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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第一章 営生を探して

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ゴブリン討伐戦を終えて

「しっかし素晴らしいなぁシシリー大先生の演技は」

「でしょ!? 昔お芝居を首都で見てから好きでさ! こうして演じる機会が来るのをまってたのよ!」


「名女優シシリー、今回のお芝居は何点ですか!?」

「うーん五十点ですかねぇ」


 低い声でそう言ったシシリーに対し素っ頓狂な声を上げて答えると爆笑し、他の兵士がこちらに様子を見に来るまで笑っていた。兵士たちが来て敵を退けた旨を伝えると、あちらもゴブリンを撃退し増援は無いので探しに来てくれたと言う。


一応周囲を確認してから町に戻ると伝え、シシリーと共に森を注意深く探したが他に何も無いようだったのでそこで解散し町へ戻る。


北門に辿り着くと多くの兵士と冒険者に拍手で迎え入れられた。言うほど活躍してないのでこんなに歓迎されると戸惑いを隠せない。


「ジン、良くやってくれた。八面六臂の大活躍だったな!」

「え、そんな言うほど活躍してないっすけど」


「謙遜か? 油や岩を何度も運ぶだけでなく大きな物を率先して塀に上げたのを皆見ていたぞ。それにお前が森に突撃してからゴブリンの動きは鈍くなり、遂には途切れることは無いと思っていたゴブリンが居なくなったではないか」

「出来る仕事をしただけです。皆さんは皆さんに出来る最大限の仕事をしたからこそ撃退出来たんです。俺一人では撃退出来ませんし、讃えられるべきは皆同じです」


 真面目にそう思うから言ったのに、皆何かやれやれみたいな感じで笑ってるんだけど。


「まぁ良いまぁ良い。そう言うならそうしておこう。とは言え一番最後に帰還したお前の労を皆で労わせてくれ。さぁ片付けを終えたら町を上げて宴会だ!」


 しょうがない奴だなぁみたいな雰囲気のまま皆片付けに入るべく移動を開始した。腑に落ちないなぁと思いながらも、宴会があるならサガやカノン、それにベアトリスも美味しいものが食べられるから良いかと考え一生懸命片付けに勤しむ。


町長の言う通り片付けが終わると今度は宴会の準備が始まった。牧場の方に万が一に備えて避難していた女性たちが戻って来てくれて料理の準備を始め、男性陣は通りにテーブルと椅子を並べ完成した料理をが次から次に運んで行き夕暮れが訪れた頃、準備が整う。


老若男女警護に就く兵士の人全ての町民が席に着いたのを確認し、乾杯の音頭を町長が執り宴会がスタートした。ベアトリスやサガにカノンとも合流し料理を楽しむ。ミレーユさんやダンドさんにヤマナンさんやギルドの人たち、防具屋の親父さんやマリノさんゴノさんなど町の人たち日頃お世話になっている人たちもちゃんと参加していた。


営業時代の癖で皆の杯に飲み物を注ぎ感謝を述べたくて、お酒とジュースの入った小さな樽を小脇に抱えて移動し注いで回っていると、宴会芸のような感じで見られ皆盛り上がってくれた。賑やかで楽しく盛り上がっていたので朝まで宴会かと思いきや、皆御腹が満たされると片付けに入り粛々と宴会は終了。


町長曰く日常は続いて行くし明日休みでは無い者も居るから切り上げると言う。勿論二次会は自由だしその為に町の酒場もギルドも営業しているので、まだ飲み足りない人たちは即行移動し飲み始めた。


「では我々は引き上げましょう」

「そうですね」


 ジョルジさんとマリアナさんたちギルド宿組と一緒に、俺たちも場が引けたのを見計らい皆で帰って就寝した。翌日聞いてみると酒場もギルドも売り上げが凄く、褒賞よりも支払いの方が多いかもねとミレーユさんは微笑みながら恐ろしい話を教えてくれた。経済が回るのは皆が助かるので有難い話だ。攻めて来たゴブリンから取れるものと言えば、奴らに殺された者たちから剥ぎ取って装備していたものくらいだ。


形見として所有者が分かる物は家族に返却されるし、居なくても売り物にするまで修繕に御金が掛かるので買い取る人も居ない為、町としては損をしただけになる。首都から兵士は来たが首都の守りがあるからと少数しか来てもらえなかったので、怪我人もほぼ町の人間だった。


町長は改めて国と交渉すると言う。そしてクライドさんもその手伝いをしてくれると申し出てくれたので、二人で宰相などと今回の件で話し合うそうだ。


「そうなると町長の動きも制限され当分の間、あの村には手出しできないですね」


 いつも通り教会に出向いて鍛錬をしながら昨日の件を話すと、ティーオ司祭はそう呟いた。昨日はあの後首都での会議に出向き、その席でゴブリンの話をしたが町長なら大丈夫だと一笑に付されたと聞いて驚く。ゴブリンが国の玄関先であるこの町を襲撃して来たっていうのはかなりの大事じゃないのだろうか。


だからこそ前に村の近くにゴブリンが居たと話した時、あれだけ騒ぎになって町長と兵士の人たちと共に急いで向かったはずだ。まさか町と国では心配の度合いが違うなんてのは無いだろうし。


「アタイたちが居ればそんなの瞬殺してやったのにねぇ」


 シスターは座っている前の長椅子の背にもたれ掛かりながら、気だるそうにそう言った。確かに二人が参加してくれていたらシンラを捕らえられていたかもしれないと思うと口惜しい。


「偶々昨日急に首都に呼ばれ会談をし偶々クライド殿も同席していた。そして偶々町がゴブリンに襲われ私がその話をしても問題無いとして処理された」

「ゴブリンが一匹でも現れたら大騒ぎすると聞いていたし、国の玄関先でもあるこの町を襲撃しているのに問題無いとは驚きです」



読んで下さって有難うございます。宜しければ感想や評価を頂ければ嬉しいです。

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