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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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準備は整った

「そう言えば肝心なことを忘れそうになったでござる」


 手をぽんと叩いたマテウスさんは、左腰に下げたカバンから白い封筒を取り出し渡してきた。開けて中の紙を取り出して見たところ、ニコよりジン・サガラ殿へと書かれている。


二つ折りになっていた紙を開いて見ると時来ると一言だけだった。一言だけなら伝言でも良かった気がするけど、達筆な字で紙に大きく書かれており、ニコ様の気持ちの高ぶりを感じた。


シャイネンを統治し竜神教を束ねる彼女がそこまで高ぶるとすれば、思い当たることは一つしかない。復活すると考えニコ様の元へ飛ばしたのだから喜ぶべきことだが、無理をして出るよりも今後に備えていて欲しかったなと思っている。


師匠を無事連れ戻せるかも不透明な上に、今回戦場へはシスターも同行してもらい先発メンバーに加えていた。ノガミとしては問題無いのだろうが、師匠の弟子として二人に何かあった時に合わせる顔が無くなってしまう。


「ジン殿にこんなことを言わなくても分かっているであろうが、彼はそれこそ以前のジン殿のように腫物扱いだったでござる。実際強いは強いでござるが、ヤスヒサ王と竜姫ラティ様の直系というだけでなく、ゲンシ様とニコ様の息子でいわばノガミの中のノガミゆえ、皆関わり辛かった」


 たしかに言われてみればこの世界的に見ると凄い血統ではある。とは言え大人になるまでの時間があったのだから、どこかで叱られる機会くらいあったのではないかと思った。


聞けばシャイネンへ着弾後しばらくしてからライデンが来たらしい。彼が到来した日以降は御城では連日轟音が鳴り響き、なにかの天変地異が起こるのではないかと噂になったという。


音の正体は城の地下で行われた稽古によるもので、ニコ様とライデンが本気で鍛え直したとマテウスさんは教えてくれる。


「ライデン殿は元々人間族があまり好きではござらん故、シャイネンにはニコ様に年に一度会いに来るくらいで、顔を見ては直ぐ帰っていたでござる。拙者に対し、血統や強い子供というだけで叱れないなどと思う人間族は、やっぱり好きになれないと言われ答えに窮した」


 ライデンだからこそ言える台詞だなと苦笑いする他無かった。世界を実質支配しているに等しいノガミ一族の王子に対し、はっきり物を言える人間族などいない。


まぁ彼もそれがわかったからこそ、今回敢えてニコ様のところに来たんだろう。だいぶ長い時間がかかったけど、ようやく時計の針が動いたんだなと思うと感慨深いものがある。


自分と比べたら若いのだから、これからいくらでもやり直しは出来るはずだ。幸い彼には一族もいれば国もあるし、誰よりも色々な道を見つけられるに違いない。


「これからどうなるかは拙者には分からんでござるが、ジン殿たちが心置きなく戦えるように、しっかり支えられるよう頑張るでござる」


 マテウスさんはそう言って町の外へと戻って行った。見送りながらここまでの旅路を振り返りかけたものの、皆から大きな声で呼ばれ中断し彼らの元へと戻る。


なるべくやり残したことは何一つないくらいまでやっておくために、睡眠時間を削り稽古に指導にと明け暮れた。どこまでいってもキリがないことは承知していたので、自分が眠さで倒れ目覚めたらその時が準備の終わりにしよう決める。


皆にも自分が倒れた後は体を十分に休めて欲しいと告げた。


                    ・

「せ、先生……お目覚めですか!?」


 同じ日々を繰り返していく中でついにまぶたが閉じ意識が飛び、目を開けると板張りの天井とノーブルが映る。いつだったかもこんな場面があったなと思いつつ、上半身を起こしどれくらい寝ていたかと尋ねたところ、三日だと言われ意外に少ないなと驚く。


体と気がいつにも増してみなぎっており、睡眠の大切さをいまさら思い知った。皆には迷惑をかけてしまったが、生まれて初めてすっきりした気持ちの良い目覚めを味わい、最後まで突っ走るための充電が完了する。


ノーブルが急いで部屋を出ようとしたので、今は慌てなくて良い準備が出来たら自分から行くからと告げた。こちらを見て彼は察したのか、いよいよですかと問うので小さく頷いて答える。


「では先生が起床されるまでの間に、生徒たちに別れを告げても宜しいでしょうか」


 背筋を伸ばし直立不動で立つノーブルに対し、吹き出しそうになるのを堪えながらどうぞと促す。彼の場合はここから先長いだろうから、こちらが起きるのもゆっくりで良いだろうと考え、ベッドの上でストレッチを始めた。


―いよいよ最後の戦いだね


 もうそろそろベッドから出るかなと思ったところで、久し振りに思念が飛んでくる。辺りを見回すと枕の横に、ウルに憑依しているクロウが目を開けこちらを見ていた。


その通りだがそちらは大丈夫かと問いかけると万端だという。どんな秘策があるか聞きたいねというも、それは本番までのお楽しみだと教えてくれない。


最後の相手に読まれると不味いのだろうと考え追及は止め、シシリーはどうかとと言うと彼女ももう充電は終わっているという。


視線をベッドの脇に向けると小さなバスケットがあり、そこからタイミング良く背伸びをしながら彼女が出てくる。


―さぁ始めようじゃないか。連中に引導を渡すための戦いを


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

悪い点のみや良い点1に対して悪い点9のような批評や批判は遠慮します。

また誤字脱字報告に関しましては誤字報告にお願い致します。

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