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異世界営生物語~サラリーマンおじさんは冒険者おじさんになりました~  作者: 田島久護
第七章 この星の未来を探して

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仕上げの支度を

 ノーブルが羨ましそうな視線を向ける中でエレミアとの稽古は続く。全員の中で一番付き合いの長い人物だからか、動きを読まれフェイントに引っ掛かり捕まりかけた。モードを変えるべきか悩んだが、初日だったのでモードを変えずに粘る。


最初は美しき女神(ディオサ)のみで動いていたものの、エレミアはギアを上げて来た。美しき女神(ディオサ)に追わせつつ、こちらが逃げる先に火の玉を配置し逃げ道を塞いでくる。時間をかければ魔力を消費し鈍るかと思ったが、時間が経過しても衰えを見せない。


魔力を消費しもう一人の自分を持つ彼女相手に、顕現不動(けんげんふどう)モードのままでは限界が見えてきた。さすがエレミアだと感心し自らの認識を改め、破邪顕正(はじゃけんしょう)モードまでギアを上げる。


「じゃあ今日はここまでね」


 結局焔を使わず閉じ込められた状態からは出れず、焔を使って出てはなんとか模索しているうちに、稽古の終了を彼女が告げてきた。どうしたのかとたずねると魔力が尽きたという。見れば美しき女神(ディオサ)は消えており、それに気付かずこちらが夢中になり過ぎてしまったようだ。


稽古とは言え全力を出しているにも拘らず、冷静に引き際を見極めて手を止める。あらゆる面で最強になったと勘違いしていた自分にとっても、この稽古はとてもためになった。


エレミアに詳しく話を聞こうとするが、ノーブルだけでなく皆こちらに来て稽古を頼むと言い出し、現場は大混乱してしまう。襲撃の知らせを受け渋々解散となったものの、それで引き下がることはなかったため、教え子たちに指導する班と襲撃に行く班、稽古をする班と三つに分ける。


 シフト制にしたことで判断に迷うことが減り、順調に一日は過ぎた。翌朝夜勤明けに問題が発生し朝から忙しくなる。なんと国の兵士たちが指導を仰ぎたいと訪れてきたのだ。


さすがにこちらにそんな余裕はないので断るも、夜で良いから頼めないかと粘られた。夜は夜で一人で襲撃に備えうたた寝をする時間なのでと断ったが、短時間でも良いからと引き下がらない。


ベア伯爵に稽古を頼むのが筋だと説いたものの、後ろに本人が現れ是非私も頼みたいと言い出す。以前からこちらを敵視していた、獣族のベア伯爵すらも稽古を頼んでくるなんて驚きを隠せない。


宰相も亡くなり国も被災しさらにモンスターの襲撃まであって、皆恐れ迷っているのだなと感じる。気持ちはわかるがさすがに全員は無理だと断ったところ、ならば分けてでも頼みたいと言ってきた。


さすがに寝ない訳にも行かず襲撃にも備えなければならない。町の人を教えているのは初心者で誰の指導も入っておらず、教えやすいと思って募集し皆に任せている。


正規の兵士ならこれまでの自分の経験や鍛錬の仕方もあるので、こちらでは無理だと説明した。


一同理解し悲しそうに頷き諦めかけたが、それでも受けたい兵士を止めてでも受けたいと言い出すものが出て、聞き届けて頂くまではここを動かないと宣言し座り込んだ。


どうしたものかと思案していたところに、襲撃の知らせが入り討伐へと出る。振り返って座り込みをしている人たちを見ると本当に動かずにいた。


あまりの固い決意にげんなりし、このままでは全てに支障が出る恐れがあるため、討伐終わりに陛下のもとへ行き対処を相談しようと考えながら走る。


「私も説得してみるがどうかな」


 討伐を素早く終え赴くと部屋には引っ切り無しに文官が出入りし、王妃も一緒に書類仕事をしていたが書類の山は積み上がっていく。頼るのは申し訳ないかったが責任者に相談しないわけにもいかず、なんとか時間を捻出してもらい事情を話した。


気持ちは理解しているし余裕がある時なら願いを叶えたいが、この国の誰にも余裕はない状況ではさすがに無理がある。陛下と王妃に相談したところそれはそうだと理解を示してくれた。


「私たちからしてもジンたちが襲撃を退けてくれているお陰で、復興が進み民の平和が守られているのは感謝している。暗闇の夜明けの連中が襲撃しているのは明白であり、それを退けるために稽古をし備えているのも承知している。彼らも同じだと思うのだがな……」


「……ジン殿に提案なのですが」


 陛下と共に腕を組み唸っていると王妃が小さく手を上げる。どうぞどうぞと促したところ王妃曰く、彼らが暇なのが問題なのではないかと言う。


通常であれば襲撃も彼らが先に対応しているのに、ジン殿たちが討伐してしまうので持て余しているのではとも言われ、たしかにそれは一理あるかもしれないなと思った。


王妃は続けて、暇にさせないためにも一度彼らに襲撃を対処させてみてはどうか、と提案する。稽古してすぐ実践を行える理想的な環境になるし、陛下たちからも要請があったので受けてみたものの、現場の兵士たちの気持ちを無視していた。


蔑ろにされていると思われても仕方ないところだ。陛下もそれに気付いたのか小さく頷いたあと立ち上がり部屋を出る。王妃と共に陛下の後を追いそのまま町へ向かう。


座り込みの兵士たちのところへ到着した陛下は、襲撃の第一陣を任命すると伝える。ベア伯爵含め兵士たちは大いに沸き、陛下に拝命しますと言って頭を下げ座り込みを止め引き揚げた。


討伐を受け持たなくて良くなるので、稽古に専念しようと皆にも事情を説明しながら伝える。さっそく昨日の続きと行こうと告げ、教会の前にすでに集合していた生徒に対し指導を開始した。


これ以上何も無いと良いなと思いつつ指導を見守っていたところ、なぜか先ほど座り込みをしていた兵士たちが戻ってくる。


また座り込む気かと思い身構えていると、なんと生徒たちに混ざり稽古をし始めた。ベア伯爵まで来たのでたずねてみたが、開かれたところでやっているのだから良いではないか、と言って胸を張る。


読んで下さり有難うございます。感想や評価を頂けると嬉しいのですが、

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