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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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宝石の森

クロウは腹を空かせていたのか凄い勢いで動き、宝石だけでなく木もなにもお構いなしに口に入れていく。このまま行くと星そのものまで食べだしそうな勢いを感じ、ただ唖然としながら距離を取りその様を見続けた。


何度かテオドールを見たものの、腕を組んでクロウの食事の様子をじっと見ているだけで動かない。やがてエレミアとアリーザさんがこちらに合流して来たが、何も言わずに共に並んで巨大生物の食事を見ている。


三人には何か思惑があるのだろうけど、こちらはまったくわからないのでやきもきしながらも、黙って同じように終わるのを待った。


「さぁすべて食べ終えたぞ?」

「……御代わりもありますよ?」


 テオドールはクロウ体をじっと見た後でそう言い、アリーザさんの方向へ体を向け頭を下げる。対する彼女は頷き後ろを向くと


「アーテ! 宝石投げ遊びよ!」


 そう大きな声を上げた。しばらく間があった後で、スの国の方角から巨大なアメジストが一つ飛んでくる。これまでこちらの攻撃を難なく避けていたのに、なぜかそれはクロウの眉間に直撃し吹っ飛んで行った。


どういう魔法なのか分からず吹っ飛んで行った方向を見ていると、間隔を開けて宝石が飛んでき始める。ウルの体のままならまだしも竜のような体に変化していたため、広い範囲に適当に投げられた宝石の数々が多くの数当ったらしく、ぶつかる度に悲鳴を上げた。


クロウが食事をしたおかげで見晴らしは良くなっていたものの、木の代わりに宝石が生えたような景色になり、少し重なる感じになったところで投擲は終了する。


「ダメージをまた負いましたね? さぁクロウ、食事をなさってください?」


 言葉は丁寧で恭しく頭を下げているが、資産家のペットに餌をやるような態度が透けて見えた。


「なるほど、お前たちの狙いは読めたぞ? これを食べさせて私を肥えさせ身動きを取れないようにするつもりだな?」

「だとしたらどうします? 回復する手段はないはずですが」


 鼻で笑いながらテオドールはそう言い、アリーザさんたちは目を丸くし驚いている。どうやらこちらが話したウルとの思い出からヒントを得て動いたようだ。


狙いがバレてしまってはまんまと罠にはまる奴はいない。エレミアは先ほどの攻撃を行うべく両手を突き出すも、テオドールが前に出て遮った。


「まさかお前たち僕が罠と知っても食事をすると思ってはいないだろうね?」

「遠慮せずに食べて頂ければ」


 キン! という音がした後で上から光の粉が降ってくる。挑発するようなテオドールの言葉に態度で返したと言うことだろう。こうなったらエレミアが魔法を打つまでの時間を稼ごうと、地面を蹴って飛び上がった。


少し遅れてシンラも横に来てくれ、二人で別方向に動きかく乱しようと打ち合わせる。下からテオドールが大きな声で、攻撃しようとせずに逃げ回ってくださいねと言ってきた。


攻撃しないでどうやって倒すつもりだと思いつつ、迫りくるクロウを見て散開する。出来れば隙を見て不動明王様の焔を叩き込みたいが、相手もそれを何となく読んでいるようで接触を警戒するように、触れそうになると急いで体をくねらせ回避行動をとった。


テオドールに言われるまでもなく、攻撃する隙すら与えないような速度で動かれ、逃げるだけで精一杯の状態になる。体力を回復するどころか精力も付いて最高の状態に見えた。


「最高の状態の神の攻撃を避けきるとは俺たちもやるものだな」


 近くの山へクロウが体をぶつけ一瞬こちらの姿を見失ったところで、シンラと合流するとそう笑みを浮かべながら言ってくる。たしかにその通りだ俺たちは凄い、チャンスがあれば倒してしまおうかと乗ってみた。


本音を言えばこのまま逃げ続けるのは体力に限りがある以上、あちらに分があるのは間違いない。逃げている最中も互いに数回体にぶつかりかけており、その回数は次第に増えている。


こうなったら強引にでもチャンスを作るしかない、そう覚悟を決め技を放つべく三鈷剣(さんこけん)を呼び出し構えた。


こちらに合わせるようにシンラも次元断絶剣を構えクロウに向ける。


「二人ともよく避け続けたね。シンラが言うように君たちは凄いし、僕の記憶の中でも一、二を争う凄さだがそろそろ終わりにしよう。イエミアが退屈で遠くへ逃げ出してしまわないうちにね」


 そう言われて一瞬イエミアの気を探してしまう。クロウが本性を現すまではイエミアことが諸悪の根源であり、うちの子を人質にとるラスボスだったのだ。


今姿を消したとすれば子どもをどうにかするに違いなく、敵が神であると分かっていても気を探らずにはいられなかった。


やっとアリーザさんが戻って来てくれたのに失ってしまっては、これまで持てなかった家族というパズルの、最後のピースを永遠に失うことになってしまう。


「シンラ様!」


 口を開けたクロウが目の前に迫り万事休すかと思われたが、横にいたシンラに下へ蹴とばされ難を逃れる。レイメイがいつの間にかこちらに来ていて、上空を見ながら叫び声をあげた。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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