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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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クロウとの最終戦

「僕がやろうとしていることは君にとっても価値のあることだ。イエミアの体だけでなく魂も調べ上げれば、連続転生の可能性が見えてくる。身内と認めたからにはその肉体の限界を迎えた時、その研究の成果を君にも分けてあげよう」


 クロウの話を聞いて馬鹿馬鹿しくて笑ってしまった。永遠の命に憧れる気持ちはわかるが、そうなった先が彼のようになるのならそんなものは必要ない。


世界の全ての人と仲良くなれるわけもないのだから、自分と気の合う仲間と共に同じ時を一生懸命に生き、最後は眠るように息を引き取り誰かに見送られながら旅立つ。


元の世界では考えることも抱くことも諦めていた夢が、今この世界にはある。クロウの研究はひょっとするとすべての人を不死にするかもしれないが、それが幸せにつながるとは思えない。


ただ会社とワンルームを行き来するだけの生活を、死ぬまで続けるのだろうと思った時を思えば、異世界にこれたことで結婚も出来たし幸せだ。


「価値観の相違ってやつだ。もう俺はこれ以上何もいらない。永遠の時を生きたいならアンタ一人でやってくれ」

「随分と偉そうだなジン。君の人工の娘がまともであると良いが、そうでなかったら僕と組んでおいた方が後々良いんじゃないかな」


 クロウの口振りからだけでなく、話を色々総合すれば通常の成長過程を経てないのは分かっていた。きっとこれから苦労することが多いだろうけど、アリーザさんも傍についていてくれるだろうし、後を託す者たちが多くいるので誰かがきっと力を貸してくれる。


親として直接力になれない場合を考えて、支度だけはしっかりしてきたつもりだ。後を託す者たちの中にクロウは入っていない。今回みたいに使えると思えば体を乗っ取り、こちらが嫌がることを平気でする男だ。


どれだけ技術が凄かったとしても娘を託す気になれるはずもなかった。こちらの気持ちを推し量ることもなく、良い条件だと取引を持ち掛けてる時点で考慮することもない。


「必要ない」

「……いくら人工とはいえ、娘を助けたい気持ちは無いのか? いや人工の娘など要らないということか」


 クロウに頼んで助けてもらったところで、魂を抜かれ体を別の器に移し替えるだけだ。通常経るはずの過程をすっ飛ばされた精神的なダメージが癒されるはずもない。


一生心の傷となって残るけど、皆の支えがあればきっと立ち上がれる。必要なのは心のケアであって、体を新しくするとかいうことではない。


そんなことすら分からないからこそ、十分だと言って息を引き取った息子さんを無理やり蘇らせることに、気が遠くなるような時間と多くの人々を犠牲にしても固執するのだろう。


「俺自身の力で必ず助けてみせる。例えどんな経緯であろうと娘として生まれて来てくれたからには、親としての責任を命を懸けて果たすまでだ。だが子どもの意思を捻じ曲げ抑えつけてまでしようとは思わない」

「思い上がるなよ……運良くこの世界に紛れ込んだ分際で!」


 そう、運良く轢かれた後で天使(あまつか)先生の病院に運ばれ、死に掛けての状態で再会したことが始まりだった。彼が相良仁という人間の人生を哀れに思い、自分に出来ることはないかと考えに考えた結果、この世界に飛ばしてくれた。


禁忌の術に手を出させてしまったことは、本当に申し訳なく思っている。自分に今出来ることは、目の前にいる男を止めることだけだ。


イエミアを連れ去られてしまえば研究が始まってしまう。連続転生が可能となった場合、偉大なる息子さんの血だけでなく才能まで受け継いだ、天使(あまつか)先生もターゲットにされてしまうに違いない。


なんとしてもそれだけは食い止めなければ、恩を仇で返すだけになってしまう。クロウは幸い激昂しており、逃亡を図る可能性は低くなっていた。


さらに怒らせ必ず倒してやるという気にさせ、この場で決着を付けるように仕向けよう。彼の逆鱗はもう分かっている。


大先生(おおせんせい)天使(あまつか)先生が蘇ることを望んだのか? 違うだろう?お前が自分の責任を果たせなかった惨めさを、受け入れられないだけだ!」

「黙れ……もう許さんぞジン・サガラ! お前は殺した後で魂をいじくりまわし、反抗できないようにして残りかすになるまで使い潰してくれるわ!」


 狙い通りさらに怒らせることには成功したものの、こちらを消滅させる気はないという衝撃の発言に、背筋が寒くなった。


特に気に入られるようなことをした覚えはないんだけどな、と思いながら攻撃を避けその体に焔をぶつけていく。体力が回復したようだが完全ではないらしく、焔が触れる度に爆発が起き体の鱗が剥がれ落ち始める。

 

一瞬喜んだがこれはウルの体であることを思い出し、さっさと邪神を追い出してあの子に返してやろう、そう考え口を開きながら向かって来るタイミングを待った。

 

「忌々しい焔だ……口の中に入れば僕は焼かれて死んでしまうかもしれないねぇ!?」


 こちらの狙いを見透かしているぞというアピールをしてきたが、バレることは承知していたので笑みを浮かべるだけに留める。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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