「じゃあな。もう二度と会うこともないだろうが、今後は少しくらい他人に優しくしろよ? 迦楼羅炎(かるらえん)!」


 気が再度上限まで溜まり偽・火焔光背(ぎかえんこうはい)へ注ぎ込む。ウルに申し訳ないと懺悔しながら、両手を突き出し大きな声で悪を祓う炎を呼び出す。


炎はすでに意を埋め尽くしていたが胃壁を掻き消し、さらに四方八方に広がる。


「ちくしょう……ちくしょおおおおおおおお!」


 神様の先輩でもある不動明王様から貸し与えられた炎の前には、さすがの天才魔法使いにしてこの世界の神であるクロウも、押し返せずに断末魔を上げた。


少し間があってから周囲の炎がゆっくりと消え、同時に外の景色が見えてくる。


―ジン、御苦労じゃったの。お前さんには二度も不肖の弟子の始末をつけさせてしまった。


 気を探ってみてもクロウの気は完全にここには無かった。ミシュッドガルド先生からの労いの言葉を聞き、やっと彼を倒せたんだと実感する。


―代わりと言ってはなんじゃが、もう少し付き合わせてもらうぞい。ワシとシシリーでしか成せないことがあるでな。


 二人でしか成せないこととは何かと聞くも、すぐにわかるから心配するなと言われ教えてもらえなかった。すぐにわかるということは恐らくスの国関連の事だろうと考え、宜しくお願いしますと思念を飛ばしながら地上へ下りていると、シンラたちがこちらに向かってくる。遂に倒せたなと四人と喜び合い健闘を称えながら握手を交わす。


「さぁ横道に逸れてしまいましたが、最後の戦いへと赴きましょうかね」


 テオドールにそう言われ、最後の戦いの相手である娘が誕生した経緯を思い出した。イエミアこと春原來音(すのはららいね)が元の世界で遺伝子工学を学んでおり、その技術を用いてテオドールとイエミアが生み出した存在である。


娘を利用しこちらを倒そうとしていたくせに、どういう風の吹き回しかと問うと鼻で笑ってきた。お前のせいで娘は酷い目に遭っているのに何が可笑しいと聞くも、その落とし前を付けに行くために協力しているんですよ、と開き直る。


あの子はお前が蘇らせたい人とは違うぞと言ったが、それはそうでしょうと半笑いで答えた。


「これまで酷いことを山ほどしてきましたけどね、私初めて人間が生まれてくるところを見た上に育児までしたんです。当然大変でストレスも半端なかったんですが、本当に突然急に母性と言いましょうか父性と言いましょうか、そういったものが出て来ましてね」


 悪質なピエロことテオドールは、足を止め遥か彼方を見ながらそう言って立ち尽くす。なにか悪いものでも食べて当たったんだろうな思いながら、声を掛けずに皆と共に先を急いだ。


「アリーザ様の母としての姿に聖母マリアを見ましてね、私は新たに使えるべき君主を得た! と歓喜しました。元の体に戻れないことは辛いですが、アマテラス姫とアリーザ様を守るのに別に不都合はないなと思い直しまして」

「気持ち悪」


 急いで横に来て力説するテオドールに対し、つい思っていたことがオブラートを貫通し食い気味で口から出る。気持ち悪いと言われた当人の耳には届いていなかったらしく、他人に使える喜びをこちらの横で熱弁し始めた。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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